創業111年の老舗化学メーカーの事業戦略。「持続的成長」に 必要不可欠な要素とは


DIC株式会社
代表取締役社長執行役員
猪野 薫

特選インタビュー

DIC株式会社は印刷インキ、有機顔料、PPSコンパウドで世界トップシェアを誇る化学メーカーだ。現在ではコア事業を軸に世界64カ国に展開しており、世界的有数のファインケミカルメーカーとして発展を続けている。代表取締役社長執行役員 猪野薫は「サステナビリティ(持続可能性)」を意識した企業価値向上を目指し、社会貢献活動にも余念がない。現状に満足せず、たゆまぬ挑戦を続ける猪野とDICの事業戦略に迫る。

人材戦略

蟹瀬 これまでお話しいただいたような企業価値を創造していく、その中で「Value Transformation」「New Pillar Creation」というお話出ましたけれども、これを実現していくにはやっぱり人材というのは、ものすごい必要になってきますよね。この辺りっていうのはどういうふうに考えてらっしゃいますか?

猪野 人材はもう一番大きな柱だと思ってまして、私ども、世界で64ヶ国で事業展開しておりまして、おそらく日本の化学会社では極めて珍しい会社だと思うんですね。従業員は2万人以上いますので、その7割が外国人だとすると、かなりのケーパビリティを持った人材が埋もれている可能性がある。ケーパビリティのある方々を発掘して、尚且つそういう方々に、我々の経営を助けてもらう。そういうような考え方をしたいというふうに思っております。元々私が社長就任したときの一つのキャッチコピーが「ダイバーシティマネジメント」でしたので、女性活躍推進、シニアいろんなダイバーシティありますけれども、特に当社の場合はこれだけの海外展開をしておりますので、海外人材をいかに活用するか、ここにかなり注力をしております。

海外人材の育成

福井 具体的には、海外の方たちはどういうふうに育成されてるんですか?

猪野 すでに認められた存在は、私どもの執行役員に就任させておりますし、尚且つその下の世代の人たちには、まず人材データで把握できるっていう仕組みをつくるということと、すでにわかってる方々については、本社に来ていただく、あるいは本社の人間が中国に行く、中国の人間がアジアパシフィックリージョンに行っていただく、あるいはその欧米に行っていただくということで、いろんなところで違うリージョンで活躍の場を与えることで、そこで力量を見極めるということもできると。そんなことを今実際に手がけているわけです。

グローバルな人材戦略を現場ではどのように行っているのか。新設された人事戦略部の部長に話を聞いた。

(インタビュー:人事戦略部 部長 虎山 邦子さん)

虎山 まずは日本人の底上げから始めたいと思っています。特に英語力アップ、海外対応力アップを行うことで、コミュニケーションの向上を願いたいと思っています。他に取り組まなきゃいけないのは、適材適所にいろんな人材を配置できるようにするために、グループ全体の人材のデータベース化を行わなくてはいけないと思っています。
その方々の持っている資格ですとか、言語能力ですとか、そのようなものについてはまだデータベース化できている状況ではないので、それができることで、適材適所に国籍を問わず、人を置くことができるようになると思いますので、それによって取りこぼしてるシナジーなんかが取れるようになるのではないかと思っています。

この他にも、DICが将来も持続的に発展するための経営人材の発掘育成も見据えているという。

虎山 グローバルの企業としては、当社がお約束している社会的価値、そして経済的価値を確実に提供することができるようにするために、多国籍のリーダーの集団を輩出する必要があると思っておりますので、そのための教育プログラムが重要になると思っています。

海外人材の発掘はDICにどのような効果をもたらすのか。グループ会社であるアメリカサンケミカル社のマイロン・ペトルーチ社長に話を聞いた。

(インタビュー:DIC株式会社 執行役員 兼 President & CEO, Sun Chemical Corporation Myron Petruchさん)

ペトルーチ 世界中の様々なマーケット(市場)で仕事をして、その違いをよく理解している人は、例えば、自動車や化粧品など、地域ごとに異なるマーケットでも(コミュニケーションを円滑に取ることで)同じように製品を販売することができる。文化の違いやニーズを理解、把握することで、各地域の要望に合わせた製品を作ることができる。一般的に私たちは他者との違いを認めることよりも自分と他人の似ている部分がどのくらいあるかに注目しがちである。他者との違いを認めることで、お互いの理解がより深まり、結果としてその地域のニーズを満たすことができるようになる。

100年企業として

福井 さて、DICは2019年で創業111年目を迎えられましたよね。100年企業として、今後はどのような舵取りをお考えですか?

猪野 私が社長に就任したときに、いくつかのメッセージを出しました。その中にDICのあるべき姿、いわゆる将来の企業像というものをですね。こういうふうに表現したんですね。「ユニークで社会から信頼されるグローバル企業」と表現したんです。ユニークっていうのはなんとなく今までのお話の中でも、色彩と化学ということが、フュージョンしているという意味でのユニークさっていうのは、なんとなくお分かりだと思うんですけれども。
問題は、社会から信頼されるっていうのはどういうことか。これは私なりにいろいろ考えた時に、世の中の会社は、グローバルにですね、DICはこの世の中になくてはならない会社として認めていただくこと。こういうことも目指したいというふうに思ったわけです。それが結果的にその社会から信頼されるということになりますし、最終的にはDICが愛されて、社会から尊敬されて、そんな企業になっていきたいという思いを従業員の方と共有をして、ぜひ、私の在任期間中にそこに到達するために、最大限のリーダーシップを発揮していきたいと、こういうふうに思っています。

DIC株式会社 代表取締役社長執行役員 猪野薫は、1957年、千葉県で生まれる。大学卒業後に現在のDICに入社。今や世界各国で働くおよそ2万人のトップとして、日夜仕事に奮闘しているが、幼き日の猪野はどんな夢を見ていたのだろうか。

あの頃に見た夢

猪野 何かのきっかけにその海外志向というのが高まったようで、そのときに実はどういう仕事なのかっていうことを私はよく知らなかったんですけど、「外交官」という言葉の響きにちょっと憧れまして。やっぱり国のために、ちょっと世界といろんな携わり方をしてみたいと、いうふうに思って。それがあえて言うと、小さい頃の夢と。父親が若干通商関係でそういう仕事をしていたのを見てたっていうことも、きっかけだったのかもしれません。

福井 そのときと今を比べていかがですか?

猪野 あの夢は何だったのかよく自分でわからないんですけれども、ただ一つ共通点ということからすると、結果的に海外関係で異文化と触れ合う中で、仕事もそういう中で身を置いてみたいというのは、今実現しているのかなっていう気はいたします。

福井 人がこう夢を持つということに関してはどうお考えですか?

猪野 そうですね、あまり真面目に考えたことはないんですけれども、ただ一つ言えることは弛まなく、常に何か挑戦し続けるって言いますか、そのチャレンジするということが一つの夢なのかな。夢って実現してしまうと終わりなので、常にその追い続けるけれどもなかなか届かないところにある。ちょっと抽象的で申し訳ないんですけど、そんな感じはありますですね。

夢とは、追いかけても追いかけても手の届かないところにあるもの。届かないけれど、挑戦し続ける。その挑戦こそが夢かもしれない。

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出演者情報

  • 猪野 薫
  • 1957年
  • 千葉県

企業情報

  • DIC株式会社
  • 放送日 2019.05.06
  • 業種 
  • 化学
  • 所在地住所
  • 東京都中央区日本橋三丁目7番20号 ディーアイシービル
  • 資本金
  • 965億57百万円
  • 従業員
  • 連結:20,628人 単独:3,503人

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