時代刺激人 Vol. 189
牧野 義司まきの よしじ
1943年大阪府生まれ。
今後の高齢社会対応と財政赤字に歯止めをかけるための社会保障と税の一体改革関連8法案が6月26日、大波乱の衆議院本会議でやっと可決された。
民主党の藤井税調会長は小沢氏の離党シナリオを織り込んで政治対応
小沢氏、鳩山氏は今回の政治混乱を承知で反対票を投じたのだから、消費税率の引き上げなしに社会保障改革が出来る、という政策の対案を示すべきだろう、それにずっと以前から小沢氏が主張していた「予算のムダを見直し、制度の洗い直しをすれば16.8兆円の財源をひねり出せる」といった点を自身で示すことが必要だろう。
今年春に行った私もメンバーのある会合で、ゲストスピーカーだった藤井裕久民主党税調会長はオフレコを前提に、今回の社会保障と税の一体改革、自民党との政策調整に関して、どういった取り組みで臨むかを聞いた。民主党分裂避けられずの今となっては、オフレコを解除してもいいだろうから、申し上げるが、以前は小沢氏の側近だった藤井氏は、すでに発言当時、消費税率引き上げ反対にこだわる小沢氏がいずれ離党すると読み、それを前提にシナリオをつくる段階にある、と述べていたのが印象的だ。そして藤井氏はその先に政界再編成も想定されるとも。
小沢氏やグループ離党は「大義」よりも保身にしか見えず、
民主党分裂はやむなし
今回の民主党分裂に至る引き金を引いたのは、間違いなく小沢氏、そして小沢氏につながる議員の小沢グループと言われる人たちの政治行動だが、グループリーダーの小沢氏は終始、自身の政治行動を正当化するために、政治家がよく使う「大義」論をぶち上げ、会派を離脱して新党立ち上げも視野に入れる言動を繰り返している。
私には、目先の解散総選挙での議席確保という生き残りをかけた保身の政治行動としか映らない。しかし、あえて「大義」を前面にして、民主党会派の離脱を発言している以上、覆水盆にかえらずでしかない。民主党現執行部としては、袂(たもと)を分かつという前提で新たな行動をとるしかない、と考える。このまま、政権の生き残りを前提に、数合わせで妥協に、妥協を重ねたりすれば、かえっておかしな事態になる。
自民党も民主党に頼った消費税率引き上げの「借り」を返す?べく
政策連携を
それと、自民党にしても、すぐに解散総選挙を迫る形で民主党政権に揺さぶりをかけているが、もともと、自民党がいち早く掲げた消費税率の引き上げを、民主党があえて火中のクリを拾う形で対応してくれたことを重く受け止めるべきだ。
いまは、日本の政治に求められる課題は山積だ。いまだ十分でない災害復興問題はじめ、原発対応、マクロ経済成長戦略の再構築、さらには新興アジア対応、ユーロ圏危機対応などに関して、今回の政策協調をテコに民主党と連携して、緊急課題に取り組むことが先決なのでないかと思う。いかがだろうか。
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