世界での韓国の存在感すごい 核サミット開催力や世銀総裁人事

核安保サミットで主要国首脳をソウルに集め、
北朝鮮には無言のプレッシャー

このサミット自体は、2年前に米国のオバマ大統領が提唱したもので、米国の政治的、軍事的な思惑が背景にある。しかし、韓国はそれを承知で手を上げ、世界53か国および国際機関の代表に働きかけ北朝鮮の暴走、跳ね上がり行為にプレッシャーをかけたいという各国のニーズを巧みにつかんで開催にこぎつけた。日本は学んでしかるべきものがある。

もちろん、これだけのサミットを突発的に開催するのは難しい。周到な事前準備が舞台裏では行われたのは間違いない。でも、韓国は機敏というか、危機やリスクを鋭く判断し、自力で物事に対処せずに、むしろ今回のサミットのように、外部のパワーをうまく取り込んで、しかも巧みに主導する、そして内外に強くアピールする情報発信のうまさと同時に、北朝鮮には無言のプレッシャーをかける点が際立っているように思える。日本は、こうした国際政治状況を見据えて、したたかに行動する点が決定的に欠けている。

野田首相は対照的、日本国内に内政課題抱え
ソウル滞在18時間でとんぼ返り

野田首相は、国内に予算関連法案、とくに税・社会保障一体改革法案、加えて東日本被災地復興問題など内政課題を抱えていて、それへの対応を誤れば次の総選挙で民主党政権の運命が決まる、といった状況下で、核安全保障サミットも気がそぞろだったようだ。現に、ソウルでのサミットはわずか18時間の滞在、首脳らとの会談チャンスもうまく活用できずに、とんぼ返りで帰国だったが、これでは間違いなく存在感は出て来ない。

実は昨年9月、韓国農業の取材で出張した際、ジャーナリストの好奇心で何でも見てやろう式で、韓国のさまざまな人に会った結果を、当時のコラムでレポートした。そこでは「韓国は、日本のような極度に内向きに陥る国とは対照的に、国の内外にさまざまな課題を抱えながら、生き残りをかけて必死に対応せざるを得ない、いわば常に緊張と背中合わせの不思議な国だ」、「北朝鮮という暴発リスクを抱える国と同居しながら、一方で、1997年のアジア金融危機、2008年の米リーマン・ショックの2つの外的なショックをきっかけに、FTAを戦略的に活用してグローバル展開を図るといった、大胆な政策選択をとるところがすごい」と。要は、危機管理を背景に状況を切り開く力が見事なのだ。

世銀総裁人事も驚き、途上国への影響力行使
ポストを明け渡す米国の凋落ぶり

さて、もう1つのサプライズ部分に話を移そう。世銀の次期総裁に韓国系米国人が本決まり、という点だ。米国は、この世銀に関しては、第2次世界大戦後の1946年に創設と同時に、グローバルな世界のリーダーが担うポストという意識で、世銀総裁ポストを独占してきた。いわば世銀総裁ポストは米国の指定席で、第11代総裁のゼーリック元国務副長官までは米国の政治家、経済人らの著名な人を起用してきた。途上国への資金援助、技術援助などの面でネットワークをつくりながら、米国の強い政治的な意志が働くようにした。いわゆるワシントンコンセンサスのかなめ部分だった。

だから、5年任期を終える次期総裁人事に関して、米国メディアの事前観測報道でクリントン米国務長官やサマーズ前国家経済会議委員長などの名前が出ていて、誰もがまたもや米国主導の人事か、という見方だった。それが下馬評にもないジム・ヨム・キン米ダートマス大学学長が、オバマ大統領の指名で急浮上したのだから、驚きだった。

国際機関の重要ポスト担えるだけの指導力、
ネットワーク力が韓国人にある？

読みを誤った米国メディアは解説記事で、米国の政治、経済面での地盤沈下と同時に、中国など新興国の経済台頭を背景に出資による資金基盤強化の見返りに、人事面で配慮せざるを得なかったこと、すぐに新興国代表を総裁の座に据えると混乱が避けられず、米国人で新興国に影響力を残せる人物ということで、世界保健機構（WHO）での局長経験があるキム氏に白羽の矢をたてた、という。しかし、私の驚きは、世銀総裁ポストを明け渡さざるを得ない米国の凋落ぶりだった。かつては想像もできないことだ。

それよりも、国連事務総長や世銀総裁など国際機関の重要ポストに韓国系の人たちが起用される、というのは、裏返せば、韓国人がそれだけの重責を担えること、しかも韓国の人材には重責に応えるだけの指導力、知見、人脈ネットワーク力などを持ち合わせていることの証拠なのだろう。日本人も最近は、国際機関で重責を担いつつあるが、まだ国連事務総長や世銀総裁といったメジャーなところではない。そこが何とも残念だ。