社会の新常識に沿った次世代型の物流会社を目指し、自社や業界を大きく変革したい
クボタロジスティクス株式会社
代表取締役社長
深井 誠
クボタグループの物流部門を担うクボタロジスティクス株式会社は、グループ内の製品を中心に他社の輸送業務も手がける企業だ。同社は従来の流通会社から大きな変革を果たそうとしている。
「物流を取り巻く環境とその価値観は、大きく変化しています。かつてはとにかく荷主に貢献するのが物流会社でした。顧客志向という言葉が一般化された今、顧客とは何を指すのかを考えなければいけません。確かに荷主は顧客なのですが、それだけではなく、荷物を待っている受荷主が本来の顧客なのです」
業界と社会が変化しつつあるなか、受荷主を本来の顧客と考えると自ずから対応が違ってくるのだという
「物流とは、ただ単にモノを運ぶのではなく、メーカーとその製品を待つ顧客とのインターフェースが役割なのです。物体から商品に変化(進化)させるために命(=製品に込められた想い)を流し込むのが当社の仕事です。これが本質的な『物流』の役割なのです」
もちろん、最終的には物流会社は荷主に貢献する。しかしそのプロセスが大きく違う。荷主の顔色や評価だけを見ていては、これからの物流の仕事は成り立たないという。
「今後の物流会社として当社の存在価値を考えると、まずクボタの物流子会社という立ち位置になりますが、その上でこれをどう活用するかということがポイントです」
大きな強みになるのは、メーカーが製品に込めた思いを共有する「習慣」を社員が身につけようとしていることだ。
「仕事は能力ではなく習慣でするものです。よい習慣を身に付けると、それが能力に見えてきます。習慣というのは皆に等しく与えられた能力です。誰もができるものです」
この考えは、クボタに限らず他のメーカーにも通用するという。
「ものづくりの思想や価値観を共有できる存在として認識していただけるように、メーカーが実践している教育を私たちも受け、製品に対する想いやものづくりの共通言語を理解する努力を続けています。これによりメーカーとの一体感が生まれます」
荷主に貢献しようと考えるのではなく、荷主と一体になって、製品を待っている顧客の期待に応えること。それが実現できるのも同社の強みだ。日本のものづくりには芯が通っており、その基本理念は共通している。さらに製品やものづくりを理解することでより高い理想が生まれ、成長につながるのだという。
「ただ運んでいるのではなく、製品やものづくりを理解していると分かっていただくことで、事業が大きく広がるのです。当社と荷主(メーカー)が同じ岸に立って、同じ想いで受荷主(顧客)を向いていれば、一体感が生まれます。そこに仕事を広げる要素があります」
2021年1月、株式会社クボタの北尾 裕一代表取締役社長は年頭所感で「豊かな社会と自然の循環にコミットする『命を支えるプラットフォーマー』になろう」と長期ビジョン「GMB2030」でめざす、クボタのあるべき姿を述べた。
「当社も2030年に向けて、その実現を目指す方針です。『豊かな社会と自然の循環にコミットする』には、SDGsやESG経営を意識した考えが必要です。これまでの業界や企業の常識ではなく、社会の新常識に沿って『本気』で取り組み、実践する必要があります」
顧客(受荷主)に製品を届けて、初めてクボタは「命を支えるプラットフォーマー」になれるという。届けるのは誰か。クボタグループの最終ランナーこそが同社なのだ。
「そこに求められるのは、なによりも安全対策です。安全対策の基本として、全社員が常に意識しているのは『安全確保に対して妥協していないか』『安全と費用を天秤に掛けていないか』『あきらめ、仕方ない、こんなものと思ってはいないか』『予知や認識した危険への対策を打たずに、見なかったことにしてはいないか』という4点です」
必要な対策にコストをかけることで、より安全にできる対策方法はたくさんあるという。
「そのお金を惜しんだばかりに、お金では解決できない事故が起こるのです。お金で対策できることがあるのなら、できる限りの対策をとりたいと思っています」
安全のみならず、GMB2030の実現には、今までの業界、会社の常識を打ち破ることも必要だという。
「例えば、廃プラや木材パレット廃材対策、トラックのCO2排出量削減、労働環境の改善など、当社を含めた物流業界には社会が目指す新常識を実現できていない点がまだたくさんあります。まず当社がクボタ製品を運びながら社会の新常識の実現に向け、実践している姿を見せて、それを評価していただきたいと思います」
その上で、他社製品との共同輸送を積極的に進め、多くの荷主が社会に貢献する同社の姿を見て評価すれば、活動はさらに広がる。
「当社だけが想いを実現して満足するのではなく、業界の変革に結びつけていきたいと考えます。物流業界自体が変わらないと労働力不足も解消しません。業界に属する各社の目指すゴールは一緒です。他のメーカー系物流会社と広い意味での社会貢献活動に関する情報共有を行うことで業界全体が良い方向に進むだろうと考えています。」
同社の想いと実践を業界に発信して物流の理想型をアピールし、新たな業界標準を確立することが目標だ。
「安全対策は今ある対策や装置だけでなく、ないものは作ることも考えて実現していきます。また社会の新常識を取り入れ実践し、当社の存在価値を上げることで、社員にはここで働いていてよかったと感じてもらえます。それが、人材が集まるモデルケースとなり、業界全体を良い方向にシフトさせたいと思っています」
同社はこの方針を着実に実行し、メーカー系の物流会社としてトップの位置を目指していく方針だ。
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