日本はポストコロナを見据え戦略的な海外展開を


時代刺激人 Vol. 321

牧野 義司まきの よしじ

経済ジャーナリスト
1943年大阪府生まれ。
今はメディアオフィス「時代刺戟人」代表。毎日新聞20年、ロイター通信15年の経済記者経験をベースに「生涯現役の経済ジャーナリスト」を公言して現場取材に走り回る。先進モデル事例となる人物などをメディア媒体で取り上げ、閉そく状況の日本を変えることがジャーナリストの役割という立場。1968年早稲田大学大学院卒。

韓国政府はK-POPグループなどコンテンツ産業の輸出支援

韓国の対外展開の主力は、もちろん企業の輸出競争力の凄さだ。とくに財閥系企業サムスングループのエレクトロニクス、半導体などが群を抜いている。ただ、韓国の産業の動きをみていると、日本と違って財閥系企業グループが異常なほどの力を持ち過ぎていて、日本のような産業のすそ野を支える、たとえばオンリーワンの優れもの技術で世界シェアを握る優秀な中堅・中小企業群などが見当たらない、という弱点がある。
とはいえ韓国は、地政学リスクを含めたハンディを抱えながらも、輸出や対外直接投資など外需を増やすことによって、国力増強をはかる戦略に積極的であることは間違いない。

注目すべきは、韓国の音楽グループK-POPの動きだ。狭い韓国の国内音楽市場よりも、まず自らの売り出し先を最初から欧米、アジア市場、とりわけ米国市場をターゲットにしたこと、そして「韓国人アーティストが全米で真のナンバーワンになれるか」、「ナンバーワンになるには英語で歌う歌唱力、パフォーマンス力など必要か」などを徹底研究し、コンテンツを作り上げる凄さだ。その手法が成功して外国で人気を得ると、それが韓国国内にもはね返って人気を呼ぶ相乗効果を生んでいる。韓国政府は、今では経済成長エンジンとなるコンテンツ産業を輸出戦略産業として認め、バックアップする体制をとっている。

オランダは強み農業の付加価値化に磨き、国際花き卸売市場も

オランダは人口がわずか1753万人。日本とは比較にならない少なさだ。しかし自らの強み、弱みを見極め、強み部分の農業に特化し、ICT(情報通信技術)やロボティックス技術をフル活用して生産性が際立つ。トマト、オレンジ、パブリカなどの施設園芸に加え、チューリップなどの花き、酪農、畜産で高い生産力を誇る。EUという巨大市場がそばにある立地条件の優位さもあるが、付加価値をつけ、強みの農産物に磨きをかける点は見事だ。

とくに農業を国際競争力のある産業にするため、産官学の連携、エコシステムという独特の連携システムでバックアップ体制をとっている。農産物輸出を中心に輸出比率が66%で、世界でも突出している。同じ農業国日本は、オランダの輸出競争力の足元にも及ばない。

私が以前、オランダ農業を取材した際の驚きの1つに、花き中継貿易力の凄さがある。スキポール国際空港そばに国際花き卸売市場を持ち世界中から毎日、大量の花きを集荷し競争入札、同空港から世界各国に出荷する。オランダが事実上のプライスリーダー国なのだ。

日本はモノの輸出よりも食文化や高齢社会システムを売り込め

韓国やオランダの戦略的な海外展開のうち、K-POPグループがグローバル音楽市場でトップランクの地位を確保するためコンテンツに異常なエネルギーをつぎ込む凄さ、また国際花き卸売市場を国際ハブ空港のそばに設けて、世界中から毎日集荷する花きの市場価格決めでリーダーシップをとる凄さなどは、日本にない発想で、大きな学びだ。アジアでは花き生産国が多いだけに、日本が主導してアジア版国際花き卸売市場を作るのも一案だ。

ということで、日本が戦略的に海外展開することは重要だ。その際、日本の強みを活かした戦略も十分、あり得る。私なりに考えた選択肢がいくつかあるので、ご紹介したい。
1つは、日本が今や世界に誇る日本食文化に磨きをかけ、とくに健康や長寿につなげる食材の数々をアピールすると同時に食文化そのものをシステム化すること、2つめは、「超」がつくほど高齢社会化が進む日本として、先進国ならぬ先行国として、新たな高齢社会システムモデルを世界中に提示していくこと、関連して3つめは高齢者の医療介護システムだ。人口の高齢化が進む中国は日本の介護システム研究に躍起だ。モノの輸出よりも社会システム、とくに高齢社会対応のシステムの輸出は日本の強み部分だ。いかがだろうか。

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