さらに磨け、日本のがれき処理技術 災害廃棄物処理で世界のモデル例に


時代刺激人 Vol. 207

アジア各国の現役ジャーナリストの人たちに、東日本大震災から1年8か月たった今でも厳しい状況にある復興現場をつぶさに見て、アジア各国の災害時対応、さらに報道の教訓にしてもらおう――というアジア開発銀行研究所の素晴らしいプロジェクトで、私は2週間前の11月末に、アジアのジャーナリスト23人と一緒に宮城県石巻市の漁業現場、がれき処理場、それに仙台市若林区の農業現場などを歩き回った。日本の復興への取り組みの苦闘ぶりを見てもらうことも大事だ。しかしアジアのどこかで突然起きるかもしれない災害リスクに関して、アジアの人たちと知見や現場情報を共有しておくことが、災害面で先行している日本の責務と、私は考えており、その意味で貴重な旅だった。

アジアの現役ジャーナリストと一緒に東日本の復興現場を見学
 インド、インドネシア、バングラデシュ、ミャンマー、カンボジア、それに中国などのジャーナリストたちは、何を感じとっただろうか。結論から先に申し上げれば、彼らは、インターネット上で知っていた東日本の大震災の現場を自分自身の目で見て、好奇心から被災者、それに復興プロジェクトの取り組む人たちの話を聞いて回り、予想どおり、強い刺激を受けていた。そして学ぶことも多かったようだ。プロジェクトは大成功だった。

とくにスマトラ沖大津波で経験のある国の人たちは今回、大津波が石巻市内の海岸部のあらゆるものを押し流してしまう当時のビデオ映像、爪痕が残る現場を重ね合わせて複雑な表情をする一方で、復興への取り組みの早さに驚いていた。また、自分が同じように現場にいたら、どんな報道が出来たのか考え込む人もいた。東日本大震災の復興現場で、彼らがどんなことに関心を持ち、何を学び取ったか、今後の報道ぶりを見たいところだ。

石巻市内の津波災害廃棄物処理場での見学体験は
「素晴らしい」の一語
しかし、今回のコラムでは、私自身も時代刺激人ジャーナリストの立場で、とても大きな収穫があったので、それをレポートしたい。今回のプロジェクトは、実は、私がアジア開発銀行研究所のメディアコンサルタントの立場で、企画アレンジを行った関係上、訪問先の実情に関しては、かなり把握していたが、まだ見ていない現場があった。
その1つが、これからレポートする環境省、宮城県、石巻市、それに鹿島など特定企業体がかかわる災害廃棄物処理場だ。そこで得た現場体験はジャーナリスト目線で見て「素晴らしい」の一語だったが、アジアのジャーナリストたちも同じだった。

何がすごいかと言えば、あらゆる災害廃棄物を分別して最新鋭の機械で破砕するが、その際、リサイクル可能なものとそうでないもの、あるいはまた不燃物、可燃物、土砂に選別したあと、土壌洗浄して汚染の心配のないものはさらに細分化して再利用、そうでないものは焼却処分という工程を実に丹念に行うのだ。しかもほとんどがコンピューター処理され、何がどこで、どう処理されているか、そのトータル処理量がどれぐらいで、どこまで進んだかなどをすべて把握されている。担当者の説明を聞いていると、その技術水準の高さに、ただただ驚いてしまう。

現場所長の阿部さん
「日本の処理技術は世界に誇っていいレベル」と自負

 案内してもらった宮城県震災廃棄物対策課の石巻事務所長、阿部勝彦さんの話に、「時代刺激人」を公言する私が、思わず刺激を受けた。
それは、こういう話だ。アジアの災害現場では、国によっては処理能力やコストの関係で、廃棄物をすべて一緒に焼却廃棄処分にせざるを得ないかもしれないが、日本では環境問題のからみで、それは絶対に許されない。すべて大気や水質などに悪影響を与えないようキメ細かく選別処理すると同時に、リサイクル活用をめざす。今や、この災害廃棄物処理技術では、日本は世界最高水準にある。誇りにすべき部分と言っていい、というのだ。すごく元気の出る話であり、日本が誇っていい強みの部分になる、と思った。

世界中で、日本は数少ない地震大国のうえ、そのからみで津波被害にあう確率が高いばかりか、太平洋で発生する台風に頻度多く見舞われ、常に災害リスクを抱える国だ。今回の東日本大震災もそうだったが、それらの試練を経て、技術の現場は着実に進化し、モノづくりの現場を持つ強みを駆使して、素晴らしい災害廃棄物処理技術を生み出している。だから、この技術に、さらに磨きをかけて世界の先進技術モデルにし、一部をブラックボックス化して災害技術立国・日本を世界にアピールすればいい、と思うのだ。

廃棄物の中からリサイクル活用できるモノを選り分ける技術も見事だ

 今回のアジアのジャーナリストの人たちが現場で驚いたうちの1つが、この日本の災害廃棄物の処理技術のレベルの高さだった。帰国後に、今回の廃棄物処理現場での現場体験を記事にしながら、日本のすごさをレポートする、と数人が言っていた。そうしたメディア報道がアジアの現場で報じられていけば、間違いなく、災害復興での先進国・日本、とくに災害廃棄物処理では格段に進んだ日本というイメージが定着する。
災害廃棄物処理技術面のみならず、むしろ、その廃棄物の中からリサイクルできる物質を選り分け、さらに有効活用できる段階までにするトータルの処理システムなどソフト面で、いわゆるソフトパワーを持つ日本、という形で存在感をアピールすることも可能だ。

前置きが長くなってしまったが、災害廃棄物処理場のレポートをしよう。私が現場見学した処理場は、正しくは宮城県災害廃棄物処理場・石巻ブロックという。石巻市、東松島市、女川町の2市1町内のいたる場所に、津波の壊された住宅などから出る廃棄物使扱いのコンクリートブロックや鉄骨、木材、あるいは衣服雑貨品、さらに些細な生活ゴミまでを、まず、その2市1町で大まかに、第1次処理という形で分別される。それらを、今回の第2次処理場にトラックで持ちこみ、さきほど少し述べた分別処理を行うのだ。主力のA、Bヤード2つの処理場だけで合計68ヘクタール、東京ドーム球場15個分にあたる広さで、総事業費が1480億円にのぼる。2014年3月末までのプロジェクトだ。

GPS携帯電話使っての廃棄物輸送トラックの運行管理も綿密
 阿部所長ら担当者によると、2市1町の第1次処理の仮置き場から第2次処理場へのトラックなどでの搬送は、いまだにかなりの量にのぼる。このため、交通量の多い区域や学童の通学時間帯を避けて、スムーズに行う必要があり、すべてGPS携帯電話を使って、運行管理を行っている。しかも、第2次処理場のゲートでは、それぞれのトラックがすべて搬送物の中身、その積載量などを通過ポイントでチェックを受け、リアルタイムでセンターのコンピューターに登録される、という。
処理技術のすごさは、これから述べる。まず、最初の粗選別ヤードでコンクリート片やタイヤ、金属くず、木くずなどを選別するが、写真アルバムなどの思い出のもの、あるいはアスベスト含有物やボンベなどの有害物を手作業で選り分ける。そのあと、金属や木のくず、コンクリート片などを特殊な破砕機で30センチ以下に破砕してしまうのだ。

阪神淡路大震災時に威力発揮の焼却炉に加え、
津波対応の新鋭機を投入
 そればかりでない。そのあと4基の振動ふるい機、8基の磁力選別機、風力選別機、さらに手選別ラインによってリサイクル可能なものを取り出す。不燃物や可燃物、土砂に分けるが、このうち可燃性の廃棄物処理は、水分や土を含んだ泥状の廃棄物を高熱で焼却するロータリーキルン2基で行われる。また、新規に投入のストーカ炉は震災廃棄物から土砂や不燃物を徹底分別するうえ、残った可燃物の焼却に独特の威力を発揮する。これらで焼却対応する。いずれも24時間、フルに各300トンの処理能力を持っている、という。

阪神淡路大震災時に大活躍したロータリーキルン炉は都市型災害には対応できるが、今回のような津波災害で出る廃棄物には対応できないため、新たにストーカ炉が投入された、という。さまざまな災害体験が処理技術の厚みを増していくことがよく理解できた。

バングラデシュのジャーナリストは日本の先進技術に驚嘆
 今回の見学でわかったのは、この災害廃棄物処理で培ったリサイクル技術に今後、さらに磨きがかかれば、日本の強みになると思ったことだ。このうち金属くず、木くず、タイヤ、畳、瓦、レンガ、コンクリート片など再資源化、あるいは再生利用に向けるリサイクル化の技術が進み、現時点で80%活用をめざしているそうで、処理を終えたものは復興現場で土木資材や基礎固め材料などいろいろなものに活用されている、という。
また、混合廃棄物から出る土砂や津波堆積物などを何度も洗浄して建設資材に活用、焼却灰の乾燥に使ったり、木くずはバイオマス発電にも活用されるそうだ。

バングラデシュのジャーナリストは、このリサイクルのきめ細かさに驚きで、「災害廃棄物の処理に手間取るし、技術が伴わないので、有害なものでない限りは半ば放置状態にしてしまうことが多いが、これだけリサイクルして循環させるのはすごい。結果的に、経済の活性化にもつながる。日本の先進技術のすごさを学んだだけでも有益だ」と述べていた。

世界トップレベルの環境技術に磨きかけ日本の戦略的強みにすべきだ
日本の環境技術は、欧米と並んで世界トップレベルにある。中でも省エネルギー技術はじめ、すぐれた技術は、日本の戦略的な強みの部分だ。とくに、省エネ技術は、日本が1970年代の2度にわたる石油ショック時の教訓から生み出した生活の知恵の技術だ。

当時、原油価格が高騰し、海外、とりわけ中東依存度が高く地政学的なリスクを考えると、原油輸入先の多元化を打ち出したが、エネルギーの消費を減らすと同時に、エネルギーの効率活用でエネルギーコストを引き下げ、石油依存度も減らす省エネが必要だ、と技術チャレンジが行われた。その結果、次第にシステム化され、省エネ技術が日本のまさに戦略的な強みとなった。

今回のような災いや危機を逆にバネにして技術力を
日本のソフトパワーに
その延長線上で、こんな話もご記憶だろう。1970年に、米国で大気汚染防止ため自動車の排気ガスに関して厳しく規制の法制化をしたマスキー法が登場した際、米国自動車メーカーの技術対応の弱さと対照的に、当時、ホンダがチャレンジ、続いてトヨタも続き、あっという間に規制値をクリアし、一気に米国の自動車シェアを得た。危機をバネに競争力をつけた日本の自動車の強み部分だ。

そういった意味で、今回の東日本大震災による大津波災害で多くの人命を失い、被災者が未だに不自由を強いられているのは、辛い話だが、今回の災害廃棄物処理場での素晴らしい技術を見ても、災い転じて、日本の新たな戦略的強みになる技術が生み出されてきたのは間違いない。日本は、こういった災い、あるいは危機を逆にバネにして、技術力を日本のソフトパワーに押し上げて行けばいいのだ。
今回のアジアのジャーナリストたちが、東日本大震災の復興現場を歩き回って、日本から学ぶものは、そういった日本の危機克服の力、パワーだと思ってくれればうれしいのだが、彼らの帰国後の報道ぶりが待ち遠しい。
 

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