まちづくりのDNA。ものづくりの現場で学んだ人との繋がりの大切さとはなにか
東急不動産株式会社
代表取締役社長
金指 潔
たった一枚の作業服が現場で働いていた人たちの心を開いた。「ものを作ってくれる現場が一番大事だ」という、東急不動産株式会社 代表取締役社長 金指 潔が、自身の経験と東日本大震災の震災復興支援を通して再確認した、まちづくりのDNAとはなにか。これからの日本のまちづくりはどうあるべきかを探る。
金指すぐにでも行きたかったのですが、私も仕事がありますから、実際には5月の末に、東北八県を回って、昔いった連中のところも行ってみて、幸いにして亡くなった方はおられなかったのですけれども、当然被害には合っている。そういう方々がこれからどう復興していくのか、復旧していくのか、何とか手伝いをしたいと思ってございます。
白石会社としてはどのような支援をされているんですか。
金指例えば、スポーツジムを経営してございますから、そういった連中が一緒に行って、向こうで体操を教えたり、あるいは、東急ホームという会社がございますが、そこのものが作れる連中に行ってもらって、実際に重機を使って整地をし、ゲートボール場を作ったり、こういったボランティア活動をやってございます。
またもう一点は銀座のちょうど数寄屋橋の角の所に。復興支援プラザというビルを開設しました。
こちらが、東急不動産が支援している、東日本復興応援プラザ。店内には気仙沼を中心とした被災地の特産品が数多く発売されている。昨年10月から東急不動産が期間限定でスペースを提供、金指潔の強い思いから実現した支援プロジェクトの一つである。
及川最初は本当に驚きですね。銀座パーク5丁目ですけれども、その中でこれだけのスペースをお借りできるということに緊張感を感じました。この中でどうやって、しかも我々素人が東急さんの思いに応えることができるのだろうかと、ある意味責任感と戸惑いと楽しみが入り混じっておりました。
実際ここに来ているスタッフは、現地の被災者なのです。販売の経験もない人をこちらに連れてきて、何とか皆さんのご指導をいただきながら今日に至っているという状況で、当時はどうなるかと思いました。
昨年10月のオープン時には品数はおよそ200種類。少しずつ復興が進むにつれ品数は増え、現在では400種類以上の特産品が販売されている。
及川皆さんから大きな支援をいただきましたが、それをバネに我々が一歩ずつでも立ち上がっていくことが、皆さんの支援にお答えできる唯一の道ではないかなと思っております。
企業としての社会的貢献を全うしながらも、東北への強い思い入れがある金指には震災復興に対するある懸念があるという。
金指震災の記憶がだんだん風化しますよね。いろんな経験をして、色んなショックな経験をしても人間というのはどんどんそれを忘れてしまう、あるいは風化してしまう。何とか風化をしていかないようにしよう、常に情報発信をしようということで、銀座のビルを使いながらそういったことをやってございます。
そういったことから通じながら、あまり難しいことを言わずに、今できることを一つ一つやって行こう、ということを合言葉にやってございます。
宮川東急不動産さんは東北に深く関わってこられた。そうしますと支援を通じて社員の皆さんも何か変わったということはございましたか。
金指私が社長に就任した時に、社員の諸君にお願いしたことは、どうしても私たちは会社に入って仕事をしてしまいますと、内側を見てしまうことが多くなって、そうなると社内や仲間を見るだけなってしまう。そこで、どうかみんなで表を見ようと。表を見ていく、世の中を見ていく。それで社会の目線、世の中の目線で、自分たちをもう一度見つめ直そうということを、所長就任以来、何度か社員諸君と話をしたことがございました。
これはボランティア活動をやったところに、社員と一緒に参加しながら、私も学んだのですが、この頃、わりと、ありがとうという言葉を言われませんよね。そして、ありがとうと言うこともない。ところが被災地に行ってボランティア活動をしている私どもの社員に対して、周りの方が来てありがとうと言ってくれる。そのありがとうと言ってくれたことを、その一緒に行った人間たちが、あとで大変感激したと、言われまして、それも一つ一つ何か勉強というのか学んでいくことなのかなと思っています。やはり社会、世の中に対して目を開いていく。そして、何か自分ができることを探していく。何か一つ学んでくれたのではないかなと思っています。
また同時に、私どもには関連会社が66社ございます。1万6000人の社員の方々がおられます。そうは言っても、同じベクトルで一緒に行動することは非常に少ないのですが、これが震災を通じた中でのボランティア活動を通じながら、何か一つのことを、何か役に立とうと、ベクトルが一つになって、一緒に何かやって行くということができたのではないかと思います。こういったことが、会社全体の財産になったのかなと。
大変不幸なことがあった上で言うのは大変申し訳ないことだと思いますけれども、結果としては大変良い財産が残ってきていると。ですからこれをまた継続的に、永続的に続けていって、何とかその社会との関わりを、その中でお互いを認識していきたいと思っております。
宮川ちょうど1年経ちますけど、これから、いよいよ今年から、実際にどういうまちづくりで復興していくかということで、そのグランドデザインづくりに対して、何かお考えがありましたらちょっと教えていただきたいのですが。
金指地元の地域の方々とお話することがあるのですが、10年15年後を考えていくことは、これは大事なことだと思います。同時に半年先、1年先、2年先、3年先の生活をする場をどう作っていくかということが、同じ意味で大事だろうと思うのです。きっと、私たちがずっと仕事やっていることが役に立つのは、10年後15年後よりもむしろ、1年先、2年先、3年先のことで、それをきちっと解決することに私たちの力が役に立つであろうというふうに思ってございます。
宮川つい私たちが遠くから見ると、もっと大きな遠い将来が見えているのですが、日々暮していかれるから両方の視点が必要ということなのですね。
金指今被災地で、仮設住宅にお住まいの方が、来年どこで何をしておられるのかということを一緒になって考えていく。そのために今できることが何かということを、知恵を使っていきたいと思いますし、それはきっと何かお役に立てることがあるのではないかと私は信じています。
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