クラウドコンピューティングの可能性。21世紀のグローバルカンパニーとは
アレックス株式会社
代表取締役兼CEO
辻野 晃一郎
ソニーのカンパニープレジデントを経てグーグル日本法人の社長を務めた辻野晃一郎が、自らの会社、アレックス株式会社を設立。クラウドコンピューティングを礎に様々な事業を展開している。辻野自らが語る、グローバルカンパニーの条件、そして日本の課題とはなにか。
蟹瀬さて、今注目されているクラウドコンピューティング。この番組をご覧の方がどのくらいクラウドコンピューティングをご存じなのかどうかということはね。私もちょっと図りきれないところがあるのですけれども。私もあんまり良く分かっていない。実は。ちょっと初歩的なこと教えてもらえますか?クラウドコンピューティングって一体なんなのという。
辻野クラウドコンピューティングっていうのは、やっぱりインターネットの時代になって、サーバーと言いますか、データセンターが世界中に今あるわけです。もともと、そのウィンドウズOSとかで、パソコンの時代ですよね。パソコンの時代っていうのは、手元のハードディスクの中にデータとかアプリケーションを常駐させといて、自分の手元に全て置いて、そこで仕事をしていたわけです。
インターネットの時代になって、全部サーバーと手元のものがつながるようになって、処理を手元じゃなくてサーバーがやっちゃうっていうことなのですよ。それ発想としては、古くからあるわけですけど。あるいは、クライアントサーバーモデルっていうことで、サーバーとクライアントの間で負荷分散をしてコンピューター環境の中で、最適な環境を作るっていうやり方あるのですけども、クラウドは、極端に負荷がサーバー側に行っちゃっているっていうことなのです。
蟹瀬空に浮かんでいる雲みたいなところにサーバーがあって、そこから必要に応じて情報を交換できるようになっているっていうことですか?こう端末を持って考えれば。
辻野イメージを持って考えれば、クラウドっていうのはサーバー群を象徴するイラストとして考えれば、雲の絵を使っていることが多いので、リクシュミットなんかも使っていたので広がったのですけれども。
基本的には、いろんなサーバーのなかに置いてあるデータですとかアプリケーションをあたかも手元で使っているかのように使える環境をクラウドって言うわけですよね。
蟹瀬それが今、なぜ高く評価されるのですか?
辻野それが、究極までいくと何も持たなくて良いのです。パソコンの時代っていうのは、自分のPCの中に自分のもの全部取っておくわけですよね。だから、それが無くなっちゃったり壊れちゃったりしたら困るわけですよね。だから、どこかに出かけていくときに、データをパソコンごと持って行ったり、ハードディスク外して持って行ったり、メモリーカードに入れて持って行ったりするわけです。
クラウドの時代ってそういうことすること極端に言って無いわけですよ。常に、必要なデータっていうのはサーバー側にありますと。欲しい時に、それを手元から引っ張り出して覗ける環境さえあれば良いと。極端な話、手元のデバイスをかなり軽く出来るわけですよ。
蟹瀬なるほどね。
石田インターネットに接続するものさえあれば、今の携帯でも出来ますしね。
辻野携帯でもスマートフォンでも、PCでもとにかくネットワークにつなげてサーバー側を呼び出すことさえ出来れば、どこに行っても同じことが言えるわけですね。
蟹瀬それで、何が変わるのですか?
辻野私はクラウド推進主義者なのですけれども、もちろん、移行期ですからいろんな課題はあるのですけど、さっき言ったみたいに何も持ち歩かなくて良くなるってすごいメリットじゃないですか。
今、もう、例えばアイポッドにしてもね。音楽をダウンロードして、手元に持つこと自体がリスクになりますよね。古くなっちゃったら、例えば、ハードウェアを買い替えて、またこっちにアイチューンズ経由にしても移さなきゃいけないし、アイチューンズに元のデータが残ってなければ、また買わなきゃいけないってことにもなるのですけど。クラウドの上に常にあれば、それを見たい時に覗けば良いだけになるので。だから、手元がすごく身軽になりますよね。
蟹瀬だから、ビジネスもそういうのがすごくやりやすくなるっていうことですかね?会社っていう環境を考えた場合には。
辻野会社はとにかく企業秘密も含めて、会社のそのデータっていうのは外に持ち出すことに対して非常に神経質なわけですから。昔は、とにかくインハウスでシステムを作るわけですよね。厳重にセキュリティをかけて、システムの専門家に頼んでインハウスで全部作っていたわけですけど、それを作るのに非常に何十億、何百億と出すと会社の規模によりますけど、かかるわけですよね。
だけど、クラウドの時代は、それを専門業者にアウトソースするっていうことが出来るのです。データセンターを持っているクラウド事業者に企業内システムも全部アウトソースしちゃう。
蟹瀬アウトソースするっていう形になるよね。それで、必要な時だけ取り出すっていう。
辻野お金を銀行に預けるのに概念としては、似ていると思うのです。最初は、預けることに対して心理的な影響感とか恐怖感とかね。サーバーがダウンしたらどうなるのだとかいろいろあるのですが、それが基本的に問題ないということがだんだん分かってくると、IT派の投資の削減に非常につながるとか、あるいは、クラウドの環境を共有すると非常に仕事のスピードが早くなるんですよね。そういうメリットが分かってくると、少しずつ大企業も含めてクラウドの環境に流れ始めていますよね。
蟹瀬今、そういう流れが出来つつあるっていうことは、これからは間違いなくこの方向に進んでいくだろうと思って良いわけですか?
辻野私は、間違いなくそう思いますね。特に、去年の不況ですとか去年、一昨年、去年くらいの。ていうのがキッカケになって企業のコスト削減、それが一つの事柄になってインハウスからクラウドの環境に移すっていうことを真剣に考え始めたってこともあると思うのですが、基本的には、長い目で見るとクラウドの方にどんどん移っていくと思いますね。
辻野今、日本がやらなきゃいけないことっていうのを仮に2つだけ挙げるとすると。産業の新陳代謝を促進するインフラのその形成を国家も含めて当然、民間もどんどんやっていくっていうこと。
それから教育ですよね。教育そのものを変えていくっていう。もうグーグルで検索すれば良いようなことを学校で教える必要無いわけですよね。そういうことよりも教育の中身、そのものを、もっと地頭を鍛えるっていうか。その思考能力をつけるとか、日本人が一番弱いグローバルにビジネスをプロデュースする力を付けるとか。
あるいは、コミュニケーション能力を高めるとか。言語の、言葉の教育も含めてですね。日本以外の国の人たちと協調しあっていくコミュニケーションを身に着けるとか、交渉力を身に着けるとか、その教育の軸っていうのを変えていくようなことをやっぱり変えていかなきゃいけないのではないかと思います。
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