翼の再生を納得する「フィロソフィ」の中身とは? 元操縦士の挑戦と行き先
日本航空株式会社
代表取締役社長
植木 義晴
ナショナルフラッグキャリアとして、戦後日本の高度経済成長の一端を担ってきた航空会社、日本航空が2010年1月19日に経営破綻した。JALの再建を請け負った、京セラ名誉会長の稲盛和夫は、破綻後わずか2年8カ月というスピードで、東京証券取引所第1部への再上場を成し遂げた。JAL再生のために稲盛が手掛けた改革の2つの柱。それは「意識改革と部門別採算」であるが、驚異のV字回復を成し遂げるに至ったその原動力は、経営幹部から現場のマネージャークラスまでを対象に行われた、リーダー教育だと言われている。その再建の中心で、稲盛イズムを直接受け継ぎ、生まれ変わった日本航空株式会社代表取締役社長植木義晴が目指す新生JALとは、その全容に迫る。
蟹瀬人が宝の力というふうにお書きになっていますけれどもね、これはおっしゃる通りだと思うのですけれども、具体的には「人財力」というのは、どのようなかたちで実現されているのでしょうか。
植木今非常に世界の航空会社は厳しい競争環境にさらされていますので、他の航空会社とのしっかりとした差別化要素を持たなくてはいけない。そのときに当然、ハード、ソフトといった面も大切ですけれども、最後は何年かするとどうしても陳腐化してくるものなのですね。人財力は、ヒューマンの力というものは、いつまでも備わっていける、そういう意味ではうちの宝が人財力であり、かつ一番アピールできるのが人財力だというふうに思っています。
白石具体的にいいますと、どういった場面で人財の力というのが出てくるのですか。
植木先ほどの手帳の中に、フィロソフィの中に「一人一人がJAL」という言葉があるのですけれども。これ、われわれで考えて作ったのですけれど、例えば客室乗務員が客室の中でお客様と接しているとき、カウンターにいる女性がお客様とお話しているとき、まさしくJALを代表してくれているんですね。お客様からすると、その一人の女性を通して、JALをお知りになる。その意味では全てあなたに任せましたよと、いう気持ちで我々はいますし、そのためにも人間力を高める教育、それがわれわれのJALフィロソフィの教育だと思っています。
蟹瀬それが社内でうまくフィードバックされて、他のお客様と直接接触しない人たちも、そういう同じような気持ちが持てるということでしょうかね。
白石そうですね。社員一人一人のみなさんが、意識を持って安全を守る取り組みということで、今回は実際の整備作業について取材してまいりましたので、こちらをご覧ください。
JALのフィロソフィ教育は、整備の現場で安全への取り組みとして、どのように活かされているのだろう。
羽田航空機整備センター機体点検整備部・坂本汚れてきました。私の一番好きな言葉としては、「有意注意で仕事にあたる」という、何事にも些細なことにも、気をかけるようにという言葉が一番好きです。
この中で特に整備に関わることでですね、「お客さま視点を貫く」。特に破綻後私が意識するようになったのは、ターミナルにいたときにですね、そのお客様を見ることによって私たち整備はこのお客様を乗せて、乗せる飛行機を整備しているんだと、り強く意識をして、整備に取り組むようになりました。
全社員がJALフィロソフィから学び、一人一人の意識が目覚めることによって、それぞれの現場で自分ができることを探し始めている。そのベクトルの向かう先にあるもの、それはお客様の安全を守るという、航空会社としての究極のサービスであることは間違いない。
植木航空会社にとって安全がまさしく経営基盤ですから、そういう意味では一切の妥協を許さず、確実な整備をしてもらっています。われわれの手で整備士も育て上げています。そういう意味ではとても自信があります。
蟹瀬最近ですとパイロットがものすごく不足しているという事態、あれは僕はニュースとして聞いて、「そうなの?」と驚いたのですけれども、パイロットの育成というのは、この業界急務なのではないでしょうか。
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