300年企業が歴史的危機を乗り越えた「小商いのセンス」と「クラウド」とは
国分株式会社
代表取締役会長兼社長
國分 勘兵衛
江戸時代の初め、五街道の起点とされた現在の日本橋。この地で江戸時代から事業を繰り広げる創業300年の老舗企業国分(こくぶ)株式会社がある。国分は江戸中期に伊勢の4代目勘兵衛がしょうゆ醸造業を起業し日本橋に販売拠点を設けたことに始まる。明治に入って業態を転換し、卸問屋として様々な食料品を市場へと提供してきた。また、自社ブランドの缶詰製品なども生産、K&Kブランドとして消費者に広く知られている。元気な優良企業でいられるのは30年までと唱えられる一方で、老舗企業の長寿のゆえんとは。国分をけん引する國分勘兵衛の成長戦略に迫る。
國分戦争中は、戦争目的のために全てが統制されるということで、商売するにも物が無くなったということもありますし、従業員も兵隊に徴兵されるというようなことで、商売もかなり小さくなったというふうに思います。で敗戦の時は、もう焼け野原になって、これまた生活者の物資がほとんど無くなったということですので、何でも物があれば、生活者の役に立つということで、それこそなんでも竹ぼうきでもちりとりでも、大きいものでは機関車も売るというような、何でも売れるものは売るという、そういう時代でしたね。
宮川機関車も売られていたと。
國分機関車というと工業用の機関車ですね。どこかの炭鉱に売るとか。ですから、食品だけじゃなくていわゆる練炭ですとか、消費物資も売りましたし、面白いところでは機関車も売ったりなんかして。
宮川これ300年の危機っていいますけれども、日本の危機の時代、変革の時代でもあったわけですよね。そういった時代に国分が乗り越えてこられた、その変革に共通していることは何なんでしょうか。
國分やっぱり世の中の変化にいかに対応していくかということが大切で、その上に世の中の変化を一歩でも半歩でも先をいくということが大切だと思います。
宮川そういったこの一歩、半歩先をいくということは国分のDNAと言ってもいいと思うんですけれども、1991年に社長に就任されて、翌年12代目の國分勘兵衛を襲名されていますが、どういうふうな経営理念で国分をけん引しようとお考えになったんでしょうか。
國分我々食品を扱っていますから、食を通じて生活者の豊かな暮らしを実現するというようなことを申しましたね。それから、継続する心、革新する力というように、昔から続いてて、これだけは変えてはいけないものというのは変えてはいけないと。ただ世の中の変化に応じて変えてくものは積極的に変えていくというような、そういうことを学びましたね。
白石続いては襲名についてお伺いしたいと思うんですけれども、国分の頭首になったら必ず勘兵衛を襲名するのですか。
國分いえ別にどうしても勘兵衛を襲名しなくてはならないというものではないんですけれども、それは自分で必要だなと思えば決めます。ただ日本橋の界隈は割合襲名しておられる方が多くて、例えば布団の西川の西川甚五郎さんとか、飴屋さんの榮太樓(えいたろう)さんの細田安兵衛さんとか、それからにんべんの髙津伊兵衛さんとか、色んな方も襲名されておられまして、商売を続けていくのは勘兵衛を襲名した方がいいんじゃないかということで、私も襲名して12代目になりました。
宮川先ほど「小商い」という言葉が出てきたんですけれども、私たちは大商いをねらいたいところなんですけど、小商いというのはこれどういうことですか。
國分小商いはやっぱり大量生産、大量販売っていうことで、それで生活も豊かになってきているわけですけれども、そろそろそういう時代が過ぎて、個性に合わせた、個に合わせた多品種少量生産とかそういう形に変わってきたんですね。ですからそれに合わせて、小商いということが必要になるんですけれども。多くのお得意さんがありますし、多くの仕入れ先がありますし、そういう方たちとお取引をするのにやっぱり一つ一つ細かく商売をしていくということ、そういう小商いのセンスをもって商売をするということが、個に対しては必要じゃないかなというふうには思っていますけども。
宮川小商いと言うとちょっと古めかしい感じがしますが、実は今おっしゃったように少量多品種ということが小商いなんですね。
國分少量多品種ですけれども、売り方も多種多様でお得意様も多種多様になってきてますし、消費者の多様もそういうことですね。今は単身所帯が増えると、色々どんどん細かいものに分かれてきていますから、そこで採算が取れるような商売の組み立てができないとなかなかうまくいかないということではないでしょうか。
宮川今どうしても直にということで、問屋さんをスルーするということもあると思うんですけれども、その中で問屋さんはこれからどうやって中核となっていくかということをお考えでしょうか。
國分直というのはいいんですけれども、品揃えの問題ですとか、問屋が存在するっていうのは要するにメーカーと小売りが直接つながると1000のメーカーがあれば、1000の仕入れ先とお取引をしなければならないわけですけれども、そこに問屋が入ることによって問屋がまとめて一つの問屋と商売をすればいいということになりますね。そういう意味では非常にローコストになるわけですね。必要なものを必要な分だけ取り揃えるっていうのが問屋の機能ですから。
白石今年創業300年ということで、その300年を記念した事業を色々展開なさっていると聞いたんですけども、どんなことをやられているのですか。
國分300年になりまして、今大きく取り上げられているのは、ちょうど今年開店しましたスカイツリーの下にソラマチというところがあるんですけれども、そこに記念してオフィシャルショップというのを出しまして、これが大変大盛況でして、毎日数千人の方がお越しになるということで大当たりでございます。
白石ということでですね、ソラマチにオープンしました国分オフィシャルショップを今回取材してまいりましたのでこちらをご覧ください。
創業300年にあたって、国分は東京スカイツリー、ソラマチにオフィシャルショップ国分問屋を出店した。店内は市(いち)、蔵(くら)、厨(くりや)の3つのスペースに分かれており、国分の過去から現在までが凝縮された展示となっている。国分の自社ブランドであるK&Kの新商品、缶つまは、陳列されるだけでなく店内のレストラン厨(くりや)で料理メニューとして販売されている。
客今、色々食べたんですけれども、美味しいですね。お値段も手ごろですし。新しい味ですね。
また、フルーツ缶詰とパンを組み合わせる、ふるぱんというメニューもある。東京の新たなシンボルであるスカイツリー、ソラマチへの出店は国分がこれまで築き上げてきた企業価値を外部に発信しようという姿勢の表れでもある。
白石まさにああいった商品は昔と今の良いとこどりのコラボレーションという感じですよね。
宮川そうですね。老舗とそこのスカイツリーっていう最新のものが非常に良いコラボになりましたですね。
國分そうですか、ありがとうございます。
白石若い人だけではなくご家族で行って、みんなが楽しめるというのですかね、同じものを口にして共通な話題ができて、また会話も広がるというか良いことですよね。
宮川それから、そのお名前も面白いですよね。缶つまとか、ふるぱんとかっていう。
國分そうですね。これはみんな社員の人が考えたことで、皆が自主的に色々考えて想像力を発揮するという、そういうふうな形でやってもらっていますから、社長はあんまり何も言わないっていう。
宮川やっぱり若い方の感覚を大切にということですね。
國分大切にしてますね。それから女性の感覚も大切にしていますね、最近は。
白石と言いますと、具体的にどういう商品があるんですか。
國分こういう商品企画で活躍している部分もありますし、また日本橋1丁目1番地のROJIっていうのがあるんですけれども、そのROJIにセレクトショップを出したり、私どもの扱っているオリジナルな商品をそこで並べて売ったりしています。そういう想像力を色々集めてやっています。
300周年を迎えるにあたり、国分は本社ビル1階に初のセレクトショップROJI日本橋をオープンさせた。このショップは発案も女性社員なら、ショップのデザイン、企画、運営もすべて女性があたっている。
社員:阿部こういった陳列の台とか、色とか素材とか、そういった部分も徐々に話し合いで決めたりとか、あとロゴとか、制服とか、それぞれ決めるのに女性の意見で決めました。消費者の方の意見をお伺いするとともに、それを商品開発に生かしたり等もできますのでそういった点でとても役に立っています。
新商品等を並べて、情報を発信したり、お客様の声を直接聞くといった情報の収集のアンテナとし機能し、それで得た情報を社内の関連部署にフィードバックしている。
宮川これ初めてお出しになったんですか。
國分そうですね。新製品を出しますと、私たちみんな一番の悩みは、これどこで売っているんですかということなんですね。色々出しますから、それを全部揃えて売っているとこってなかなかないわけですよね。そのためにどこか一つお店を作ったらどうだということで、こういうふうになっているわけですけれども。
白石女性はやっぱり新しいもの好きですから、ああやって集まっているのは嬉しいことですし、やはり女性が考えたお店だなっていうふうに、とてもおしゃれできれいな。
國分そうです。ロゴって言っていましたけど、包装紙とか色んな袋とか、そういうものも全部女性がデザインしたりなんかしてやっています。
宮川やはりアンテナショップということですから、直接消費者の方の反応というのも皆さん探ってらっしゃるってことですね。
國分そうですね。
白石ではですね、これからの成長戦略を象徴する言葉は何でしょうか。
國分 「クラウドマーケティング」
ショップの経営など、積極的に事業展開を繰り広げる国分、さらなる成長戦略の言葉は、「クラウドマーケティング」とは。
宮川日本橋と言いますと数多くの老舗が、先ほどのお話にもありましたように有名なお店がありますけれども、そういう皆さんとの交流の中から何か新商品が生まれたりということもあるわけですか。
國分今度私どもで、お菓子の会社を作りまして日本橋菓房と言うんですけれども、そこで日本橋界隈の老舗の方とラボレーションしながら商品を色々開発しております。例えば山本の極上海苔を使った海苔巻きせんべいですとか、それからにんべんの特上のだしを使ったぬれおかきですか、それから榮太樓さんとコラボして、キットカットってネスレさんのやっているあれの中に榮太樓さんの黒みつを入れるものだとか、色んなものを作って、日本橋菓房で売ったり、ROJIで売ったり、ソラマチで売ったりしていますけれども、なかなか人気で結構よく売れます。
白石そのお菓子というのは普通のお菓子よりお値段というのはお高めなんですか。
國分お値段は結構高いですね。
白石わぁーやはり。
國分特別仕立てですからね。
白石そういったものを若い人が触れるっていうのは大切な経験ですよね、老舗のものをお菓子という手軽なもので触れるというのは。
國分そうですよね。海苔だけ売っているよりも何かにつけて売る方がいいと思いますしね。
白石新しい窓口と言いますか。日本橋に限らずその他にも食品メーカーとのコラボ商品があるとお聞きしたんですけれども、どんなものがございますか。
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