弁護士が映画をつくる?「大きく徹底的に」伝える、自然エネルギーの力とは
さくら共同法律事務所
河合 弘之
さくら共同法律事務所。1972年、竹内康二と河合弘之両弁護士により設立。1991年、さくら共同法律事務所と改称。現在、設立者の一人、河合弘之は、弁護士活動のかたわら、脱原発、自然エネルギー推進をテーマに活動を行っている。「自然エネルギーは、安全で豊かな新しい社会への入口である」。河合が目指す、これからの日本と、エネルギーの再生とは。
本格的に原発の戦いに取り組み始めた河合は、弁護士の有志とともに弁護団を結成。全国各地で原発差し止めの仮処分を求める訴訟を起こすなど、脱原発への活動を続けている。
河合やっぱり、環境の問題、自然エネルギーの問題、これを直接訴えるには、もうビジュアルしかない。これはもう映画だということで、映画(の世界)に入ったのです。
宮川もちろんお金はかかると思うのですけれど、それは、バブル時代に(笑) なんというのですか、貯め込まれた……。
河合当たり(笑) そんなこと言った人、初めてだけれど。あのね。僕はバブル時代にしこたま稼いだのですよ。それをちょこちょこ使っていたのだけれど、結構残っていたのですよ。それをつぎ込んで、今、映画を作っているのですよ。でもね、僕(の映画は)ね、ヒットするから、お金を回収できちゃうのですよ。
宮川あ、そうなのですか。自然エネルギーみたいなものですね(笑)
河合そうそう(笑)
宮川再生可能エネルギー。
河合そうそう(笑) 再生可能資金。
己の正義を信じ、世のため人のために走る。それが河合の弁護士としての矜持。
宮川脱原発という動きというのは、世界的にどういうふうに広がっているのですか?
河合自然エネルギーというのは、スピードがあって、それから安全で、安全というのは事業としても安全で、そして儲かるということで、世界中が、今、自然エネルギーのブームに沸き立っているのですよ。
福井日本はかなり遅れを取っているといいますか。
河合ええ、決定的に遅れを取っていて、時間がかかるのですね。原発って建築計画ができてからでき上がるまで最短で10年。下手をすると30年かかるのですよ。それは今の現代のビジネスのスピードについていかないのですよ。ところが太陽光とか風力って、計画を立てたら1年から2年でできてしまうのです。ここでエネルギーがいるとなると、バーっとできちゃうわけね。そうするとそれは非常に現代的なビジネスになるって、みんなが気付き始めて、今、原発が衰退していく、自然エネルギーが噴き上がっていくという状況が、今、世界中で起きているのですけど、日本には全くそれが伝わっていないというのが(現状です)。
世界的に自然エネルギーが盛り上がりを見せる中、日本でその気運が高まらない理由の一つが、原発を無くしたあと、自然エネルギーだけで電力はまかなえるのかという疑問。その問いに答えるように、河合は2017年、自身3作目となる映画「日本と再生 光と風のギガワット作戦」を制作。河合自身が世界各地を飛び回り、世界の自然エネルギーの今をレポートしている。
河合それでね、僕は自然エネルギー……この映画を作るのに2年半かかったのですけれど、その中で僕自身がずいぶん新しい事実にぶつかって、「ああ、そうなのだ」ということがいっぱいあった。例えばですね、世界中で一番自然エネルギーを絶対量として多くやっているのがどこだかわかります?
宮川北欧のほうの感じがしますけど。
河合でしょ? 違うのです。中国なのです。中国は世界ダントツ。風力はというと、日本の30倍。太陽光でいうと3倍以上やっているのです。原子力はすごい勢いでスローダウンしている。理由は、福島原発事故を見て、「あんな事故が中国で起きたら大変だ」と思って。それとあと、自然エネルギーが世界中にすごく大きな潮流になっていまして、原発の設備容量っていうのは400ギガワット、まあ、台数でいうと世界中に400台くらい原発があるのですけど、その設備容量の2倍風力発電と太陽光発電でいっているのですよ。そんなことを日本の人はほとんど知らないのですよ。自然エネルギーって環境派のお遊びみたいな、そういうふうに思っている人が多くて、経済界の人もそういう人が多いのですけど、でも違うんだよと。もう世界中そうなっていて、その理由は、環境派の良心とかそういうことではなくて、本当にコストが安くなっていて、例えば太陽光パネルでいうと、5年前の5分の1になっているのです。風力でいうと5年前の3割、4割減になっているのです。世界中が風力発電や太陽光発電を始めたのはそのほうが安いから。基本的にいうと、自然エネルギーって全部燃料費タダですから。タダより安いものはないのですよ。やっぱり。だからそういうことを日本の経済界や政界の人に伝えたいと思ったのがこれ(映画「日本と再生 光と風のギガワット作戦」)で、世界2周以上して、世界中の自然エネルギー先進国を回って、日本国中の自然エネルギーに取り組んでいる人たちに会いに行って撮ってきて。今、もう全国で自主上映が始まっているというところです。
福井私の勉強不足で申し訳ないのですが、太陽光発電でしたら、例えば雨の日だったりとか曇りの日はなかなか発電ができなかったり、風力でしたら、風のない日はなかなか電力が供給できないという、そのあたりは、どういうところで安定したエネルギーが得られるのでしょうか?
河合そう、安定供給というのは、非常にみんな不安を持っていますよね。お天気任せ、風まかせ。確かに風力発電を一本取り出すと、ブーンと風が吹くとこうなって(発電量が上がって)、風が止まるとこうなって(発電量が下がって)、こういう波を打つでしょう。太陽は、おひさまが出ればこうなって、夜になったらこうでしょう。曇ったらダメでしょう。ひとつひとつを取り上げると、たしかに不安定なのですよ。だけどそれを何千何万というふうに作って、そしてそれをコンピューターコントロールすれば、台数の法則というものが働いて、ひとつひとつはこう(不安定な発電量推移)でも、足してコンピューターで繋げば、こういう(安定的な)波になるのです。今、経済界で話題になって、期待されているIoT(Internet of Things)という技術があるわけですけれど、それと自然エネルギーのコントロール技術というのは、同じなのです。だから、自然エネルギーをきちんと勉強して、コントロールの技術を習熟することは、IoTの世界に入っていく第一稽古場なのです。自然エネルギーというのは数万の電源があって、かつ数万の需要先があるわけです。家庭だとか工場だとか、学校だとか病院だとかね。それをこうやって集めて……ビッグデータで集めて、人工知能でコントロールするっていうのが、これが自然エネルギーとIoTの接触点なのです。自然エネルギーとIoTで回る世界を早く実現したいなと。
福井でもなぜ日本は、自然エネルギーが普及しないのでしょうか?
河合一番大きい原因は、系統連系の話で、自然エネルギーを作ったものを電線につなげるのにすごく大きな障害があって、まずひとつはですね、各電力会社が接続可能量というのを決めちゃうのですね。「うちは原発の電気はこれくらい、火力はこれくらいで、あと余っている枠はこれしかないですよ」って、それを超えたら、補償なしで通告なしで「買うのをやめちゃいますよ」ってあらかじめ言うのですよ。そうすると銀行が金を貸してくれないのですよ。経営予測が立ちにくくなるから。それで、接続可能量が第一でしょ。今度は、各電線について「空き容量ゼロ」っていう問題があって、電線はここにあるのだけれど、ここに入れなければならないのは、まず原発と何と、といって……
宮川今までに発電している分があるのですね?
河合「だからダメ」と言われちゃうのですよ。「そんなこと言わないで入れてよ」と言うと、「じゃ、電線太くしてやるけど電線を太くするお金をあなたが払いなさい」と、系統連系費用というのを払わせる、この3つがあるのですね。これが今、風力発電と、特に太陽光発電の発達を妨げているのですね。
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