海外の一線級で学んだから実現したい、日本モノづくりのDNAで世界標準へ

アナログ半導体の用途とマーケット

石合こちらに用途例のほんの一部なのですが、車用だったり、あるいはスマホ、それから、ほとんどの私たちの身の回りの家電に使われております。従って、私どもはこういった小さな製品で普段は目に掛からないのですが、実際には皆様方の生活のあらゆるところでお役に立っている、健気な貢献をさせていただいているわけです。

蟹瀬2016年にこのアナログ半導体部門を分社化されたわけですよね。ということは、このアナログ半導体に絞ったことによって、それなりに需要があって、ビジネスとして成立するというご判断はあったということですか？

石合はい、そうです。デジタル半導体に比べますと、アナログ半導体のマーケットはさほど大きくはないのですが、車用だったり、スマートフォン、それからほとんどの家電に使われておりまして、今後も車載の自動運転化だったりとか、さらにはIoT（Internet of Things）社会の到来もありますので、需要はこれからも堅調に大きく伸びていくだろうと見込まれています。

蟹瀬そうすると、当然のことながら、たとえば、海外のメーカーも注目して、参入してきて、大変競争が激化することもありえるのですか？

石合競争自体は現在でも厳しいものですけれども、お客様の要求が非常に多岐にわたっています。柔軟に対応していくためには私どもだけでも数千種類の品ぞろえをしていまして、生産能力だとか、力で押していくという世界ではない気がしております。

Small Smart Simple、一気通貫がエイブリックの強み

坪井エイブリックの強みは具体的にはどのようなものなのでしょうか？

石合「Small Smart Simple」という元々が時計の技術からスタートしていますので、小さく作っていくということ。低消費電力、低電圧動作、そして、超小型パッケージ。この三位一体が私どもの強みです。

低消費電力　低電圧動作　超小型パッケージと現場力

石合そして、もう一つはそれを具現化できる現場の力があるということだと思います。マーケティングがあり、開発があり、回路設計、テスト、前工程と言われているウェハ（※半導体素子製造の材料）の製造、それから後工程と言われているパッケージの製造、垂直統合型の生産システムを作っております。これらが一気通貫でもっていることが私どもの強みでございます。

垂直統合型の一気通貫生産体制

蟹瀬ということは、これは国内でやられているということなのですか？

石合はい、そうです。単に設備の力だけではなくて、切り替えたりとか、とっさに判断したりとかは、やはり、人の匠の世界に依存するところも大きいんですね。熟練した経験のあるオペレーターの方々が私どもの一つの強さだと思っております。

商品開発二部　開発四課　渡邊 考太郎
商品開発二部　開発四課　海老原 美香

ドーキンズ私は今、千葉県松戸市にあります、エイブリックの高塚事業所に来ています。早速、伺ってみたいと思います。まずは、製品の開発をしている方にお話を聞きたいと思います。まず、製品開発といっても、いろいろな工程があると思いますが、具体的には何をされているのですか？

海老原工程設計を担当しております。

渡邊回路設計を担当しております。

海老原料理でたとえると、（工程設計は）レシピを考える人になります。

渡邊私（回路設計）は要望に応じて、いろいろなレシピを組み合わせて料理を作る料理人のような仕事です。

設計された回路は円盤状のシリコンウェハに転写される。1枚のシリコンウェハにはおよそ数万個の回路が転写され、その後、製品ごとに切り出され、加工される。

ドーキンズ小さいですね。この一つ一つはどのような役割を持っているのですか？

渡邊それぞれ違った役割を持っているのですが、たとえば、こちらはスマホケースを想定したデモ機になっております。下の所に磁石がついていまして、こちらに磁気センサーが実装されています。ふたを閉めると……。

ドーキンズあっ、赤くなりました。この黒い点のようなもの（※磁気センサー機能のIC）で感知しているということですか？

渡邊そうですね。

ドーキンズほかのこのICの役割で分かりやすいものは何かありますか？

渡邊一例としては車のキーレスエントリーなどにも使われています。その一つの鍵で一つの車しか開けられないようなセキュリティーデータを格納するところに使われています。

ドーキンズでは、ちゃんと自分の車と鍵をマッチングしてくれるデータがこの小さい一つの中に入っているのですね。

渡邊はい、そのとおりです。