海外の一線級で学んだから実現したい、日本モノづくりのDNAで世界標準へ
エイブリック株式会社
代表取締役社長 兼 CEO
石合 信正
時計作りで培った技術を活かした、高品質な「アナログ半導体」。デジタルの半導体は聞き慣れた言葉だが、「アナログ半導体」も、デジタル社会を支える一翼を担う。1937年創業、現在のセイコーインスツル株式会社を前身とする、株式会社エイブリックを牽引する代表取締役社長兼CEO・石合信正。GEのジャック・ウェルチにも学んだという、海外の一線級からカムバックして感じた、日本のモノづくりDNAに対する思いと未来とは?
こちらは立命館大学。理工学部で環境発電を研究している道関教授はエイブリックと水漏れセンサーの共同開発に取り組んでいる。
道関今は熱、光、エネルギー、それ以外にも身の回りにエネルギーはいろいろありまして、私たちの場合は人間から出る尿であったり、あるいは植物の樹液を使ったりなど、そういったエネルギーを使って、世の中とは違う環境発電で優位性を出していこうと思っています。
おむつのなかの2本の電極が水分でつながることで発電が始まり、内蔵コンデンサに電気が蓄積されていく。一定量たまると無線が起動し、おむつの交換時期を知らせるという介護者の負荷を軽減する発電システムとなっている。
道関環境発電で我々がやっているところは少なくとも日本というよりも世界で戦える技術だと、私は思っています。
このシステムはクリーンブーストと呼ばれる技術の一つで、2017年のCEATEC(シーテック)において多くの注目を集めたという。道関教授と共同開発をするエイブリックの担当者に電池レスセンシング技術の可能性について話を聞いた。
武内このセンシング(※センサーでさまざまな情報を得る技術)で、センサーの数自身が将来1兆個とか、そういった数に増えると言われていまして、その一つ一つに電源をつけるとなると、電池だけでも、相当の数が必要になります。あと、電池レスですと取り替えが必要ありませんので、メンテナンスが楽になります。
今まで、センサーを設置することが大変だった所にも設置できるようになると考えています。
蟹瀬これからこのエイブリックという会社はどっちの方面に向かって、目指していかれるのですか?
石合今までは時計から車まで電池を使われているところにも貢献していたのですが、今度は自然界のエネルギー、水であったり、熱であったり、光であったり、これらからいわゆる、稼働するような新しい分野も追求していただいているところです。長期にわたっては、電池レスの世界を作り上げていくような提案型の仕事をパートナーシップで作っていって、大きな貢献をしていきたいということです。もう一つ、私、個人的な思いがあるのですが、やはり、モノづくりのDNAですね、これを一つのロールモデルに持っていきたいと思っています。そして、次世代への継承を可能にしていきたいという思いがございます。
蟹瀬モノづくりで匠の世界といった場合は、その人が亡くなったらなかなか継承ができない。それをきちんとモデル化することによって、次の世代へ渡していける、そういうものを作り上げていかなければならないということでしょうね。
石合そうですね。
坪井次世代への継承のために具体的に今、取り組んでいらっしゃることは何かあるのでしょうか?
石合一つはやはり、市場も海外に向いておりますし、グローバルのワンチームということ。これは今までのグローバル化はどこが本拠地で、そして、もう一つ枝を作っていく形なのですが、僕たちが目指しているグローバル化というのはそれぞれの機能ごとに全世界の一つの一家のように、一つの家族のようにして、同じ方向を向いてみんなが進んでいくという形のグローバル化を目指していきたいと思っています。
蟹瀬しかし、そういうことをやるためにはそれを支える人材がものすごく大事になりますよね?
石合おっしゃるとおりです。
蟹瀬そのへんの人材の発掘、あるいは育成はどのようにお考えになられていますか?
石合やはり、24時間の仕事のうちで、仕事をする時間は非常に長いですし、この時間が楽しくて、挑戦的なものであるか、あるいは、受け身で退屈なものであるかということは、1日の全体にすごく大きな影響を与えると思うんですね。一人一人がやりたいことをやり切りたいと思っていたら、ぜひ、やらせてください。
蟹瀬そういう人材が欲しいということですね?
石合はい。
蟹瀬年齢とか経験はどうなのですか?
石合年齢・経験は問いません。国籍も性別も関係ありません。エイブリック(ABLIC)はABLE(可能) + IC(半導体集積回路)。不可能を可能にする技術でございます。スタートが世界初のクオーツ時計に使われた小型のICからスタートしていまして、今後、私たちは自然界のエネルギーを使って、発信していくようなところにまで手を伸ばそうと思っています。不可能を可能にする技術。そして、それを支える現場力。これを追求していきたいと思っています。
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