常識破り!「前例があるといったら全部やめる」のパワー
エステー株式会社
取締役会会長兼執行役
鈴木 喬
「ものを売る前に自分を売って、それから会社を売って、それから熱意を売って」。少年時代に過ごした戦後すぐの焼け跡がを原点。どんなことをしても生きていけるという自信とともに会社を急成長させた鈴木喬の、ヒット商品を次々に生み出す秘密、経営手法とは?
鈴木ええ。私、いろいろと世界中を回っていますが、原則は自分の勝手に自分の土俵で勝負する、だから一切、人の言うことは聞かないと。そのうち困り果ててみんなフラフラになると。これを私、原則にしてるんですけどね。
蟹瀬あら、大変だ、敵に回すと。それで実際の再建のほうはうまくいったんですか?
鈴木いや、もう企業というのはうまくいかなくなったら右肩下がりにどんどん悪くなります。100人いた社員を50人まで辞めてもらいまして、それから自分で売りにいきましたけど、これは駄目と。
蟹瀬企業そのものを売ってしまうと?
鈴木はい。
鈴木見切り千両というのが私の大方針なんです、なんでも。ですから見切りだ、これは見切りだと。で、どこへ行ったら一番高く売れるかと、同業者のナンバーワンですよ。そこへ行きましてハードネン<聞こえた音、調べたが分からなかった>をやりました。耐えるは私一人だけですからね。
1998年、エステー化学株式会社 代表取締役社長兼営業本部長に就任します。1999年、『消臭ポット』発売、そして2000年、『消臭力』発売、『脱臭炭』発売となりました。
蟹瀬正直申し上げて、鈴木さんが社長に就任するという際には、相当反対の声があったというふうに伺っているんですが、どうだったんですか?
鈴木ええ、全員反対です。反対がなかったらもっと早くなっていたでしょう。私社長になったの63歳8カ月ですからね。
鈴木専務になったのは、もう本当に半年ぐらい前ですからね。大方の世評は「彼に任せたら会社は潰れる」と、皆さんそう思ってましたね。
蟹瀬それはなぜなんですか? その前の社長さんは、いわゆる拡大路線だったわけですよね? それをもう180度転回したということですか?
鈴木はい。日本の会社はもう皆さん成功体験が体中に染み付いていますから、なんとかやったらそのうちまたフォローの風が吹いてくると、みんな思い込んでいたんです。ですから、私のほうはもう二度とフォローの風は吹かないと、成功体験を全部抹殺するということですからみんな怒りますよ、こんなこと。もう抵抗なんてものではないです、私ひとり対全員敵と、こういうふうに思いまして、議論してたら時間かかりますから。社長というのは強いんですよ、いざとなれば。死んでもやる!と、こういう感じですからね。命令だ!と、実行する!と、誰も言うことなんか聞きませんよ。
蟹瀬具体的にはどういうことを実行されてきたんですか?
鈴木例えば品種が860品種あったんです。それを3分の2捨てまして、290品種まで絞り込む。これはもうみんな、下手にやりますと責任問題になって何もできませんから、全て社長の責任でやるということですね。取締役も13人いたんですが、これも5人にしてしまう。荒っぽいですよね? 考えたら。
蟹瀬ええ。
鈴木例えば、大量品といいますか、売れないものがものすごくあるんですね。これを私ども、物流拠点が5階建ての大きなのがあるんです。1階はどんどん売れてるもの、2階、3階に行くに従って売れなくなって、5階に至っては本当に全く売れないものと。そこへ毎週金曜日に行くんですよ。
鈴木で、「みんな捨てろ!」と。
蟹瀬5階にあるものを?
鈴木ええ。(社員は)「10億円あります!」、「全部捨てろ!」と、誰も言うこと聞きませんよ。でも半年ぐらい騒いでましたら少し減りますよ。少し減ったら後は早いですよ。
蟹瀬そういうもんですか。
鈴木はい。執拗に社長は言い続けないといかんですよ。
蟹瀬後は仕入れなんかもありますよね?
鈴木はい。
蟹瀬やっぱり相当シビアにやらないといけないでしょうから。
鈴木はい。主要な仕入先、全部自分で回りました。それで自分で念押し<値下げ交渉いう意味の言葉だと思うが、調べても分からなかった>ました。皆さん、どちらの仕入先の社長からも「もう二度と来ないでくれ」と塩まかれました。
蟹瀬それでも仕入れはできてきたわけでしょう?
鈴木はい。劇的に下がりました。いかに甘かったか。
蟹瀬なるほど。やっぱりしっかりした値切り交渉というか、そういうこともやらなければいけないということですよね?
鈴木はい。値切りの前に、相手のことよく知らないんですよね。ほとんど購買部門に任せてましたから、何が何だか分からず適当に買っていたんですよね。ですからちゃんと話をすれば皆さん分かってくれるんです。
蟹瀬あと、営業についてもご自身が前面に出られたって。
鈴木はい。私、営業は好きというのを通り越えて趣味です、大好きです。というか人間が好きですので、年間150日間ぐらい出張してましたね。全国並びに全世界自分で行きましたね。
蟹瀬海外も?
鈴木ええ。これは本当に困った趣味ですよね、うちの営業にとっては、社長が大好きって。
蟹瀬びっくりしますよね。社長が営業マンより先に相手の所にいってしまって勝手に交渉しているわけですから。
鈴木はい。ですから全国のご販売店の社長、主要な社長は全部お友達になりました。ですからうちのセールスはうそ言えないんです、私に。すぐ電話しますから、「そのうそ、本当ですか?」とかってやりますからね(笑)。
蟹瀬そうすると、企業の中の社長というには鈴木さんからご覧になって、どういう存在なんですかね?
鈴木よその社長はお公家さんみたなものですよね。
蟹瀬というのは?
鈴木私、社長室にいるのは1週間に、そうですね、木曜日の午前中ぐらいしかいないとかですね。それで私の働く場というのはお店なんです、お店、私どもの品物を売ってくれてるご販売店の店頭ですよね。そこを克明に見ているんです。ですから土曜、日曜も嫌がる妻を車に押し込んで……。それでずっとお店回って、いろんな買っている人にいろんなことを質問する、「どうしてそれ買いました?」とか。車でもどこでも行って、どういう色がはやっているとか、どういうファッションがいいんだろうかと。それから帰りも、会社からの帰りは全部電車で途中下車して、何軒も何軒も寄って帰りますから、いつも妻に「あんた何やってんの!」と怒られました。
蟹瀬「どっかで浮気してるんじゃないの?」って(笑)。
鈴木(笑)そうなんですよ、本人大真面目なんですがね。
蟹瀬だけど商品、もちろん営業は商品を売りにいくわけですけれども、その商品があまりよくないという場合は売れないですよね?
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