異常高騰の原油価格を反落に追い込む「チャンス」 投機マネー規制や中国など新興経済国の需要減が引き金に


時代刺激人 Vol. 1

牧野 義司まきの よしじ

経済ジャーナリスト
1943年大阪府生まれ。
今はメディアオフィス「時代刺戟人」代表。毎日新聞20年、ロイター通信15年の経済記者経験をベースに「生涯現役の経済ジャーナリスト」を公言して現場取材に走り回る。先進モデル事例となる人物などをメディア媒体で取り上げ、閉そく状況の日本を変えることがジャーナリストの役割という立場。1968年早稲田大学大学院卒。

どう考えても今の原油価格の高騰は異常過ぎる。誰もが、そう思いながらも、ここ数年、あれよあれよという間に、原油の価格はぐんぐん上昇し、日本のみならず世界経済に大きな打撃を与えてきた。

どう考えても今の原油価格の高騰は異常過ぎる。誰もが、そう思いながらも、ここ数年、あれよあれよという間に、原油の価格はぐんぐん上昇し、日本のみならず世界経済に大きな打撃を与えてきた。株式の世界で「山高ければ谷深し」という言葉があるように、行き過ぎの反動は必ず出てくるはずだ。原油を高値づかみしている投機筋にとっても、もしや暴落、という高所恐怖症に陥る状況があるのでないだろうか。
そういった矢先、最近、ニューヨーク原油先物市場(NYMEX)の投機マネーに異変が起きつつある。米当局の規制の動きに対して、投機マネーに動揺や狼狽が見え、結果的に、高騰原油に反落の動きが出てきたのだ。GOOD NEWSと言っていい。

当局の規制の動きというのは、具体的には、米商品先物取引委員会(CFTC)が原油先物市場での投機マネーの監視強化に乗り出す一方で、米議会は原油ビジネスに直接関係しない投資家の原油先物取引を制限する動きに出たこと、また米証券取引委員会(SEC)も株式市場に対する空売り規制に踏み出すなど、当局がニラミをきかせたのだ。

ドル資金逃避恐れ規制に慎重だった米国が返信

これまで米国の当局は、規制を厳しくすると、米国からマネーが外へ逃避、流出してしまいかねず、それはそのままドル下落を誘発しかねない、との判断から、今年の洞爺湖サミット前の財務大臣会合時にも、欧州などからの投機マネー規制要求に対し米国は慎重だった。それが一転、規制強化に踏み出したのは、原油高騰の影響が米国経済にボディブローとなってきたからだとみていい。それにしても、動き出すと米国の当局の行動は素早い。スピードの時代に対応したもので、日本の当局も、こういった点では見習うべきだ。

ただ、原油先物市場を食い物にしていた投機マネーもしたたかであり、抜け道を早くも準備しているかもしれない。規制の手を緩めず、矢継ぎ早に行うことを期待したい。

この投機マネーの動揺に揺さぶりをかけるもう1つの材料がある。需要が旺盛と言われた中国やインドの新興経済国でも最近、高値原油に対して需要減退の動きがあるのだ。中国などの需要が堅調で、先行き値崩れがないと見て強気の投資をしていた投機マネーも、基本的にはマネーを大事にするという意味では保守的なのだ。もし中国などの先行き需要が減退するとなれば、これら投機マネーが、あわてて先物取引を手仕舞う可能性もあり得る。これも高騰原油反落のチャンスといえる。

この新興経済国での需要減退というのは、高騰原油の輸入に外貨支払いが多くなり、インドでは自国通貨も下落、あおりで輸入物価の値上がりを招いて需要がダウンし始めている。また中国では、政府が国民からの反発覚悟でガソリン価格の18%値上げを行った。これまで財政で必需品物資の価格を財政補助で補てんしていたが、次第に限界が出てきたのだ。原油輸入国に転落したインドネシアも、この財政補てんでまかない切れずに苦しんでいるのを見ても、中国にも同じ問題が起きる可能性さえあるのだ。

ここで、ぜひ申し上げたいのは、2000年代に入っての原油高騰をもたらしたのは、中国など新興経済国の旺盛な需要もあったが、投機的マネーという、国籍もない、国家的な戦略なども持ち合わせていない、ただ利益だけを求めて動き回る曲者マネー集団が値上げを演出していることだ。

08年に入ってからは、極めて荒っぽい値動きで、わずか1週間で5ドル、10ドルといった跳ね上がり方をしている。需給要因がメインであれば、時間をかけて、小刻みに、じっくりと値固めされていくものだ。そうでない荒っぽい値動きは、間違いなく投機がもたらす典型パターンだからだ。

米金融不安で行き場のないマネーが原油などの商品市場に

なぜ、原油先物市場に投機マネーが入り込んだのか。すでにご存じのとおり、米サブプライム・ローン・ショックをきっかけに、米国内に金融不安が広がっており、投機マネーはすっかり行き場を失い、金融市場から商品市場に舞台を移したのだ。穀物などの商品市場も、格好の投機マネーの利益ねん出の場になったのだ。この中にはヘッジファンドだけでなく、年金基金といった長期の資金運用をめざすファンドも加わっている。

「時代刺激人」の立場で言わせてもらえば、原油価格の高騰で、それに影響を受けるさまざまなモノやサービスの価格がいったいどうなるのか、どこで落ちつくのか、いわゆる新価格体系の落ちつきどころがまったく読めない、ということが最大の問題だ、と思う。

7月15日に、日本国内の20万隻の漁船が燃料費高騰に伴う廃業危機に抗議する形で一斉休漁したのは、よく理解できる。政治の問題として、短期的かつ一時的に何らかの燃費補助などを検討せざるを得ないだろう。

しかし、それを始めると、農業の現場のみならずトラック運送業、果ては製造業全般、サービス流通業までと、際限ない対策が求められることになってしまう。減税で対処するのか、財政赤字拡大を一時的に覚悟してでもやるのかどうか、といった問題も出てくる。やはりグローバルなところで、原油高騰をもたらす投機マネーを抑えることが先決だ。

それに、代替エネルギー、新エネルギー開発も大胆に進めるべきだろう。

マネー資本主義に歯止めかけ「新価格体系」の落ちつき所を探れ

ここまで申し上げれば、こうした世界中を混乱に陥れている投機マネーに何らかの歯止め策、規制を加えることに賛成いただけるはずだ。問題はどういった対策があるのかだ。

1つは米当局が重い腰をあげた厳しい監視、それに原油取引と無関係の企業などの思惑的な原油取引に規制を加えること、ヘッジファンドなどに情報開示を求めることだろう。

また、サブプライムローン関連でのさまざまな債権の証券化商品が金融システム不安をもたらした「学習効果」を踏まえ、投機的な動きを助長する金融派生商品にブレーキをかけることも必要だ。

マネー資本主義といわれる思惑で動く投機マネーに対し世界中の当局が歯止めをかけること、それによって原油価格の高騰に伴う新価格体系の落ち着きどころを探ることだ。状況を放置することは許されない。企業経営の現場におられるビジネスリーダーの方々も同じ気持でないだろうか。

 

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