「日本代表のマインドセット変えることに腐心」 エディー・ジョーンズHCラグビー組織論に学ぶ


時代刺激人 Vol. 277

牧野 義司まきの よしじ

経済ジャーナリスト
1943年大阪府生まれ。
今はメディアオフィス「時代刺戟人」代表。毎日新聞20年、ロイター通信15年の経済記者経験をベースに「生涯現役の経済ジャーナリスト」を公言して現場取材に走り回る。先進モデル事例となる人物などをメディア媒体で取り上げ、閉そく状況の日本を変えることがジャーナリストの役割という立場。1968年早稲田大学大学院卒。

ラグビーが俄然、日本中を湧かせるスポーツになっている。多くの方がご存じのとおり、英国で開催中のワールドラグビー大会で、日本代表チームが初戦の優勝候補の強豪南アフリカ代表チームに対しゲーム終了間際に劇的逆転トライし、見事に勝利したことがきっかけだ。

 ラグビーが俄然、日本中を湧かせるスポーツになっている。多くの方がご存じのとおり、英国で開催中のワールドラグビー大会で、日本代表チームが初戦の優勝候補の強豪南アフリカ代表チームに対しゲーム終了間際に劇的逆転トライし、見事に勝利したことがきっかけだ。トライした瞬間、茫然自失の南ア選手を前に歓喜する日本選手の姿を当時、TVで見ていて「やった!」と、私が思わず声を出すほど、感動的だった。多くの方々も同じ思いで、それが軸になってにわかラグビーファンが急増する結果となったのは間違いない。
 日本は結果的にスコットランド代表チームに敗退したものの、事前の予想を覆して3勝1敗で勝ち進み、一時は決勝リーグに残る可能性もあった。見事というほかない。日本ラグビーは当初、体力差などでニュージーランド、豪州、南アフリカ、英国などの強豪には勝てない、といったイメージが定着していたが、今回、それを覆す「勝利の方程式」を世界中に見せつけたのだから、間違いなくすごいことだ。

日本代表を強くした秘密、
HCエディーさんとの10時間インタビュー本にヒント

そこで今回は、経済ジャーナリストにとっては異分野ながら、このラグビー日本代表チームの問題を取り上げてみたい。ワールドラグビーに一家言をお持ちの方がたぶん多いだろうから「あいつは訳知り顔で、もっともらしいことを言っている」と反発を招きかねないが、日本代表チームを世界の一流チームに押し上げたヘッドコーチのエディー・ジョーンズさんの組織論から何を学ぶか、というのがテーマだ。ぜひ、ご覧いただきたい。

私自身は以前から「人を動かす」「組織を動かす」といった組織の研究、「なぜ組織は失敗を繰り返すのか」など組織の失敗研究に関心を持っており、今回もエディーさんがなぜ、日本代表チームをここまですごいチームに押し上げた秘密は何なのだろうか、ということに強い興味があった。それを探る本や資料を探していたら、ノンフィクションライターの生島淳さんが10時間インタビューを行った「エディー・ジョーンズとの対話 コーチングとは『信じること』――ワールドカップに挑む指揮官が語る組織論」(文藝春秋社刊)という格好の本があった。わくわくする本のタイトルだが、読んでみたら大当たりで、思わず引きずり込まれたので、この本を軸に組織を動かすポイントを探ってみよう。

日本独自の攻撃的ラグビー「ジャパン・ウエイ」を、
そのために世界一厳しい練習必要

結論から先に申し上げよう。エディーさんがインタビューで述べているキー・メッセージに組織づくりのヒントがある。「日本の独自スタイル『ジャパン・ウエイ』を示して世界を驚かすことだ」「攻撃的ラグビーが重要だ。世界一厳しいトレーニングを通して、スクラムで相手に押し負けない筋力と80分フルに走り切れるスタミナを養い、攻撃は最大の防御とすべきだ」「自分たちは勝つために戦っているのだ、という意識改革が必要だ。人間はどうせ負けると思ったら絶対に負ける。そう思い込むマインドセットを変えるのだ」「コーチングはアートであり、サイエンスだ。試合に向けてのコーチが練り上げる練習計画は、科学的データなどをもとに行う」などだ。

まず「ジャパン・ウエイ」だ。エディーさんは「日本代表が(世界で勝ち抜いて)成功するためには選手たちが『自分たちのプレースタイルで戦うんだ』ということに自信を持つことだ。そう信じることだ。それをもとにジャパンらしいオリジナリティあふれるラグビーを創造していかねばならない」という。その点に関連して「日本は第2次世界大戦後、国を作り直した。アジアの他の国とはスタンダードが違った。なぜ、それが可能になったのか?日本らしさを生かし、自分たちの方法で再建できると信じたからだ。ラグビー日本代表が(ワールドラグビー大会で)勝つことで、日本の文化は変わる」とも述べている。

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