時代刺激人 Vol. 311
牧野 義司まきの よしじ
1943年大阪府生まれ。
日本は二流、三流の先進国に陥った?
知り合いの外国人と最近、話していて、痛いところを衝く指摘があった。日本はクリーン(清潔)で安全、地下鉄など社会インフラは整っていて住み心地がいい、食事も味のよさ、おもてなしサービスのすばらしさがあり、間違いなく生活大国先進国だ。でも強いはずの経済は、なぜか大胆なイノベーションがなく、世界中が目を見張るすごい企業が生まれてこない。技術では優れた国とみられているのに、何とも不思議だ、と。
口惜しいかな、この指摘は事実だ。日本は先進国経済の地位にありながら、過去30年の平成年間を見た場合、経済を主導するめざましいイノベーションが起きていない。当然、経済にダイナミックな動きがなく、先進国間の実質GDP(国民総生産)伸び比較でみても日本だけが平均年率1%半ばの低成長にあえぎ、今もその状況を引きずっている。
ずばり申し上げたい。日本は、経済一流を誇示しているが、現実は、大企業を中心に大組織病が蔓延、肥大化した組織を守ることに無駄なエネルギーを費やし、安全運転経営に終始している。結果は、破壊的なイノベーション経営に背を向けてしまい、停滞を余儀なくされている。このままでは二流、三流の先進国に陥るリスクが大だ。
小林さん「今の日本は危機感なき茹でガエルだ」
最近、私はある会合でビジネスリーダーの中でも危機意識が強い前経済同友会代表幹事で現三菱ケミカルホールディングス会長の小林喜光さんに、この点をぶつけたところ、即座に「日本はすでに二流、三流の先進国になってしまっている」との答えが返ってきた。
小林さんは、経済同友会がまとめた「危機感なき茹でガエル日本」(中央公論社刊)の本の中で「ぬるま湯に浸かっているカエルが、徐々に水温を上げても気づかず、やがて熱湯になった時に逃げだすことが出来ずに『茹でガエル』になってしまう」という事例をもとに、日本が過去の成功物語にこだわり危機感がないまま状況に流されている現実を厳しく批判している。そして「過去の延長線上に未来はない」とイノベーションへのチャレンジを強く訴え、大企業が巨額の利益を内部留保として貯め込むのは間違いで、研究開発投資につぎ込むべきだ、という。全く同感だ。小林さんは最近、政府の規制改革会議議長に就任されたので、大胆な、常識破りの改革を期待したい。
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