日本は二流、三流の先進国に陥った?


時代刺激人 Vol. 311

牧野 義司まきの よしじ

経済ジャーナリスト
1943年大阪府生まれ。
今はメディアオフィス「時代刺戟人」代表。毎日新聞20年、ロイター通信15年の経済記者経験をベースに「生涯現役の経済ジャーナリスト」を公言して現場取材に走り回る。先進モデル事例となる人物などをメディア媒体で取り上げ、閉そく状況の日本を変えることがジャーナリストの役割という立場。1968年早稲田大学大学院卒。

中国企業も日本の大組織病を批判

そのことで、思い出した話がある。2018年5月に中国深圳のイノベーションセンターを訪問した際、中国のベンチャーキャピタル企業の幹部から日本企業経営への批判が出た。「深圳のベンチャー企業経営に強い関心を持つ日本企業が視察で来ていて、名刺交換したらCEO(最高経営責任者)だったので、ビジネス連携投資を打診したら『日本に帰国後の経営会議で協議してからご連絡する』という。権限を持つCEOなのに、なぜ自分でスピード経営判断が出来ないのか」と。要は、日本の大組織病を批判したのだ。

さらに、その企業幹部は「中国には日本にない強みが出てきた。消費購買力のある中間層の厚みが出てきた中国の14億人市場の存在だ。日本企業はそれを活用し相互補完の関係をつくればいい」と。その幹部によると、日本企業は中国警戒から技術オープンを避けるが、あえてリスクをとって、中国の巨大中間層をターゲットに、技術の裏付けを持つ商品をぶつけ、市場で社会実装してみればいいでないか、という。この点で見る限り、中国企業の方がグローバルなマーケットの時代をタフに活用しようとしている。学ぶべき点だ。

ジェット機開発めぐる三菱航空機とホンダの差

もう1つ、この機会にアピールしたい問題がある。ジェット機開発をめぐる三菱重工業傘下の三菱航空機と本田技研工業の航空子会社ホンダエアクラフト両社の経営姿勢に際立った違いだ。日本のモノづくり企業の今後にヒントとなる点がある。

すでにメディア報道でもご存知だろうが、三菱航空機が開発中の初の国産ジェット旅客機スペースジェット(旧MRJ)の第1号機納入は最近、6度目の延期となった。これに対しホンダエアクラフトのビジネスジェット機、ホンダジェットは米連邦航空局(FAA)から、エンジンを主翼部分に取り付けるという常識破りの開発力が技術面でも評価を得て安全性でも問題なし、と2015年12月に航空機の型式認証を受けてテクオフ(離陸)、今や主力の米航空機市場で乗り心地のよさなどでトップシェアを誇っている。

ホンダは開発生産の主戦場を米国とし現地化

日本の製造業の今後にヒントがある、というのは、ホンダエアクラフトの取り組み姿勢だ。私はチャンスがあって、ホンダエアクラフト社長兼CEOでホンダジェットの技術開発者でもある藤野道格さんに日本企業がグローバル市場競争に勝つポイントを聞いた際、1つはオンリーワンともいえる独創的な技術による新機種開発に腐心したこと、2つはビジネスジェットの主戦場が巨大な米国市場のため、開発も生産もすべて米国で行うことにし、しかも日本人だけで対応するのでなく30か国に及ぶさまざまな国々の技術者、スタッフを巻き込んでの現地化で対応したことだ、という。グローバル時代の経営発想だ。

これと対照的だったのが三菱航空機だ。親会社の三菱重工業が、本格的な国産ジェット旅客機開発という強い使命感に加え、自前主義にこだわって日本を拠点にした生産体制で臨み完成品を世界に問う、という極めて重工長大企業らしい発想で子会社支援を行う経営姿勢を貫いた。ただ、三菱航空機もその後、ホンダエアクラフトに参考にしたのか米国での現地生産に移し、開発陣に外国人技術者を加えた。

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