松田公太が藤田晋に聞く「社員と渋谷」にとことん向き合うその理由は何か
株式会社サイバーエージェント
代表取締役社長
藤田 晋
日本の若手上場企業を代表とすると言っても過言ではない、株式会社サイバーエージェント。そんなサイバーエージェント代表取締役藤田晋の起業家としてのスピリットはどこにあるのか?タリーズジャパン創業者であり政治家の松田公太が、サイバーエージェント独自の人事制度や企業スタンスとともに、その核心に迫る。
白石お二人は、いつ頃からお知り合いなんですか?
松田私の記憶が間違っていなければ、上場したのが2001年の時だったんですね。その直後くらいに藤田さんに会っているので。14、5年くらい前。たしか上場したのが2000年くらい…。
藤田2000年のことですかね。
松田ええ。
藤田2000年から、若手上場企業社長の会というのをホリエモンと、テイクアンドギブニーズの野尻さんと3人でやってたんですよ。
白石そうなんですか。
藤田それで、なんかこうね。3人で話しているのが息苦しくなってきて。松田さんに入ってもらおうと思ったんです。それで4人でやりはじめたんですよね。
松田そうですね。
白石そこからなんですね。
松田当時は、新しい市場が出来たばっかりだったんです。マザーズもそうですね。私が上場したのはナスダックジャパンというところだったんですけれども、若手の上場会社の経営者っていうのは、ほとんどいなかったんですね。それで、その4人が最も若い方々だった、非常に懐かしいですね。
白石お互いの第一印象っていうのは、どうだったんですか?
藤田爽やかなスポーツマンみたいな感じでしたね。
松田ありがとうございます。
藤田今もそうですけどね。やっぱり、野尻さんとホリエモンと行き詰ってた時から、松田さんに対しては、1人爽やかな人が入って良かったなっていう感じが強いですね。
白石新しい風が…。
藤田まさにそうですね。はい。
松田実は僕、その4人で食事をする直前にたまたま週刊誌を見ていたんですが。そこに藤田さんがドバーンと出てたんですね。見開きのページだったんですけれども、そこにプレジデントという最高級車から出てくる藤田さんの写真があって。当時26歳にして大成功して、ちょっといけ好かないなって思っちゃったんですよ。すごいなと。自分も上場したばかりだったんですけれども、その時はまだ車もなくて。それで、なんかカッコつけてるんじゃないかと。そういうふうに、はじめに思ってしまった。でも会ったらぜんぜん印象と違ったので、それこそ本当にすごく優しくて、爽やかな人でした。
白石そうなんですね。少しお話は変わりますけれども。創業以来、サイバーエージェントは渋谷に拠点を置かれていますよね。その理由というのは、どんな想いからなんですか?
藤田僕が青山学院出身で、渋谷に土地勘があったんですけど。やっぱり若者を集めるのに渋谷という土地がすごく便利というか。採用するのに、日本橋とか新橋よりも渋谷で働きたい人が多いんです。そう思っていたら渋谷にIT企業がどんどん集まり始めて。土地の集積効果ってあるんですよね。インターネットビジネスをやっていると渋谷に人がいっぱいいて有利というか、便利というか。インターネットビジネスは、どこでも良いかに思えるんですけれども、自然と東京ばかりに集中して、東京の中でも渋谷近辺に集中していますね。
松田サイバーエージェントが出来てからIT企業がどんどん集まって、物凄く様変わりしたなというふうに感じたんですがね。ただ残念なのが、ここで成功するとね、みんな成功したからって港区の六本木に移転しちゃったりとかするんですよね。大きくなったら違うぞと。だから、それを無くしたいですよね。やっぱり渋谷でどんどん成長していってもらいたいですよね。
藤田まあ、立てるビルが無いっていうのもあるんですけど。
松田そこなんですよね。藤田さんは、ビルが無いんですけれども、フロアをあちこち借りたりしてやってるじゃないですか。やっぱり、会社が大きくなるとさっきの車の話と一緒でね。でっかく見せたくなるので…。一か所に大きなものを欲しがるんですよ。
そうすると六本木ヒルズに3フロア借りてとか。やっぱりね、自分たちの成功の証みたいな。それがないですよね、全く。
藤田それも一緒で。運転手が居た頃、まさにプレジデントに乗っていた頃はまさにマークシティの21階に本社ビルを構えてたんです。でももう飽きちゃって。もういいやと思ってしまった。麓というか、下の雑居ビルに移動して海外からのお客様が来たときとかに、すごそうに見せたいとか。たかだかそんなもんですよね。それ以外は、どこでも一緒だわっていう風に思うようになる。
松田普通人間って、前に欲ばっかりが抜けていっちゃってね。追い求めちゃうところあるんだけど、それが無いのも、一つの藤田社長の成功の秘訣なのかなって感じちゃったりしてるんですね。
藤田成功っていうよりは、長続きする秘訣っていうところでは、モンスター化していくんですよ、みんな。やっぱりちょっと成功すると居なくなっちゃうというか。そういうふうにならないように、周りが見えなくならないように戒め続けております。
藤田社員とはよく食事行ったり、海に行ったりしているんですけれども。今週も2回くらい旅行にいってます。ただ3500人もいるので、1人1人会って話すのは難しい。なので僕も常日頃からブログを書いたり、SNSで発信したりしてそれを見てるし、社員もいつも書いているので。そう言った意味では自社のサービスも僕自身のことも、とても身近に感じてくれているのだと思います。
白石そういったコミュニケーションって必要ですよね。
松田すごい重要ですね。特にこれからベンチャー企業はそれをベースにしていくべきじゃないかなと思います。ただ、藤田社長の場合はみんな読みたくなるんですよね。藤田社長のブログを。内容が面白いんですよ。
藤田社員に会社の方針とかを説明したり、なぜ変えたのかを説明したりするのを敢えてオープンにしているので。やっぱり社員の親とかの方がよく見てますよね。
白石そうなんですか。
藤田はい。競合企業とか。松田さんもそういえばブログ書くの上手ですよね。
松田アメブロに書かせていただいています。
藤田よく見ますけど。
松田本当ですか。
藤田文章が上手です。
松田とんでもないです。ありがとうございます。
藤田清廉潔白な政治家感が伝わってくるんですけど。
松田そこで笑っちゃまずいです。
藤田いやいや。なんかブログが上手だなと思ってます。
松田ありがとうございます。
藤田基本的には、優秀な社員を採用して、その社員がモチベーション高く働くことで会社を伸ばしてきたんで。モチベーションを上げることばっかり考えていますね。
白石例えば、どういったことをやりますか?
藤田まず、大前提として会社が成長しているとか、十分な報酬を貰っているとかがないとどんな小細工しても無理なので、そこは重視します。会社の業績を伸ばして、ちゃんと給料を払うしかないんですけどね。あとは、それだけではなくて、様々ですね。
松田昔から会社を見ていて不思議なのは、人事制度。一度話を伺ってみたかった。物凄いドラスティックな人事制度を取るじゃないですか。普通ああいうことをやっちゃったらダメになるんじゃないかな、と正直思うんですよ。執行役員が1年で降ろされちゃうとか。僕がいた飲食業界でそれをやってた会社って、たぶんいくつか思いつくと思うんですけれどもダメになっていくんですよ。あまりにも難しすぎて。それと同じようなことをやられている。執行役員を毎年、3、4人くらいは変わるように取っている。
藤田そうですね。
松田それなのに、社員がちゃんと付いてくる。そこが非常に不思議で、今日それを聞きたかったんです。
藤田CA8っていう制度がありまして。役員が8人って決められて、そのうち2人が2年に1回入れ替わるんですよ。そういうことをオープンにやっているからだと思うんですよね。何故それをやったかというと、そのままにしておくと、経営陣が皆若い分、2・30年居座りそうに見えるんです。下の人に席を空けてあげようよと。そういうことを皆で決めてブログに書いて説明した。それで、皆の活力を引き出したいというのも正直な狙いですね。でも結局、1番活力が上がったのが落ちたくない役員たちだったんですけど。外れたくないというか。
松田Jリーグとかと一緒ですよね。入れ替え戦のところが1番盛り上がるという。今まで日本に無かったような考え方で人事制度を作られていっているので、何でも新しいことにチャレンジしますよね。社内の電話をスマートフォンに一気に乗り換えるっているのもそう。あれを見た時に大丈夫かなと。はたから見ていると心配になっちゃいました。
藤田はい。
松田今だからこそ、それが成功だったって皆思うかもしれないけれども、当時は本当にこれやっちゃって大丈夫なの?サイバーエージェント潰れちゃうんじゃないの?そういう想いを持ちますよね。
藤田やっぱり昨日と同じ今日が楽なのは皆、一緒だと思うんですけれども。それを変えていく勇気が無くなったら、もうネット業界の経営者としては終わりだと僕は思っているんですよ。逆に言うと、ネットについていけなかった経営者っていうのは、要はパソコン分からないって言ってやろうとしなかった人とか、携帯で物を買うなんて分からないっていう考えだったり。楽天の時もそうでしたけどね。まあガラケーからスマフォに変えないというのは、一般の人は良いと思いますけど、ネット業界の経営者でガラケーを使っている人を見ると終わったなって思いますよね。
松田ガラケー使ってます?
白石スマートフォンです。
藤田政治家は仕方ないんじゃないですか?
松田いえいえ、私もスマートフォンです。
藤田がんがん電話していかなきゃいけないから、電話機として使う人はやっぱりガラケーの方が便利ですよね。
藤田やっぱり才能を伸ばすっていうのは何よりも経験させることが大きいので。僕自身も24歳で会社を作って経験したから経営者としての能力が身に付いたと思ってます。やっぱり学校で勉強していってもそんなの見に付かないので。早々に抜擢し、子会社の社長をやらせたりだとかしています。
白石そうなんですか。
藤田はい。重要な幹部に登用したり。はやく抜擢させて、経験させて育てるというのを大事にしていますね。
白石どうしてその人を抜擢しようと思うのでしょうか?どういった点がポイントなんでしょうか?
藤田なんか本当に、気合が入っているとかですかね。
白石気合ですか?
藤田そうですね。ある程度、素養は見ますけど。あとは、まあやる気ですね。
松田さっきからお話を聞いていますとね。やっぱり、あの勝つ姿勢がすごいんですよ。感覚といいますか。昔からこれは有名な話ですけれども麻雀めちゃくちゃ強いじゃないですか。その辺から来ているのかなと思ったりするんですけど、どうですか?
藤田僕は感性だけで生きているわけでは無くて、感性とロジカルのキャッチボールというか、そういったところを大事にしているんです。麻雀もそうなんですけど、洞察力とかとロジカルに考えたりするキャッチボールの行き来の中で、やっていくというのが、身についていますね。
白石才能ですもんね。
松田才能と、たぶんですね。さっきもお話しましたけれども失敗と成功の繰り返しから出てくるんじゃないかなと思うんです、私持ち上げちゃいましたけど、藤田さんやっぱりね。失敗することも多いじゃないですか。ビジネスもね。いろんなところで。結婚もいっぱい失敗されてますけれども。
藤田はい、ご自分もじゃないでしょうか。
松田はい。それで、毎回同じ間違いを繰り返さないように、その学びから築き上げてですね。どんどんレベルアップしていくんですよ。それが、私は藤田社長の強みじゃないかなと思うんですよね。
藤田やっぱり経験からくるものは、感性に影響していますよね。
白石失敗を恐れずに…。チャレンジするということですよね。
藤田成長するというか、女性がいきいき働いているという意味でいうとサイバーエージェントは世の中的な意味で言うとかなり輝いている方だと思います。それでも幹部になる人が少ないんですよね。あんまり出世意欲がないのか、日本社会がどうしても男社会なのか理由はよく分からないんですけど。物凄く平等というか、男女の区別もないような働き方をしているのに、何故か上に上がってくるのは男が多いという。そこは、積極的に登用しようとしていますね。
白石働きやすい環境をつくるということで2014年は、新たな制度を作り上げたとお聞きしたんですけれども、詳しく教えてもらえますか?
藤田2014年度。マカロン制度ですか?
白石はい、そちらを説明いただいてもよろしいですか?
藤田政権がね。女性活用というか、女性の活躍を応援したいっていうのに合わせて我々も何か出来ることをしようという中でやったのが始まりですね。一つは、不妊治療を応援する制度。これは、友人で東尾理子さんが仰ってたんですけど、不妊治療っていうのは、本当に大変なんだそうです。それを支援するような姿勢を会社で作ってあげてって言われまして。話を伺って、本当にそうだなと思って不妊治療休暇が取れるようにしたんですよ。
白石そういった制度があるということは、お子さんを出産されて復帰される方が多いですよね。
藤田復帰率は、物凄く高いですね。自分も今、2歳の子供が居るんですけれども、子どもが出来てよく分かったのは、家にずっといて子供を見ていると行き詰るんです。会社に戻りたいっていうのもあるだろうなと。そういうところも考えながら、そういう制度を作っていますね。
白石なかなか日本の企業というのは戻ってきにくい。ママが戻ってくるシステムが出来てませんよね。
松田そうですね。ほとんどないですよね。ほとんどの企業がまだないですね。ですから、まさしく先駆者としてやっていただいて。特に、そのベンチャー企業がそれをやっているというのが良いですよね。
白石はい。ここまでいろいろなお話を聞かせていただきましたが松田さんいかがでしたか?
松田ここの事務所に私は何回も来させていただいたんですけれども、しっかりと会社の人選など、そういう話をしたのは始めてくらいですよね。普段は、もうちょっと楽しい話をしているのですがね。
藤田まあ政治の話を聞いている方が面白いですからね。
松田政治に関心があるので。物凄く詳しいんですよ。
藤田いやいや。ただ新聞を読んでいるくらいですよ。
松田先ほどもね。経験に合わせて女性の活用も考えたって言ってますから。たぶんそういう考え方を持たれている分、これから育っていくベンチャー企業が、同じような考えを持って行ったら、日本全体が流れが変わっていく。そんなキッカケになるんじゃないかなと思います。なので、今日こういう形でお話を聞けて良かったなと。
松田ありがとうございます。
白石ありがとうございます。
藤田ありがとうございます。
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