世界に福島事故の教訓発信を 脱「原発安全神話」宣言も必要


時代刺激人 Vol. 192

 日本中のみならず、世界の多くの国々を震撼させた東京電力福島第1原発事故から約1年5か月がたつ。だが、福島の事故現場は、いまだに原子炉周辺が強い放射線量で覆われていて、事故処理が遅々として進んでいない。

 日本中のみならず、世界の多くの国々を震撼させた東京電力福島第1原発事故から約1年5か月がたつ。だが、福島の事故現場は、いまだに原子炉周辺が強い放射線量で覆われていて、事故処理が遅々として進んでいない。このため、事故最悪レベルの「レベル7」を引き下げる状況にもない。そんな中で、もし昨年の3.11クラスの大地震が起きて、揺さぶりをかけられたら、使用済み核燃料プールなど不安定な状況にある事故現場は新たな重大災害を引き起こすリスクがある。

福島事故はまだ終わっていない、
3.11並み大地震が来たら悲惨な事態に

事故現場の現状を知っている人たちの誰もが口にこそ出さないが、最も恐れるのは、まさにこの点だ。腫(はれ)物に触るように厳重監視するいくつかの原子炉に、もし地震で亀裂が生じ、新たな放射能汚染を引き起こしたら、日本はまたまた問われる。私は、イソップ童話の「オオカミ少年」のような「大変だ、大変だ」といったお騒がせ警告を出すつもりはないが、東電福島第1原発がまだまだ予断を許さない状況にあることだけは間違いない。その意味でも、福島原発事故はまだ終わっていない

しかし国際社会では、中国を含めた新興国を中心にエネルギー需要の急増に対応するため、原発建設ラッシュの動きがある。これらの国は日本の福島原発事故をきっかけに事故リスクに敏感になっているのは確実で、日本から学ぶべき危機管理策の教訓は何か、安全対策のカギは何か、といったことを強く求めていると言っていい。
日本は、その点でも、福島原発事故対策にアクセルを踏んで「レベル7」引き下げを早く内外にアピールできるように手を打つと同時に、国内の既存原発の安全確保対策、とくにシビアアクシデント(過酷事故)対策に踏み込まねばならない。原発事故を引き起こした日本の責任は依然重い。政治が政局にエネルギーを費やしている時ではない。

日本の政府や国会はシビアアクシデント対策、
危機管理策の積極アピールを

そこで、今回のコラムでは、ここ数回のコラムで連続的に書いてきた原発事故問題の締めくくりとして、国会東電原発事故調査委員会(国会事故調、黒川清委員長)、それに政府の同じ事故調査・検証委員会(政府事故調、畑村洋太郎委員長)の最終報告書が出そろったのをきっかけに、今回の原発事故問題での教訓は何だったか、また、世界中から日本が問われていることは何かをテーマにしたい。

結論を先に申し上げよう。日本は原発事故を二度と引き起こさないための再発防止策、とくに世界中から信頼を得られるような国際基準に沿ったシビアアクシデント対策、厳しい安全対策、そして危機管理策を具体的に世界に向けて明示すること、同時に、その危機管理策のからみで「原発安全神話」信仰を捨てることをはっきりと明言し、あらゆる危機を想定して積極対応する先進モデル国家をめざすと宣言することだ。合わせて、「レベル7」脱却の目標年次を示すこと、福島原発事故に関するさまざまなデータを世界中で情報共有するため、積極的に情報開示することも表明する――ことが重要だ。

首相、衆参両院議長とも事故調報告書を受け取った後は
アクション不透明

ところが、原発事故の原因究明などを進めてきた国会事故調と政府事故調の最終報告書が最近、出たにもかかわらず、国会事故調報告を受け取った衆参両院議長、それに政府事故調査報告を受け取った野田首相それぞれが「真摯に受け止め原発事故の再発防止に充てたい」といった趣旨の答え方をしただけ。いずれも具体的にどう対応するかはっきりしない。私が述べた日本の内外に対してのメッセージ発信もまだできていない。

たまたま、7月23日午後、政府事故調の畑村委員長(当時)が野田首相に報告書を手渡した際、私はあとの記者会見参加のため現場にいたが、テレビカメラを含めてメディアが注視する中で、野田首相は通り一遍の「まずは精読させていただき、対応策を決めたい」とあいさつをして、足早に会場を去った。その時に、野田首相が分厚い報告書を小脇に抱えて、政府としても真剣に受け止める素振りを見せるならいざ知らず、秘書官に預けて、あわただしく出ていく始末。正直言って「政府は厳しく対応するつもりです。畑村さん、どこを最重点に考えるべきですか」など、パフォーマンスでもいいから、取り組み姿勢を示せればいいのにそれがない。政治混迷で心ここにあらずだ、と思った。

著者プロフィール

  • 牧野 義司
  • 1943年
  • 大阪府
  • 早稲田大学大学院

今はメディアオフィス「時代刺戟人」代表。毎日新聞20年、ロイター通信15年の経済記者経験をベースに「生涯現役の経済ジャーナリスト」を公言して現場取材に走り回る。先進モデル事例となる人物などをメディア媒体で取り上げ、閉そく状況の日本を変えることがジャーナリストの役割という立場。1968年早稲田大学大学院卒。

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