超高齢社会時代対応、日本が率先して先進モデルを

2023/9/10

若者・シニア交流で政治動かし方向付け、新社会システムも

次代を担う子供たちの数が極度に少なくなる人口の少子化に、急速な高齢化が加わり、深刻な事態に陥っているのが今の日本だ。65歳以上の人口比率は現時点で29.1%にまで膨れ上がり、世界で断トツの超高齢社会国になった。この現実を衰退の予兆とみるか、アクティブシニアをつくり出して活気ある成熟度の高い国にするか、まさに正念場だ。

カギを握る1つが、若者とシニアの間の世代間交流だと考える。超高齢社会という新たな社会状況のもとで、シニア世代が数の面で比重が高まるのは事実。しかし、社会を動かす中核世代は今後の日本を長く担う若者世代だ。彼らがシニア世代にどう対応するかがポイント。若者世代からすれば、シニア世代の年金など社会保障を支える側に回って負担を強いられ、シニア世代への不満が根強く、注文も多いはず。そこで、2つの世代が世代間交流によって本音で語り合い、そのパワーで政治や行政を動かし新たな方向付けを行ってほしい。

シニアは若者世代との交流で化学反応を起こせ

私は日ごろから、人生椅子取りゲームにたとえて、シニアは自分の座る椅子にしがみつかず、若い世代に椅子を譲れ、そして、譲った後は、シニア自身で独自にアクティブに活動する面白い椅子をつくって、それぞれ棲み分けすればいい、と言っている。大事なのは、シニアと若者が世代間交流によって互いに刺激し合い化学反応が起きるようにすることだ。

化学反応は、全く異なる性質の物質が相互作用で新たな特性を持つ物質を生み出すことだ。シニアと若者の両世代が交流を通じて、たとえば、シニアが若い世代の持つ斬新な発想やアイディアに刺激を受け、これまで発想もしなかったシニア新市場を誕生させる可能性がある。また、若い世代も、シニアの持つ経験ノウハウや技術をベンチャービジネス立ち上げに生かし、ユニコーン誕生につなげる「大化け」もあり得る。楽観視はできないが、これらが好循環すれば、超高齢社会時代対応の新交流システムが現実になるかもしれない。

人口減少が見えていたのに放置、政治の責任は大きい

2023/6/30

今や人手不足は深刻、少子化対策と同時に外国人積極活用も

ご存じだろうか。岸田首相は最近の記者会見で、次のように述べている。「若年人口が急減する2030年代に入るまでの今後6、7年が少子化トレンドを反転させるラストチャンス」、「若い世代の所得を増やすことを含め、すべての子育て世代に切れ目なく支援していく。これまでとは次元の異なる少子化対策が、今こそ必要だ」と。

この発言部分だけを切り取れば、岸田首相は少子化を含めた人口減少問題に、やっと取り組むのだな、との評価になる。しかし私の立ち位置は全く異なる。日本が人口減少に転じたのは2008年。それ以降、ずっと減少を続けているのに、大胆な政策対応がなかった。その点で、15年間も人口減少を放置してきた政治の責任は実に大きい、と言いたい。

ドライバー不足でモノが運べない「2024年問題」

率直に言おう。政治や政府が大胆な人口減少対策を放置した結果、今、生産年齢人口と呼ばれる15歳から64歳までの中核担い手の人たちの間で問題が深刻化している。人口減少対応の少子化対策も重要だが、足元の人手不足対策も待ったなしの状況なのだ。

運輸産業の現場がその1つだ。長距離ドライバーの時間外運転には意外にもルールがなく、過重労働職場だ。そこで政府は、2024年から新たに年間960時間の上限を設定し、働き方改革につなげる、という。しかし長距離運送の現場では、この新ルールに対応すると大幅減収になりかねない、と最近、職種転換する動きが表面化、このため、ドライバーの人手不足によって、モノが運べず大混乱をもたらす「2024年問題」が危惧されている。

劣化が著しい日本、新ソフトパワーで再興を

2023/3/16

高齢社会対応のシステム改革進め、新興国にモデル提供

オランダや韓国といった国々は、人口が少なく国内市場も小さいハンディを乗り越えグローバル世界で際立った存在感を見せている。日本は超高齢社会のさまざまな課題への対応で苦しんでおり、負けずに頑張れ、と前回コラムで申し上げた。私はこの際、日本がさすがソフトパワーの国だと言われるような社会システム改革を大胆に進め、高齢社会問題への対応と経済成長との板挟みに今後、苦しむ新興国に対しモデル提示することだ、と思う。

政治業シニアを中心に世代交代が進まないのは問題

とはいえ今の日本は課題山積だ。米メジャーリーグ野球で大活躍の大谷翔平選手はじめスポーツ分野でグローバル評価が高く、頼もしい若手が存在感を見せるのに、国内を見渡すと、高齢者層に見られる「経年劣化」現象が強まり、経済社会に停滞をもたらしている。
政治がその典型だ。政治業者かと思う高齢政治家が現場を仕切り、世代交代に待ったをかけている。日本の周辺で起きる地殻変動にも鈍感だ。若手政治家がこれに全く反発しないのも不思議だ。今や政治に次代を見据える志も力もなく、三流レベルと言わざるを得ない。

経済も二流、三流の領域に入ってきた。バブル崩壊から30年間もたつが、その間のマクロ経済政策はちぐはぐで、年率1%前後の低成長を続けたままだ。政策検証が行われず、状況に流されているだけで、メリハリがない。また日本の科学技術水準は高いはずなのに、次代を画する凄いイノベーションが見えない。経済社会に構造問題がある、としか思えない。