日本企業がアジア成長センターで見向きもされなくなる?


時代刺激人 Vol. 326

牧野 義司まきの よしじ

経済ジャーナリスト
1943年大阪府生まれ。
今はメディアオフィス「時代刺戟人」代表。毎日新聞20年、ロイター通信15年の経済記者経験をベースに「生涯現役の経済ジャーナリスト」を公言して現場取材に走り回る。先進モデル事例となる人物などをメディア媒体で取り上げ、閉そく状況の日本を変えることがジャーナリストの役割という立場。1968年早稲田大学大学院卒。
2024/2/21

スピード時代に経営判断を先延ばし、話にならないと強い反発

かつてはアジア諸国から技術力、事業力で高評価を得て、企業経営面でも尊敬の対象だった日本企業。なぜか最近、アジア成長センターの企業の間で「スピードの時代に経営判断が遅く、話にならない」と、反発が強まっている。日本企業経営者がリスクをとらず、経営判断を先延ばしすることが多い点を問題視している、というのだ。

「全権持つCEOが『最終判断は帰国後の東京会議で』に唖然」

私が以前、中国深圳で地元のベンチャー企業経営者を取材した際、日本企業経営への不満を聞かされた事例を思い出す。CEO(最高経営責任者)の肩書を持つ日本企業経営者が、ビジネスで全面合意した中国ベンチャー企業経営者に対し「東京に戻り取締役による経営会議で決めるので、待ってほしい」と述べたため、中国経営者は「発言に唖然とした。企業代表として全権を持つCEOがなぜ、東京の本社に戻って最終決定の手続きが必要なのか。アジアは今、スピード経営が主流だ。日本はこれではビジネスで敗北する」と怒った、という。

タイ財閥サハ・グループのブンヤシット・チョクワタナー会長も今年1月5日付けの日経新聞インタビューで「日本企業は事業運営で従来のステップ・バイ・ステップを踏襲して経営判断が遅い。スピードが速い今の世界には合わない」と批判している。サハ・グループは消費財を中心に日系企業80社と合弁ビジネス関係にあるだけに、発言に説得力がある。

日本への「持ち帰り文化」は損失招くと日タイ橋渡し企業

アジアの現場の声も紹介しておこう。朝日新聞オピニオン欄の最近の「日本と東南アジアの50年」特集で、日タイ橋渡し企業CEOのガンタトーン・ワンナワスさんはタイ国内の日系企業の「持ち帰り文化」が問題だ、と指摘した。最初は、持ち帰り文化が何をさすのか、わかりにくかったが、記事全体を読んで、その意味がわかった。深圳の中国ベンチャー企業経営者が問題視したことと全く同じなのだ。

その日系企業の場合、タイの合弁企業や系列の部品生産企業に対しコスト削減に関してうるさく言うのに、なぜか自身の経営判断になると対応が遅い。タイ日系企業にとっては現地判断こそが重要なのに、親会社を気遣ってか、日本に持ち帰って本社で検討する「持ち帰り文化」現象に陥っている。こんな経営手法を続けていると、グローバル時代のスピード経営に対応できず、日本企業は機会損失していく、というのだ。確かに重要な問題指摘だ。

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