「コロナ」後の日本、遅きに失してもデジタル化を


時代刺激人 Vol. 313

牧野 義司まきの よしじ

経済ジャーナリスト
1943年大阪府生まれ。
今はメディアオフィス「時代刺戟人」代表。毎日新聞20年、ロイター通信15年の経済記者経験をベースに「生涯現役の経済ジャーナリスト」を公言して現場取材に走り回る。先進モデル事例となる人物などをメディア媒体で取り上げ、閉そく状況の日本を変えることがジャーナリストの役割という立場。1968年早稲田大学大学院卒。
2020/07/03

「コロナ」後の日本、遅きに失してもデジタル化を

新型コロナウイルス感染リスクが依然収まらず不安定な状況が続き、鬱屈(うっくつ)とした気分が続く中で最近、日本を思わず元気にする話が飛び込んできた。
理化学研究所の新型スーパーコンピューター「富岳」が計算速度で世界一の座を9年ぶりに取り戻しただけでなく、AI(人工知能)開発向け計算性能など3つの分野でも米国や中国を寄せ付けない力量を発揮、世界初の4冠になった、という。実に素晴らしい。快挙だ。

スパコン世界一と対照的な自治体オンライン問題

ところが、このスパコンとは対照的な目を覆う日本の現実が、コロナ対応に苦しむ現場で進行していた。コロナ危機対策として政府が実施した国民への一律10万円の「特別定額給付金」に関して、その業務を担う多くの自治体でオンライン対応が機能しないのだ。やむなく自治体は郵送で対応、それでも給付金を手にしてない国民の数がかなりにのぼる、という。政府緊急事態宣言が5月25日に解除されて以降もこの状況だから深刻だ。
専門家の話では、オンライン申請に活用する計画予定のマイナンバーカードの専用ポータルサイト「マイナポータル」への接続手続きが自治体で十分にできていなかったことに加え、肝心のマイナンバーの普及率が日本全体で14%程度にとどまっていたことも事態の悪化や混乱に拍車をかけた、という。何ともお粗末な話だ。

デジタル化が進む米国では、同じコロナ危機の緊急経済対策として、所得制限を設けて成人の大人に最大1200ドル(円換算12万円)が給付されたが、大統領令署名から2週間ほどで、内国歳入庁から確定申告する納税者の銀行口座に振り込まれた、という。低所得層には小切手送付の道もとられたそうだが、日本に比べ格段のスピード差だ。

「世界最先端のIT国家めざす」はどこへ行った?

霞が関の行政官庁も似た問題を抱えている。政府は20年前の2000年に高度情報通信ネットワーク社会形成基本法をつくり、IT戦略本部(首相が本部長)を設置した。その後「世界最先端IT国家創造宣言」も行った。しかしシンクタンクの日本総研が行政手続きデジタル化の実態を調べたところ、2019年時点で政府全体5万5765件の行政手続きのうちオンライン対応が出来ていたのはわずか7.5%の4164件だった、という。

聞けば、霞が関の省庁間で互いの「省益」を優先する古い体質が続き、この20年間、デジタル化、オンライン化のヨコ連携が進まなかったため、「デジタルガバメント」は絵に描いた餅に終わってしまっている、という。駐日エストニア大使館関係者から聞いた話ではエストニアにある先行モデル事例を見ようと日本からの官民視察団が多いそうだ。だが、学習しても生かそうという考えが日本にはない。まさに「デジタル後進国日本」だ。

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