今や被災地で復興よりも新興が大事 津波対策で海辺に人工の生活島を


時代刺激人 Vol. 178

牧野 義司まきの よしじ

経済ジャーナリスト
1943年大阪府生まれ。
今はメディアオフィス「時代刺戟人」代表。毎日新聞20年、ロイター通信15年の経済記者経験をベースに「生涯現役の経済ジャーナリスト」を公言して現場取材に走り回る。先進モデル事例となる人物などをメディア媒体で取り上げ、閉そく状況の日本を変えることがジャーナリストの役割という立場。1968年早稲田大学大学院卒。

 「復興よりも新興を」――最近、これはいい、さすが言葉を大事にするノンフィクション作家だなと思ったキーワードだ。「メタルカラーの時代」のタイトルで鉄鋼などのモノづくりの現場の人たちの生き方を描いた山根一真さんが、新聞で被災地支援問題に関して、この言葉を使っておられたのが目に入った。

高台移転の困難な平野部の被災者、漁業者を対象に
東京ドーム規模の人工島

何となくイメージを持っていただけたと思う。迫さんによると、スカイビレッジ構想は第1に、高台移転の困難な平野部を主な対象にする、第2が農業の耕作地や漁港に近い住み慣れた地元に住み続けたいというニーズに応える、第3に、新規の土地の高台に移転するのと違って、既存の道路などさまざまなインフラを活用するため、トータルの建設コストが相対的に安上がりにすむ、という。

さらに、迫さんによると、第4に、再び地震や津波の大災害に遭遇しても、専門用語でいうオフグリッド(自律型)集落として機能する、第5に指定避難施設がそのまま自宅にもなる、というこれまでにないモデルになる、そして最後は、海辺にも近い立地のため、海と共生する住み方で、高い場所からの海を見渡すオーシャンビューを作りだし、地域のシンボル的な存在になる、という。

迫さん「スカイビレッジを東日本被災地のシンボルにしたい」
という夢

迫さんは「菅首相(当時)の高台移転の構想を聞いていて、一般論としては、二度と大津波による苦しい被災者生活を送りたくない、安全な居住地域の確保を、という点では高台への住宅地移転は正しい政策判断だと思ったが、待てよ、ことはそんなに簡単なことではない、と思ったのです」という。
要は、高台と言ってもすぐに移住すべき高台用地が見つかるかどうか、という問題がある。とくに海岸に面しながらも平野部が限りなく広がる地域で、肝心の高台がかなり奥まった場所にある場合には、これまで住んでいた地域からの移動距離が長い、とくに漁港を拠点に出漁することが仕事上、重要な漁業者の人たちにとっては一大事となる。こういった問題を解決するためには、これまでの海岸べりの平野部にスカイビレッジを構築した方がいい、というわけだ。そして、被災地のシンボルにしたいという。

公表の公示地価で、宮城県石巻市の高台地区ニーズ高く
全国トップの上昇率

そういえば、3月22日に国土交通省が公表した2012年1月時点での被災地の公示地価で驚くべき現実が明らかになった。宮城、福島、岩手の東日本3県の被災地では高台の地価が上昇する一方、沿岸部の地価が大幅に下落するという厳しい現実が浮き彫りになった。
とくに、宮城県石巻市の須江字しらさぎ台という高台地区の地価が何と前年比60.7%の上昇率で、全国でトップの値上がり幅になったという。今回の大津波で、漁港を中心に、壊滅的な打撃を受けた石巻市内の中心部から5キロほどの高台にある地域だが、1990年代半ばに土地や住宅の分譲が行われたころは、閑散薄商いの状況だったのが、昨年の3.11以降、地元被災者の入居希望、土地購入希望が殺到し、一気に跳ね上がったという。

毎日新聞調査で高台・内陸集団移転需要あるが、
元の土地に住みたいニーズも

他方で、こんな新聞記事も目にした。毎日新聞が今年2月26日付の朝刊で報じた記事で、見出しでいうと「高台・内陸移転250地区2万2000戸、被災の宮城など3県の沿岸市町村が住民の集団移転を想定、ただし住民合意は3割」となっている。
この記事のポイントは、大震災で失われた住宅、街並みを早く再建しようという自治体、そして住民は、集団移転を含めてさまざまな計画を協議しているが、集団移転先をめぐって、「住み慣れた元の土地に住宅を建てたい」「津波から避難しやすい国道など便利な地域に移住したい」といった話から始まって、「住民の意見が勝手バラバラで、収拾がつかない。市や町の当局が責任をもって調整してくれ」といった状況だ、と報じている。

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