高精度な結晶加工技術で世界トップを誇る宇宙開発からも頼られる唯一無二なスペシャリスト
株式会社光学技研
代表取締役
岡田 幸勝
1977年に研究機関の試作加工業として創業し、1978年株式会社光学技研を設立。結晶加工という特殊な技術を生かし、大学の研究者や大手メーカーや宇宙・天文関係の研究機関など、世界規模で顧客を持つ。また、これまで数多くの賞を受賞し、その技術の高さを評価されている。
量産を目指すのではなく、特定のものの精度を徹底的に上げ、高度化し、ナノレベルの精度を手作業で実現する同社の技術力が世界的に高い評価を得ている一方で、受注増により生産が追いつかないという。
「半導体関連や宇宙・天文など、研究開発用の試作加工も当初から変わらず今でも続けています。数年前までは各展示会などでも出展し、営業も行ってきましたが、ここ数年は半導体関連の受注が増加し、キャパをオーバーしているような状況です。実際に宇宙開発、天文台などに我々の技術が採用されていますし、ここ数年で海外からの問い合わせも増えました。現在、厚木市長谷にある弊社事業所に設備投資し、人材も増やし生産体制を再構築しているところです。受注増の理由はおそらく『5G』の本格化や『IoT』による生活様式の変化など、自動化やDXが起こり、様々なデジタル製品の検査機器に対するニーズが高まっていることによるものと思われます。ただ、弊社は創業以来、我々の技術を必要としてくれる多くの研究者や長年のお客様との関係もあり、むしろそちらを積極的に取り組んでいきたいのですが、やむを得ず、納品まで半年から8ヶ月程度お待ちいただいている状況です」
半導体の高精度な検査装置は希少で、同社の加工技術がなければ完成しない。価格も一台数億から、高いもので30億ほどになるという。手作業の加工技術を要し、納品した装置のメンテナンスとして結晶の交換が必要となり、またその分の生産が増加するのだという。
「半導体の検査装置で高精度なものの多くが弊社の結晶加工技術が使われていると言って良いと思います。半導体デバイスを構成する電子回路が微細化され、現在、最も短い光源の波長が193nmですが、今後は13.57nmのEUVリソグラフィが用いられ、検査装置の紫外線はどんどん短くなっているので、我々の技術が生かせるわけです。プラスチックやガラスでは紫外線を全く通さないので、結晶を使うことになります。その結晶の中でもCLBO素子は大阪大学佐々木孝友教授、森勇介教授等が開発した紫外光発生に適した波長変換素子ですが、我々は25年以上お付き合いがあり、結晶開発当時から加工を行ってきました。CLBO素子は湿度に対する耐性が弱いため、低湿度環境における加工を行う必要があるのですが、その加工技術は非常に難しく、製品レベルに加工できる技術は世界で弊社だけです。産業用では世界で100%我々のものを使っていると思います」
他にも世界的にも同社しかやっていないような偏光プリズム、位相板などの技術もまた世界的に評価され、今は海外も含めて受注しており、今年も増加傾向にあり、医療業界でも同社の技術が採用され始めている状況だ。
「4~5年前からは医療分野にも広げていこうと考え、弊社の技術が医療機器に採用されました。研究開発に2~3年かかり、2020年4月頃にようやく製品化されて発表するに至りました。その後、非常に反響が大きく、増産の要望があったのですが、こちらも増産体制がなかなかとれず、現状では弊社ができる生産数でしか対応できない状況です」
コロナの影響は今のところ、幸いごく軽微で、受注は増えており、海外からの問い合わせも止まないという。
「弊社では会議がウェブ上で行うようになった程度で、受注にはそれほど影響していません。今でもヨーロッパのメーカーなどは我々のHPを見て問い合わせてきます。海外のメーカーが自分たちの望む高精度な『グラントムソンプリズム』や『位相板』などを調べようとすれば我々が検索にヒットするのだと思います。要するに我々の技術を必要とする人に見つけていただいているような状況です。実際はそのぐらいの規模がちょうどいい。なぜなら、現実問題としてそれ以上の受注に対応できないのです。」
仮に、一抹の不安があるとすれば、今後このまま納期に時間がかかるようならば、メーカー側で仕様が変わるかもしれないという。それを防ぐために、高精度のものを提供しつつも、納期も早くお客様の要望に応えられるように示していくことだという。
「ドイツの大きな光学メーカーからも、非常に難しい波長板の製造の依頼を受けています。そうなると、もっと高精度にしていき、もっと加工スピードを上げなければなりません。まずはそこをしっかりとやり、この先、医療にも向けていければいいと考えています。ただ、むやみに規模を大きくしたいとは考えていません。売上だけを目指していきたいわけではなく、我々の技術が生かせるところに積極的に展開していきたいと考えています」
世間ではデフレ不況とも言われるが、「5G」や「デジタル化」が加速する社会において、これまで培ってきた精度の高い技術を必要とする同社への期待は高まるばかりだ。「ものづくりの楽しさ、やりがいを感じられる仕事です。古くから連綿と続くベーシックな研磨技術を駆使し、最新のテクノロジーで評価し、高精度なものを作り上げていきます。職人的なセンスを要するので、その人の向き不向きはあります。同じ物を量産する単純作業ではないため、精緻に取り組める人でないとできません。我々の装置は量産には向いていませんが、その道を頑なに進んでいこうと取り組んでいます」と岡田社長。このように、高度な技術を身につけ、必要としてくれる人のところへ届けたいという思いと使命感に駆られ、利益至上主義に走らず、高品質を保ちながら社会貢献ができる環境が素晴らしい。結晶加工業に就職・転職を考えている方や世界最高水準の技術を身につけたいと思う方はぜひお問い合わせいただきたいと思う。
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