

こうした中で、米国と中国の両政府は今年5月12日、スイスでの貿易協議で、互いに設定した追加関税の見直しで歩み寄りを見せた。米中が115%幅の大幅引き下げを行う、というもの。この結果、米国の対中追加関税が145%から30%に、また中国の対米追加関税が125%から10%への引き下げとなった。しかし、依然として高率関税のため、波乱含みの状況が続く。世界経済全体に与える影響に関しては、まだ先行きが不透明だ。
とくに、グローバル金融市場関係者の間では、トランプ大統領が、マクロ経済政策運営にとって重要かつ合理的な政策判断や論理を示さず、それらを二の次にして、DEALで相手を押し切り、政治的成果を誇示するやり方を続けているため、反発が続いている。早い話が、DEALで相手国を押し切り、それを米国益よりも自身の利益につなげてしまうグローバル政治リーダーとしてのロジックのなさに対する反発だ。
それだけでない。トランプ大統領は、事実確認もせずに平然とうそを述べ、DEALにつなげる発想が日本でも反発を招いた。トランプ大統領が、対日貿易赤字が減らないことに苛立ちを深め、米国製の自動車が日本で売れないのは非関税障壁があるためだ、と主張、日本でボウリング大の球を6メートルの高さからクルマのボンネットに落とし、少しでもへこんだら不合格にする保守的な技術基準に問題がある、と指摘した点が最たるものだ。
外務省元事務次官の藪中三十二氏は、今年4月27日のNHKテレビ日曜討論番組で「トランプ外交は、稚拙だ」と手厳しく批判した。藪中氏によれば、トランプ大統領は、本来ならば、外交交渉に国際ルールがあり、それを踏まえて発言すべきなのに、自分がDEALによって和平を実現したのだ、といった形で自己主張する点が何とも稚拙だ、という。
現に、米国CNBCの最近の世論調査でも、トランプ大統領に対する米国民の評価は厳しかった。経済対策に関しては、不支持率が、支持率を15ポイント以上も上回った。
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