

そればかりでない。トランプ大統領は経済政策に関して意外と無知でないか、と感じることがある。それは、中国向け高率関税に関して、敵対する中国抑え込みを狙ったものだと考えているようだが、実は高関税は、中国品を輸入する米国の企業が負担する。米国企業は耐え切れず、その関税分を末端の販売価格に転嫁する可能性が高い。となると、その分は米国消費者にしわ寄せが行き、消費者物価高、インフレリスクとなる。消費者の買い控えはそのまま個人消費停滞を通じてマクロ経済にもはね返り、米国当局の首を絞めかねないのだ。
グローバル金融市場関係者の間では、トランプ大統領が、マクロ経済政策運営にとって重要かつ合理的な政策判断や論理を示さず、それらを二の次にして、DEALで相手を押し切ったとして、政治的成果を誇示するやり方を続けるため、反発が強い。早い話が、DEALで相手国を押し切り、それを米国益よりも自身の利益につなげてしまうグローバル政治リーダーとしてのロジックのなさに対する反発だ。
それだけでない。トランプ大統領は、事実確認もせずに平然とうそを述べ、DEALにつなげる発想が日本でも反発を招いた。トランプ大統領が、対日貿易赤字が減らないことに苛立ちを深め、米国製の自動車が日本で売れないのは、非関税障壁があるためだ、と主張、日本でボウリング大の球を6メートルの高さからクルマのボンネットに落とし、少しでもへこんだら不合格にする保守的な技術基準に問題がある、と指摘した点が最たるものだ。
外務省元事務次官の藪中三十二氏は、今年4月27日のNHKテレビ日曜討論番組で「トランプ外交は、稚拙だ」と手厳しく批判した。藪中氏によれば、トランプ大統領は、本来ならば、外交交渉に国際ルールがあり、それを踏まえて発言すべきなのに、自分がDEALによって和平を実現したのだ、といった形で自己主張する点が何とも稚拙だ、という。
現に、米国CNBCの世論調査で、トランプ大統領に対する米国民の評価は厳しかった。経済対策に関して、不支持率が、支持率を15ポイント以上も上回った。2026年11月の米連邦議会の中間選挙で、トランプ政権が厳しい審判を受ける可能性は十分にある。
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