「患者さんに新しい治療法を」の思いとメスを置く勇気、免疫細胞治療へ挑む
医療法人社団 滉志会 瀬田クリニックグループ
臨床研究・治験センター長
神垣 隆
日本人の二人に一人ががんになり、三人に一人ががんで亡くなると言われている。医学の進歩はがんとの闘いとともにあった。日々、進化するがん治療の現場にあって、注目を集めているのが免疫細胞治療。この免疫細胞治療を武器にがんに挑む医師がいる。かつては外科医だった。しかし、メスを置いた。がんを撲滅するために。ドクターの名は医療法人社団、滉志会、瀬田クリニックグループ、臨床研究・治験センター長の神垣隆。がん治療のイノベーションに挑戦する神垣隆と免疫細胞治療、その全容に迫る。
神垣そうですね。オーダーメイド医療というのは最近、お薬などでも非常に患者さんのがんの状況、がんの性格に合ったお薬を選択するというのが考えられているんですね。たとえば、今までの抗がん剤であれば、どの患者さんにも使われてきたわけですけれども、がんを狙い撃ちするような薬が最近、開発されています。分子標的治療薬というのがそれにあたるわけですけれども。
実際に、その標的があるがんの患者さんには使えますけれども、そういった標的がないがんの患者さんには使えないわけですね。そういったがんの性格によって、治療法も変えていく。そういったことが重要視されています。
神垣たとえば、ワクチンの治療であれば、がんの目印を狙い撃ちするわけですけれども、それぞれのがんによって、目印の状況というのは違っているわけですね。目印がたくさん出ているがんもあれば目印が少ないがんもある。それから、目印の種類も人それぞれによって異なってきています。
ということは、やはり、そういった目印の状況をきちんと調べないと、いわゆる、免疫細胞治療もどの部分を狙い撃ちするかが分からないわけですね。標的の無い患者さんにいくら合わないワクチンの治療をしても、やはり、効果が出てこないわけですね。それから、免疫細胞治療のもう一つ大事なところはがんの患者さんによって、免疫の状況というのは全然違ってくるわけですね。
免疫が非常に正常に動いている患者さんであれば、免疫の治療をやっていけばどんどん効果が出てくると思います。ところが、免疫の状況が非常に落ちた状況であれば、まず、戻してあげなければいけない。あるいは、それを改善していかないと、やはり、免疫の治療はうまく効かない場合があります。そういった形の中で、治療を組み立てないといけないので、そこはオーダーメイド治療につながっていくと思います。
宮川私ががんを患ったとしまして、初診で伺うと、オーダーメイド(医療)をお願いするわけですけれども、どういう形で流れていくわけですか?
神垣まず、たとえば、宮川さんの血液を頂いて、免疫の状況がどうなっているのかというのを調べていきます。それから、たとえば、宮川さんが手術をされたり、あるいは手術をしてなくても、内視鏡でがん組織を一部取れれば、その組織をかかりつけの病院のほうからお借りしてきて、そこのがんの情報を調べていきます。がんの患者さんの免疫の状況、それから腫瘍の性格、この二つを診ていきながら、実際にどの免疫細胞治療が適しているかを考えていくわけですね。
宮川そうしますと、瀬田クリニックで初めてがんが発見される方もいらっしゃいますけれども、やはり、転院して来られる方も多いわけですか?
神垣そうですね。ですから、他の病院で治療を受けられていて、そういった中で、免疫細胞治療も、たとえば、標準治療と一緒に受けたい、あるいは標準治療で治療法がないため受けたい、あるいは再発予防に、非常に私の場合は再発するリスクが高いので、免疫細胞治療も受けたい、そういった患者さんたちが来られるわけです。
実際にクリニックでの治療はどのように行っているのだろうか。
患者一人の診察時間は30分から1時間。状態を把握することと、治療内容や方針を説明するために、時間は惜しまない。
宮川神垣先生がいつもいらっしゃるのがこちらのクリニックです。そして、細胞を培養する施設がすぐ隣にあるということですので、こちらですかね。あっ、よろしくお願いいたします。
関係者よろしくお願いいたします。どうぞ、お入りください。
ここはCPC(セル・プロセッシング・センター)。治療を受ける患者の免疫細胞を培養するための専用施設だ。厳重な管理体制を整える細胞加工施設への入室を特別に許可された。患者から採血されたものはタスボックスと呼ばれるスペースを経由して、施設内へ。そして、まず、遠心分離器にかけ、血液を分離する。白く、もやっとした部分にがん治療で使われるリンパ球が含まれている。免疫細胞の数、状態を確認し、リンパ球を培養液へ。この中で免疫細胞は活性化し、爆発的に数を増やす。37度に保たれたインキュベーターと呼ばれる保存機の中でおよそ2週間。
右が千倍にも増殖培養された患者自身の免疫細胞。これが希望の光を照らす治療の要となる。瀬田クリニックグループでは常に最新、かつ安全性の高い環境で高品質な細胞加工を行っている。
宮川先生、この免疫細胞治療なのですけれども、数字的に言うと、実績はどれくらいと言えるのですか?
神垣我々のところでは非常にいろいろな状況の患者さんがいらっしゃるのですが、全体の中で言うと、2パーセント弱ぐらいの患者さんが、腫瘍がなくなる状況ができています。それから、12パーセントぐらいの患者さんたちが、腫瘍が半分以下の大きさになります。半年以上、長期でがんの大きさが変わらず、がんとおつきあいできる患者さんが12パーセントぐらいいらっしゃいます。それから、治療している間はがんと長くおつきあいできて、がんもほとんど大きくならないという患者さんが28パーセントぐらいいらっしゃるんですね。ただ、非常に進行した患者さんそれから、標準的な治療法がいよいよなくなって、厳しい状況で来られた患者さんたちはやはり効果が少し悪くなる可能性があると思います。やはり、早く、治療を受けられた患者さんは成績的にはよくて、縮小する率、長生きする率は、早く受けられたほうがいい傾向があります。
宮川一概に数字では表せないですね。個々の進行状況ですからね。
神垣そうですね。
白石ということで、今回、神垣先生のもとで、実際に免疫細胞治療を受けている患者さんにお話を伺うことができましたので、こちらをご覧ください。
横浜市で会計事務所を営む、中里トモ子さん。2005年に、ステージ4の卵巣がん摘出手術を受けた。しかし、その後、再発。そして、転移。2011年に転移巣を切除。同じ年の4月から、瀬田クリニックにて、免疫細胞治療を受けている。
患者抗がん剤を2回使ったんですね。ところが、副作用が起きまして、ものすごくつらい思いをしたの。口内炎はできるし、高熱は出るし、食欲は全然、受け付けられないほど、なかに口内炎ができていますし、こんなにひどくつらいとは自分では分からなかったんですよ。でも、免疫(細胞)治療というのは何にも苦痛がないの。何にもなくて、入院もしなくていいんですよ。20、30分の治療で終わっちゃうの。それでいて、すぐ帰ってきて、ここで仕事ができる。治療法はいまだに免疫細胞治療って皆さん、あまりピンッとこないと思うんです。私は実際に経験して分かるのですが。でも、私は患者の一人として、「私を見てください。私が証明です」って言いたいくらい。
現在も中里さんの容体は安定。免疫細胞治療でがんと向き合っている。周囲が驚くほど元気だ。
宮川今、中里さんに取材にお応えいただいたのですが、先生は初めて会ったときのことは覚えていらっしゃいますか?
神垣はい。やはり、非常に病気が最初、進行した状況でいらっしゃったので、そういった意味では非常に厳しい状況なのではないかと感じました。そういった中で、非常に良い形の結果が出てきて、現在、再発もなく、過ごしていただいているので。
宮川そうすると、今後はどういうことを期待されていますか?
神垣そうですね。今現在、治療をずっと受けられていますので、そういった中で、少しゆっくりした感覚で治療を続けていただきながら、ある程度、大丈夫だというときには少しお休みの時期も入れられるのではないかと思っています。
白石素朴な疑問なのですが、患者さんによっては違うと思うのですが、治療期間とか、治療費というのは。
神垣先ほど言った、活性化したリンパ球を戻すような治療で、大体100万円から150万円くらいはかかってくるのではないかと思います。ワクチンに関してはご自分の腫瘍の組織を使って、ご自分の腫瘍の情報でワクチンを作る特殊な方法があります。そういった方法を使えば、大体150万円から200万円ぐらいの間でできるのかなと思います。
白石でも、自分に合った希望の治療方法だからこそ、少し高額ではありますけれども、満足いく結果といえますかね。
神垣そうですね。患者さんの経済状況も、率直に言っていただければ、その中でできるだけ最大限、効果を出せる治療というのは考えていくように努力しています。ですから、我々はいろいろな治療法の提示はしますけれども、そこに関しては自費診療の部分でご提供している部分がありますので、そこは遠慮せずに言っていただければいいかなと思っています。
白石大体、治療期間というのはどのぐらいなのでしょうか? 人にもよりますけれども。
神垣大体、3カ月から半年ぐらいかけて、皆さん、一組の治療を組んでいくような形ですね。現状が維持できている患者さんに関してはどうやって、その現状をさらに伸ばしていけるか、そういった中で少し感覚も空けていきながら、経済的な負担をできるだけ抑えた形で治療が提供できるようには努力しています。
白石免疫細胞治療はどちらで受けられることができるのですか?
神垣我々、瀬田クリニックグループは四つの拠点の医療機関を持っていまして、東京、新横浜、大阪、福岡ですね。それから、それ以外に60の連携医療機関を持っていまして、そういった中で、全国でそういった治療を受けられるようになっています。
宮川でも、先生、今までいろいろな治療法をご覧になっていると思いますが、それが標準的な治療方法として認められるにはどれぐらいかかっているのですか?
神垣今すぐというわけにはいかないと思いますが、早ければ10年、もし可能であれば、本当は5年ぐらいを一つの目安にはしていきたいと思っています。江川先生が、十数年前に、「すべては患者さんのために」という思いで、瀬田クリニックを開設された、そういった経緯の中で私も研究したい、そういった成果を患者さんにぜひ、ご提供できるようなそういった免疫細胞治療を作り上げていきたいというのが大きな夢ですね。
白石そうですね。
宮川今後もどんどん進歩するように、そして、私たちもまわりの法整備などで意識を変えてやっていかないといけないと思いましたね。今日はどうもありがとうございました。
白石ありがとうございました。
神垣ありがとうございました。
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