正夢になった「近大マグロ」(vol.28)


BUSINESS FLASH

「魚が獲れないのなら、魚をつくればいい」。
近畿大学を創設した世耕弘一初代総長が第二次大戦後、領海制限に悩む漁師にいった言葉だ。

その精神を受け継ぐ同大水産研究所の大島実験場(和歌山県串本町)に2007年、人工孵化(ふか)マグロの第3世代が誕生。7年前、世界で始めて誕生した完全養殖マグロ「近大マグロ」。
「日本でマグロが食べられなくなる」というリスクが指摘される中、この“第3世代の誕生”は日本人にとって注目すべき朗報であった。

現在、日本のマグロ漁が危機に陥っている。
2006年10月に「みなみまぐろ保存委員会(CCSBT)」が2007年から5年間、インドマグロの漁獲量をこれまでの半分に制限したのに続き、その翌月には「大西洋まぐろ類保存国際委員会(ICCAT)」が、大西洋の本マグロ漁獲量を昨年までに2割減らすと発表。

つまり、日本はこれまでのように遠洋漁業でマグロが獲れず、輸入にも頼れないという時代に突入したのだ。

和歌山港で水揚げされた完全養殖の「近大マグロ」。
将来、トロがサンマのような安値で食べられる日がくるかもしれない=和歌山市 世耕氏が近大水産研究所(設立当初は臨海研究所)を設立した1948(昭和23)年も、戦後の食糧難の中、敗戦の影響で漁業の領海を制限され、漁師たちが困り果てていた。

世耕➖➖いつか安い魚を食べさせてやる。

世耕氏は養殖の気鋭をスカウトして研究を開始、やがて和歌山県の漁港で「小割式」と呼ばれる養殖法が誕生した。
この養殖法は日本の養殖ハマチの生産量を数十万トンまで押し上げただけでなく、今や世界のスタンダードになっている。

そして2002年、その近大水産研究所から「近大マグロ」が誕生した。
「近大マグロ」の生態サイクルが確立され、遠洋漁業や輸入に頼らなくても、日本でマグロを食べ続けることが可能になる。

また、バイオテクノロジーを駆使した品種改良への取り組みも進められている。
将来、マグロのトロがサンマのような安値で食べられる日がくるかもしれないのである。

「魚をつくる」夢は、和歌山県の漁港で、世耕氏が漁師に出合ったことから始まった。
大学と地方の出合いが生んだビジネスアイデアだが、その夢の実現に向け、地元の人たちが協力したことは見逃せない。

世耕➖➖大学の研究は社会に役立ってこそ価値がある。

世耕氏のこの言葉は「実学」の精神として、今も近畿大学に脈々と受け継がれている。
地域活性化のために、今、各地で盛んに行われている産官学連携プロジェクトの原点ともいえそうだ。

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  • 公開日 2011.10.21

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