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美濃焼窯元・カネコ小兵製陶所(岐阜県土岐市)の〝ある陶器〟が熱い視線を浴びている。窯元夫人の伊藤久子さんが作った小物に、全国から注文が殺到しているのだ。
その〝ある陶器〟とは「味見お玉たて」。文字通り、味見をするために使う調理具「お玉」を立てるためのキッチン用品である。
あまりの人気に、窯元では専用化粧箱まで作ったほどだ。
伊藤ーー料理をしていて、いつも困っていたのが、味見をした後、お玉を置く場所でした。鍋に入れたままにもできないし、コンロや流し台に置くと汚れるし…そこで、お玉を立てる陶器を作ってみたんです。
と久子さん。
そういわれると、ユニークな形の意味がよく分かる。
お玉をスッポリ包む丸みを帯びた底に、お玉を支える取っ手。その取っ手を持てば、そのまま味見皿にもなるというわけだ。
久子さん自身、これほど注目されるとは思いもしなかったという。
伊藤ーー日ごろ、あったらいいなと思っているものを、毎日触れている土で作ってみただけ。軽い気持ちでした。
という。
人気を呼ぶきっかけになったのが、3年前に東京ドームで開催された「テーブルウェア・フェスティバル2008」。
地元商社が美濃焼のブースを出すことになり、この「味見お玉たて」を並べてみないかと話をもってきた。
毎年開催されているイベントだけに、定着した人気があり、ブースには〝鮮度〟の高い器を並べる必要があったのだ。
白くて丸みを帯びた陶器は、キッチン用品として、食器と並列しても違和感がない。
しかも「味見皿」と「お玉立て」の2つの機能を兼ね備えながら、洗うときは1度ですみ、使い勝手も良い。
来場者の目は、たちまちこの白い陶器に集まった。機能性とファッション性に加え、価格も1,050円と手ごろである。
終了後も口コミで注文が続き、あっという間に約2000個が売れた。
そして、その人気に注目したバイヤーが「母の日ギフト」として全国に紹介。これで注文に火がついたのである。
それだけではない。北海道など遠方からも引き合いが来るなど、口コミが口コミを呼び、どんどん販路も広がった。
陶器に限らず、伝統工芸品はいずれも新市場の開拓が大きな課題だ。行き詰まりの状況を突破するのは、何気ない主婦のアイデアかもしれない。思わず拍手したくなるケースである。
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- 公開日 2011.07.15
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