普通の男が大胆な決断! 人生のスイッチを捉えて上場企業の社長に
株式会社LIFULL(前・株式会社ネクスト)
代表取締役社長兼最高経営責任者
井上 高志
東京都中央区に本社があるネクスト、不動産情報をインターネットで提供している。リクルート出身の井上は不動産情報業で起業、紙媒体の情報掲載料が1件あたりだったのを改め1社あたりにして、物件情報を掲載し放題にした。これが受け、2005年には掲載情報が日本一となり、翌年東証マザーズに上場、現在では不動産だけでなく、暮らしのコミュニティーサイトLococomを運営、売上高47億円を見込んでいる。
井上そのお客さんの立場から見ると、誰も自分たちの身になって親身に探してくれてないと感じてしまうわけですよ。
蟹瀬なるほど。
井上その中で、たまたま私がばかみたいに、中古のマンションだとか他社のマンションとか一生懸命紹介してくれるので、そのお客さんはすごく喜んでくださったんですね。で、菓子折り持って、またあいさつ、お礼を言いにきてくれたんですけど……。そのときに「他の営業マンだと自社の物件ばかり売ろうとするんだけれど、井上さんだけは本当に私たちの身になって親身になって探してくれた。本当ありがとう」と言われたときの笑顔に僕はやられちゃったんです。
井上本当に心底喜んでもらえる人たちを、もっともっとたくさん増やしたいな、という思いがすごく強くなって。
蟹瀬確かに当時ってそういう不動産のデータベースみたいなものっていうのはあんまりなかったですよね?
井上ほとんどないに等しかったです。一部データベースがあったのも、プロの不動産会社の人しか見れないデータベースだったので、一般の人にオープンになってなかったんですね。
蟹瀬だってオープンにしてしまったらライバル会社に、さっきの話ではないけど、行ってしまう可能性が高いわけですよね。
井上私がその当時考えたのは世の中にある住まいの情報が、すべてフルオープンになっていて、一生に一番高い買い物なので、たくさんある情報の中から一番ぴったりなものをチョイスできる、そういうインフラをつくりたいと思ったのがきっかけです。
井上情報誌とかチラシ、あとは不動産屋さんに行くというのが中心だったんですけれども、そうすると情報を届けるコストがかかりすぎるんですね。印刷代とか物流コストとか、本屋に並べたりとか原稿を作成したり。これだと日本全国に5,400万軒、家ってあるんですけれども、これ全部集めて紙で届けようとすると紙で何メートルにもなってしまう情報誌が出来上がる。
蟹瀬それはそうですよね。それと学生が行くような安いものというのはコスト割れしてしまうわけだから、載らないことになる?
井上そうですね。家賃1万5,000円のものを広告料1万円払って出す不動産屋さんいませんので、そこで徹底的にコストダウンを図って、瞬時にタイムラグなくすぐに情報が届けられる仕組みというのを考えました。そのとき私、まだインターネットを知らなくて、クライアントサーバー型のシステムをつくる必要があるなという、ビジネスモデルとしては究極これだと考え尽くしたんですけれども、ただモデルは間違ってないもののツールがないので、これって大手のキャリアさんがやるような事業だなと、とても自分でベンチャーで立ち上げられるような代物ではないな、と思っているときにインターネットと出会って。
井上大変ビビッときました、衝撃的でしたね。で、これまで考えていたモデルというのができるツールが突然目の前に現れたという感じですね。ですのでインターネットを使って何か一獲千金しようと思ったわけではなくて、世の中の住まい探している人たちが求めているサービスってきっとこうだ、それをやるためのビジネスモデルは、先ほど少し説明しましたメディアとネットワークとデータベース、この三つが絶対に必要だと思って、これを圧倒的に低コストでやるというのがビジネスモデルとしては私の中で確立されて、そこにようやくツールが出てきて、もうこれやらないわけにはいかないなと。
蟹瀬となると、当然のことながら会社を立てるわけですね。会社を立てるためにはお金が要る、そのへんは潤沢にあったんですか?
井上150万円も持ってました(笑)。
蟹瀬150万円ですか。
井上はい。
蟹瀬ビジネスモデルはある、インターネットはある、手元資金150万円。どうしたんですか?
井上はい。で、最初に当時有限会社作るにも300万円資本金が必要だったので、それもないもんですから、最初は個人事業主で始めました。マッキントッシュのパソコンとかモニターとかスキャナー、プリンター買ったら70万円もなくなってしまいまして……。当時高かったので。あとは税金も50万ぐらいポンと持っていかれまして、残り30~40万ぐらいしか。私自身は実はインターネットはおろかパソコンも触れない人間だったので、もう志と信念だけで始めたような感じですね。
蟹瀬それでもうお金が本当、30~40万しかない。人は雇えないですよね? そうなると、専門家は。
井上雇えないです、はい。
蟹瀬それでも立ち上げられた後、どうやって?
井上最初は遠縁のおじさんに事務所をただで貸していただいたりだとか、あとは私自身は、リクルート時代にお付き合いのあった不動産会社さん10社程度と実証実験みたいなことを始めさせていただいて、それはもう全部一軒一軒私が回って手作りでホームページつくって、ごめんなさい、両手じゃないですね、片手の人差し指でつくってました。
津島ポンポンと。
蟹瀬ご自身でホームページをつくられた?
井上はい。参考書開きながら、こう一人でやって、全部見よう見まね、試行錯誤で本当に1個1個やってました。
蟹瀬でも150万円が尽きたときには、なんかどこかで稼いでこなければいけない状況ではあるわけですよね?
井上当時は週7日間休みなく、1日20時間ぐらいのペースで働いていたんですね。会社に本当に寝泊まりするような感じで、それで稼げなかったら、じゃあさらに寝る時間削って夜中コンビニでバイトすりゃ食うぐらいできるじゃないかと(笑)。
蟹瀬で、実際に会社を作られた、個人会社ということですけども、その後もいろいろご苦労があった(笑)ようですよね? 交通事故にも遭われている。
出演者情報
企業情報
関連コンテンツ
カテゴリー別特集
リンク