「シェアは取り過ぎない」「ライバルをわざとつくってるんですよ」に潜む展開力
株式会社ライブドア
代表取締役社長兼最高経営責任者
堀江 貴文
コミュニケーションツールとして社会に定着したインターネット。その世界で風雲を巻き起こす男がいる。堀江はいかにしてブームとなるほど会社を急成長させることができたのか。遥かなる先見性でビジネス界に新風を吹き込む手腕、その背景となっている姿勢とは?
堀江これも日頃の情報収集の成果なんですけど、われわれ非常にマイナーな会社で、一般的な知名度はまだいまいちだったと。
で、ちょうどインターネットがブロードバンド化が進んできまして、家庭にインターネットが入ってきて結構みんな使えるようになってきたわけですよ。で、ここでもう一気に消費者向けの市場に力を入れていこうというふうに、その2004年の初めぐらいから戦略を変えたわけですよ。変えたというか、そっちの方向にもやっていこうと。そのきっかけとして、2月にライブドアという社名に変えて、ライブドアのほうがエッジよりも有名だったんですよね。で、じゃあ次はなんの手を打っていこうかということで、いろいろ考えていたわけですよ。
ライブドアという名前に変えたのも、ポータルサイトという玄関サイトがライブドアという名前だったからそういうふうにしたんです、社名と一緒のほうがいいだろうと。
なぜいいかというと、毎日、われわれ上場企業ですから、例えば日経新聞とかの株価欄にライブドアって出てるんですよ。しかもうちは発行済の株式数が多くて毎日の出来高が多いですから2段になっているんです、一番目立つんですよ。そのために変えたんですよ、ライブドアって。Yahoo!も同じなんですよね。Yahoo!も上場してて、株価がすごい高くなったりして、それで一躍有名になったと思うんですね。なら同じことやろうと思って、ライブドアって社名変えて株価欄にライブドア、ライブドアと出るようになって。
それと全く同じ考え方なんですよ。要は新聞とかメディアに、勝手にただで紹介してもらえるにはどうしたらいいだろうと、消費者に訴えかけていくんだったらマスコミしかないな、と思ったわけですよね。マスコミに一番、投資額が少なくてしつこく毎日のように出るにはどうしたらいいのか考えて、導き出した答えが野球だったんですよ。
木村なるほど。
堀江スポーツで野球を放送しない日はないわけです、テレビもスポーツ新聞も、普通の一般紙も、経済紙だってそうですよね。野球のやの字も出ない日は1日たりともないわけですよ。みんな知ってる、で、見にいったこともある、こんなスポーツ日本にないわけですよ。今一番盛り上がってるのは、もしかしたらサッカーかもしれないですけど、サッカーの認知度に比べると野球の認知度は飛躍的に高い、しかもメディアの露出度も高いと、費用対効果で考えるとこんなおいしいビジネスはないわけですよね。
それを、もう立ちいかなくなったから売りたいと言っている会社があったわけですよ。それは買いますよね? ただそれだけなんです。
木村なるほど。
堀江こんなチャンスはないぞと、株価でいったら底値だったんですよ、野球って、で、みんなが駄目だと。株というのは、みんなが売りだと思ってるときが買いなんです、みんなが買いだと思ってるときは売りなんですけど、ちょうど底値で誰も注目していないときに見つけてしまったから、しめしめと思ったわけですよ、インターネットのときと同じだと。で、いつもと同じように、ここに「野球ってすごいぞー」と叫んだら、今回は大騒ぎになってしまったと(笑)。
木村そうですね。
堀江でも、損した人が多分いなかったので。
木村そうですね。
堀江大局的に見れば。
木村仙台辺りは、まだいまだにライブドアコールというの、起きてるんですよね。
堀江ただ、球団できたのは良かったと思いますし、12球団で減らなかった、本当にこれ大収穫ですよね。
木村触手を伸ばされてるという報道がありましたけど。
堀江地方競馬も同じですよ。今底値ですから。みんな「駄目だ」と言ってるわけですよ。ただこれもギャンブルとして考えると、ギャンブルって日本では禁止されてるんですよ、原則。刑法に賭博罪というのがあって禁止されてるんですけど、競馬法って特例法があって、競馬はOKだと。それ以外にも競輪とかいろいろありますけど、やはり一番マーケットが大きいのは競馬なんですよね。地方競馬と中央競馬合わせて3兆5,000億ぐらいマーケットがあって、こんな巨大マーケットで、しかもギャンブルとしては異様な高い控除率が認められているんですね。25パーセントOKなんですよ。普通、ばくちの寺銭(てらせん)というと、5パー10パーなわけですよ、昔から。それが25パーも取れると。しかもみんながいらないと、ただでもらってくれというふうに言ってると。こんなチャンスはないでしょうということなんです。しかも今や、その地方中央の垣根は、インターネットによって完全に解き放たれたわけですよね。通信網が発達してしまったから。世界中で馬券は、法律の壁はありますけど、少なくとも日本中で買えるわけですよ、自由に。
こんなチャンスは逆にないでしょうと、また例によって「ワー」って叫んだわけですよ。したら今度は誰も手を挙げなかったからしめしめということなんですけどね。
木村なるほどね。
勝いつも同じように情報分析されて、そこに仕掛けをしてるわけですね。
堀江私はフェアに勝負したいんです。
堀江というのは、自分だけが知った情報をこっそり隠してたら、市場全体が発展しないと思うんですよ。参加者が多ければ多いほど、市場というのは大きくなっていくんですね。で、それを自分だけのものにしてたら、自分の能力以上に市場広がっていかないでしょ?
木村はい。
堀江で、自分も要は100パーセント市場を持っていたら努力しないじゃないですか。自分は努力するかもしれないけど社員は努力しないですよね。だけど強力なライバルがいたら、絶対そいつ抜いてやろうと思うでしょ?
木村そうですよね。
堀江だからライバルをわざとつくってるんですよ。
木村なるほど。
堀江「わー、ここにあるぞ!」、「インターネットあるぞ!」とか「野球あるぞ!」と言って、ライバルをどんどんつくっているんですよね。そうしたほうが自分も頑張れるし、結果として絶対額は高くなるはずなんです、シェアは落とすかもしれないけど。独占禁止法がなぜあるかというと、シェアを取り過ぎると、その市場全体が駄目になってしまうから独占禁止法があるわけで、シェアは取り過ぎないほうがいいんですよね。
勝とても分かりやすいです。
木村今後の目標というのは?
堀江今後の目標は、この会社は世界一の会社にしようと思っています。世界一の営業利益を出す会社を作りたいなというふうには思っていますね。
木村今、さっきおっしゃってた底値のものっていっぱいありますよね? 他にもね。大相撲なんてどうですかね?
堀江いや、大相撲もね、あんまり言い過ぎるとあれなんですけど、大相撲なんていうのも非常に魅力的なマーケットですよね。
木村そうですよね。お笑い産業というのもあるかもしれませんよ。
堀江そうですね。お笑いも、私がビジネスで企業をやりたい人たちにいつもアドバイスをしているのは、「粗利率が高くて資本が要らない商売をやりなさい」と言っているんですよ。インターネットもそれに当たるわけです。われわれは資本金600万円で作りましたからね。それが今、時価総額2,500億円とかになっているわけですけども、粗利率も非常に高いわけですよ、仕入れが発生しないですからね。
で、お笑いも同じじゃないですか。元手要らないじゃないですか。お笑い芸人一人いればOKですからね。で、売れたらがっぽがっぽじゃないですか。こんないい商売ないですよ。
木村個人的な夢というのはないんですか?
堀江夢ということではないですけども、目標ですね。目標というか、必ず実現するつもりなんですけど、本当に僕はすごく知的好奇心というのを満たしたくて、いろんなことを知りたいんですよ。宇宙の果てがどうなっているか知りたいし、人間の体がどうなっているか知りたいというのがあって、だからそのために宇宙ロケットをつくって探査をしたりとかもやりたいですし、生命工学とかそういったところにもこれからはいろいろ投資をしていきたいなと思ってますね。
木村お話伺ってると、われわれの世代から見ると、生き急いでるというか夢を先取りされてる感じがするんですよ。この先、50歳60歳になったらどうなっているんですかね? 堀江さんって。
堀江考えたこともないですね。先のことを考えない人間なんですよ。今日に生きる、今に生きる、今が楽しければいいという、非常に刹那的な。だって明日死んじゃうかもしれないじゃないですか。
木村そうですね、それはそうですね。
堀江今が楽しい、今を生きようというふうに思っていますね。将来のことなんて考えたって、何一ついいことないと思いますから。
木村こういう人たちが、やっぱりこれからの日本を背負っていっていただくと、それより先輩は後をついていけばいいのではないかと思うんですけどね、本当に。若い人が……。
堀江そうです、そういうやつらにどんどん投資をするといいと思うんですよ。頑張って金稼がせればいいんですよ。利回りいいと思いますよ。
木村それをいつまでたっても譲らないから駄目なんですね。そういう国にしていかないといけないですね、本当に。
堀江本当、若者をこき使ったほうがいいですよ。僕らみたいなのをこき使って、そいつに金稼がせればいいんですよ。そしたら自分の金、増えますから。
勝日本はもっと豊かになりますね、そうするとね。
堀江豊かになりますし、みんな豊かになりますよ、そうすると。
木村ライブドアの株を買いましょう、今度。僕、ちょっとだけ持ってるんですけど(笑)。
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