世界の街や建物、そして人間も。社会の血管をつくる事業は遠回りが近道!?
日本システム企画株式会社
代表取締役社長
熊野 活行
ビルやマンションの給水および空調配管に装着する「NMRパイプテクター」。独自の技術で建物の血管を治療、健康にしていく。その先には、文字どおり人の健康への寄与。そんな事業たちを通して見えてきた、社会課題への着実な成果。事業と社会貢献は企業にとって相反するもの、ということが、昨今では共存すべきものである、と変わってきた。「事業そのものが社会貢献」と先駆的に唱え、想像をはるかに超えたスケールで実現した代表取締役・熊野活行の道のりとは?
坪井モンゴル以外に何か社会貢献されていることはありますか?
熊野2005年からミャンマーで文化財保護の支援活動をしております。バガンという古い都があります。たまたまそこへ行ったときに古い朽ち果てた寺院に出会ったんです。ミャンマー政府にその寺院の修復を願い出ました。それで、バガンでお寺を修復することになりました。
熊野が寺院の修復を始めて2年後の2007年。ミャンマーで軍事政権に対する大規模な抗議デモが勃発。
熊野2007年ですね、ミャンマーで非常に反政府運動が強くなりまして、その一つの中心団体が仏教協会だったんですね。軍政のほうでは仏教団体と仏教寺院の弾圧を始めたんですね。
熊野その過程の中で、軍政がお布施を禁止したんですね。ですから、お坊さんに金品を提供する、あるいは托鉢(たくはつ)で食料を提供するということが一時的に止まったわけです。人々の支えで生きているお坊さんが非常に経済的に困窮な状態になりました。古いお寺では当然、50人、100人、お坊さんが生活をしていますから、経済的に別に得るものがないとダメなので、そのお寺ごとに隠していた国宝級の仏像が地下に流れる状態に陥ったわけですね。それで、その情報が私のほうに来る。 ほかに(仏像を)保護できる人がいない。ミャンマーの人がやれば刑務所に入れられますし、外国人がやったら、あとで分かったのですが、そういう行為をすれば射殺なのですね。
でも、「仕方がない、自分しかできないだろう」という思いで最初の1体を実は購入したのです。そうしましたら、次々と大変立派な仏像が現れて、助けを求めてくるわけです。それを買い続けました。そうしたら最後、お金が全部無くなりましたけど、仏像が数えたら301体までになったんですね。
ミャンマー最大の都市、ヤンゴン。その中心部から車でおよそ1時間半。こちらはアウンザブタイヤ寺院。寺院内には熊野が寄贈した301体の仏像が安置されており、その功績に感謝の意を込めて、地元の人たちからは「ジャパンパゴダ」と呼ばれている。2012年10月に仏像が一般公開されてからは毎日数万人の参拝者が訪れているという。仏像の寄贈について、寺院のパナウンタ大僧正にお話を聞いた。
パナウンタ301体の仏像を寄贈すると言われて、私はすごく小さい仏像だろうと思い、寺院で預かるべきかどうか迷いました。次の日、寄贈者の家に行き、家の中に入って私はとても驚きました。大きな仏像が両側にたくさん並んでおり、その間を抜けると寝釈迦像が見えました。そのあまりの衝撃に私は膝に力が入らず、そこから先へは歩けないほどでした。まさに生きているお釈迦様を見ているような気がして幸せな気持ちでずっと佇(たたず)んでいました。
寄贈された仏像のほとんどが国宝級だったが、その中でもこちらの仏像は鑑定の結果、今からおよそ2600年前、まだブッダが生きていた紀元前5世紀ごろの仏像であると判明。寄贈された仏像の中でももっとも貴重な仏像だという。
パナウンタこの仏像はインド方面のラカイン州から来ました。お釈迦様がインドからラカイン州を訪れたとき、その地に留まり、何体かの仏像を作られました。これは、そのとき作られた仏像の一つです。
現在、寄贈された仏像はせまい場所に安置されているが、今後は参拝者が1体1体ゆっくりと拝観できるように新たな拝観施設を建設中。完成した暁にはミャンマー国内のみならず、日本を含むアジア諸国およそ30カ国から数多くの仏教指導者が参列する予定だという。
参拝者自分の願いが叶ったのでお礼に来ました。
参拝者世界の人々が平和になるようにお祈りをしました。
参拝者来世も来来世も家族と一緒にいられるようにお願いをしました。
熊野ここにあります301体の仏像はミャンマーの皆さんの心の支え、幸せにする導きがある、大変ありがたいことだと、このように思っています。
坪井今後はこのミャンマーの取り組みをどのようにしていきたいとお考えですか?
熊野このジャパンパゴダに多くの人が集まるのですが、この仏像を見るために、ひどい場合は3時間くらい並ぶんですね。今は大体、家族で来る方々が多い。両親と子どもたち、そういう人たちが1日中楽しめるような、仏像を参拝する場所以外のまわりにお年寄りが、たとえば、バガン風のお寺で休憩するとか、あるいは子どもたちが遊べるとか、あるいは仏教に関係した物語があるんです。そのような物語風の場所を作るとか、「仏教楽園」みたいなアミューズメントパークを作りたいと思っています。
宮川モンゴルとミャンマーで、こういった社会貢献をされていますけれども、このなかでお感じになっていることはどういうことですか?
熊野結果なのですが、社会貢献をしていると、その結果が自分に良い意味で返ってくるような気がするんです。
熊野社会貢献をしていると皆さんが「じゃあ、熊野さん、一体、どういう仕事をしているんですか?」「じゃあ、助けましょう」という方も出てきますし、国で見ますと、たとえばモンゴルですと、モンゴルにある日本大使館とか、あるいは高級なマンションなど、そういうところが実は先ほどのパイプテクターを使い始めております。ミャンマーでは「仏像を寄贈した人」と言うと、大変名誉あることと、皆さん思われるのですね。
宮川それはそうでしょうね……。
熊野ですから、政府のほうも「じゃあ、水道管にこれ(NMRパイプテクター)を使ってみようか」ということで、検証をやっていただいたり。結果的に良い方向に行っているのかなと思います。それを求めてやっているわけではないのです。でも、結果的には何か社会貢献をすると、自分に良いことが戻ってくるのかなという気がします。
自分の私利私欲のためではなく、困っている誰かのために動く。
社会に対して無心で貢献することで、いつか自分に返って来る。
それが、熊野が目指す社会貢献型企業の姿。
熊野社会に受け入れられない。社会の役に立たないものは長くもたない。
熊野が唱える、永続する企業とは!?
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