新しい世界への感動と挑戦が原動力。心配性の国・日本に必要なのは文化だ
安藤忠雄(建築家) ×宮本亜門(演出家)
2017年には「安藤忠雄展-挑戦-」と題し、これまでの軌跡と未来への展望にせまる展覧会で、およそ30万人を動員。いまだ衰えぬ挑戦意欲をもつ建築家・安藤忠雄。そんな活躍に、常に憧れ、心の支えだったと語る、世界で活躍する演出家・宮本亜門。
今、建築界と演劇界の雄が唱えるもの、それは「文化の力」。そして、世界で活躍しているからこそ強い問題意識をもち、そして奇しくも同じ「心配性」だと感じたという国・日本。その行く末に必要なのは、楽しく、感動的で、振り切れた挑戦であるという。
竹内安藤さんが今の時代に一番必要なものはイノベーションだとおっしゃっていますが、変革……。
安藤変革をしないと日本は今、売上と利益が上がって、内部留保ばかりするじゃないですか。それよりも内部留保する30パーセントを社員に渡して、みんなが元気に楽しく生活すると文化のほうにも行くんですよ。芝居を見る、映画を見る、そういうのを見て、グッと力をレベルアップしないといけないと思うんです。だから私がするのは、生きているということを実感するためにそういうのを見に行く。
竹内宮本さんはいかがでしょうか? 変革、イノベーション。
宮本僕は世の中がこんなに心配性になっていくとは思わなかったです。明るいことも多いのだろうけど、かえってネガティブなことが、まるで世の中の中心の話題のようになっている。「細かいことで、何、小さくなっているの?」。世界で一番心配性の国だと思っています。
竹内みんなやはり、もっとおおらかですか?
宮本「老後、どうしようどうしよう……」って、こんなに貯め込んで今、生きていることの「楽しいじゃない!」という喜びをかえって、自分で忘れかけている。もともとそうではなかったと思いますよ。江戸時代もそうだけど。
それが、小さいところでグルグル回り始めてしまっているような気がして、もったいないなと……。過去を見てもすごいものがあるので、大胆で「えっ、こんな発想はない」みたいなものが山のようにあった。だって、人類の歴史が思い切った人しか結果的にはうまくいってない、面白くないじゃないですか。その人たちが名を残しているし、その人たちが時代を変えているわけだから、やはりそのテンションというのは「これはやや心配性すぎませんか?」と思っています。
安藤私もそう思うね。私、いっぱい切っているじゃないですか。ハンデキャップあるじゃないですか。胆のうがない、胆管がない、十二指腸がない、すい臓がない、脾臓がないじゃないですか。これだけなかったらね、中国からたくさん仕事が来るんです。「安藤さんにお願いしたい」って。
「私の建物を見てきたんですか?」「いや、見てない」「どうしてですか?」「5つも内蔵を摘出して、元気な人は世界中にいない。縁起がいいからお願いしたい」(笑)。だから、良いこともあるんです。あまり悪いことを悪いと思わずに、前を向いていくと良いこともある。
竹内それでは、最後にお二人の今後の展開や展望や野望などを教えていただきたいなと思います。
宮本本当にもう死ぬ瞬間まで自分がクリエイションしていく。あらゆる国に行きたいので、いろいろなジャンルも超えるし、国も超えて、いろいろな人とコラボレーションしていく面白さを僕もそこで発揮していきたいと思っています。
竹内安藤さんはいかがでしょうか?
安藤危険を承知でやる仕事をしたい。
宮本かっこいいですね! どういう危険ですか?
安藤あらゆることが難しいことは、我々、事務所小さいですから、所員たちが「またよくないことをしているな……」と思うようなこと、たくさんあると思うのですが、危険を承知でやろうと。
竹内終着点が凝っていて、ユーモアたっぷりな感じもしますが、大変貴重なお話を伺いました。本日は、宮本さん、安藤さん、ありがとうございました。
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