32億円の赤字からの脱却。医薬品卸売の老舗企業が抱く「不易流行」の思い
アルフレッサ ヘルスケア株式会社
代表取締役社長
勝木 尚
平均寿命が伸びる昨今、我々の健康への意識も少しずつ高まりつつある。アルフレッサ ヘルスケア株式会社は医薬品の卸売りを中心に事業展開している企業だ。120年を超える老舗企業だが、一時期は深刻な経営不振に陥っていた。代表取締役社長 勝木 尚はこの赤字脱却のためにイノベーションを起こした。勝木が唱える「人生100年時代」に生き残る企業戦略とは?
福井 商品数でいうとどれぐらいあるんですか?
勝木 私ども今現在、登録上は9万アイテムあります。常時、物流センターでは1万8000~2万アイテムですけども、お取り寄せ等も含めましたら、4万8000アイテム。メーカー数でいいますと680社ぐらいですかね。
そういったメーカーさんの商品を扱わさせていただいています。
こちらは大阪忠岡町にある関西物流センター。メーカーから入荷した商品を保管し、ドラッグストアや薬局など、小売店からのオーダーに合わせて出荷を行っている。
(インタビュー:管理本部 物流部 部長 榎本升一さん)
榎本 現在、北海道から沖縄まで、34ヶ所の物流センターを展開しております。その他に出荷センター併設の返品センター3ヶ所を加えて37ヶ所となっております。
こちらは、同一期限の商品を1パレット1アイテムずつに分けて格納する自動倉庫。お客様が必要とする商品を決められた時間に納品ができるよう、管理されている。
(インタビュー:HCL株式会社 関西物流センター 福田 有実さん)
福田 各エリアごと、各事業ごとに個数の検品をしたり、確実に最後までドライバーさんに引き渡すっていう作業をさせてもらってます。この商品、私達届けてるなとか、ちゃんと届いてるんやーとか、考えたりします。その時に責任感とか、実感はすごくあります。
作業員 ご苦労様です。ピッキングお願いします。
アルフレッサ ヘルスケアの特徴は、人とシステムの融合。こちらのハンディターミナルでは細かいオーダーに対応し、個別の荷造りをするピッキング作業をしている。高い精度とスピードが求められるため、独自のシステムを使用している。
榎本 こちらは出庫カートになります。大手のドラッグストア様、その他に個人経営の薬局様へ配送する医薬品を出庫するために使っております。バーコードやQRコードで商品を特定し、重量検品により数量をチェックしています。また、期限や製造記号など指定して、間違いがないように出庫カートから作業者への指示が出ています。
人によるピッキングと機械のチェックで効率も上がっているという。
(インタビュー:HCL株式会社 関西物流センター 岸本 律子さん)
岸本 1日で、60から70折りコンぐらい担当しますね。
榎本 当社の仕組みは、「人とシステムの両輪」で成り立っております。物流機器も導入しておりますが、あくまで人に対するアシストがメインとなっております。機械は非常に便利ですが、地震など災害には弱く、被災した場合には、その復旧にかなりの日数を要してしまいます。100%の機械化は非常にリスクがあると考えております。
2018年、関西地方を襲った台風により物流センターは大きな被害を受けたが、迅速な復旧作業を行うかたわら、他の物流センターと綿密な連携をとることで、出荷や納品に大きな影響は出なかったという。
榎本 被災された地域での生活を維持するためにですね、必要な物資として、医薬品や水、その他育児用品のミルク、ベビーフードを一つでも多くお届けしたいという思いで対応してきました。
蟹瀬 この物流センターの業務の中で、社長として一番これが大事なんだと思えることは、どういうことなんですか?
勝木 一番はやはり「正確である」ということですね。納品率と私どもの業界では言っておりまして、ファイブナインとかシックスナインと申すんですけども、99.999とか99.9999とかですね。そういうふうな納品精度を求められております。
まずは正確に納品をしていくということで、次はやはりスピードです。お薬とか健康食品等は、やはりすぐ欲しいということで、やはりそういったことのスピード感、これは二つ目の重要な要素だと思います。
三つ目は、やはり我々は薬部行政を受けております。薬事法、薬機法をはじめとした、コンプライアンス「法令遵守」ですね。医薬品、それから劇薬であったり動物薬であったり、高度医療管理機器とかですね。たくさんございますので、そういったものに全て法律がございますので、そういったものに準拠した供給体制、それから法令遵守、これを心がけております。この三つが重要な要諦だと考えております。
常に100%の精度を目指し、万難を排す。それがアルフレッサ ヘルスケアが担う物流の根幹。
蟹瀬 2011年ですか、アルフレッサ ヘルスケアの社長に就任された。内情っていうのはどうだったんですか?
勝木 初年度と次の年度で合計32億の赤字を計上しまして、いわゆる自己資本比率と申すのですが、3.5%。
蟹瀬 うわぁ・・・。
勝木 ということは、私もそのとき大変な期間で、またその次の年に同じ赤字をすると、いわゆる債務超過ですか。そういったこともよぎってですね。大変な緊張感でございました。
福井 でも、そこから発展していくに当たって、具体的にはどのような方向で動いていかれたんですか?
勝木 卸売業って物が届かないと(いけない)、やはり当然のことですね。ですから物流の部分のいわゆる効率化と申しますか、それと物流センターの各所の統廃合、拠点整備、そういったことをまず一番にいたしました。それから次は、社員の教育です。
THMWと私は申しておりまして、トータル ヘルスケア マーチャンダイジング ホールセラー(Total Healthcare Merchandising Wholesaler)。卸売業は、物流機能、金融機能とございますが、やはりこれから求められるのは、特に医薬品は専門性の高い分野ですので、マーチャンダイジング機能、これが重要だということで社員教育に力を入れました。
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