日本は政治劣化で2、3周遅れ 政権交代に変革の夢を託したのに、、、


時代刺激人 Vol. 189

牧野 義司まきの よしじ

経済ジャーナリスト
1943年大阪府生まれ。
今はメディアオフィス「時代刺戟人」代表。毎日新聞20年、ロイター通信15年の経済記者経験をベースに「生涯現役の経済ジャーナリスト」を公言して現場取材に走り回る。先進モデル事例となる人物などをメディア媒体で取り上げ、閉そく状況の日本を変えることがジャーナリストの役割という立場。1968年早稲田大学大学院卒。

 今後の高齢社会対応と財政赤字に歯止めをかけるための社会保障と税の一体改革関連8法案が6月26日、大波乱の衆議院本会議でやっと可決された。

今後の高齢社会対応と財政赤字に歯止めをかけるための社会保障と税の一体改革関連8法案が6月26日、大波乱の衆議院本会議でやっと可決された。民主党政権が野党の自民党、公明党間との政策調整を踏まえた結果だが、2000年代初めの金融システム破たんが現実化したころ、破たん回避のため、当時の自民党政権が野党民主党の提案を丸のみし、与野党共同提案にして必死でシステム改革法案の成立を図ったのとそっくりだ。政治がねじれ現象に陥った場合、こういった形で危機乗り切りの行動をとるのはやむを得ない。
だが、メディア報道でご存じのとおり、財源となる消費税率引き上げをめぐって、民主党内部が割れ、小沢一郎元代表や鳩山由紀夫元首相ら57人の衆院議員がマニフェスト(政治公約)違反だと反対、さらに16人が棄権や欠席の形で事実上の反対行動をとった。そればかりか、小沢グループは民主党会派の離脱、早い話が離党して新党結成の動きに出たため、政権政党の民主党は事実上の分裂状態に至る、という政治混乱の極みに至った。

政治ジャーナリストに同情するが、
政局報道に終始し政治を堕落させた反省も必要

今回のコラムでは、政局化して混乱を続ける政治の問題を取り上げたい。正直言って、日本の政治は、日本のすぐそばで起きている新興アジアの地殻変動のみならず、ユーロ経済圏などの財政・金融危機の動向を見据えて、しっかりとした戦略対応をする、といった余裕が見受けられない。それどころか問題意識も感じられず、ひたすら内向き、そして自らの保身に終始している。政治劣化で日本は世界から2、3周遅れと言っても過言でない。

経済ジャーナリストの立場で言えば、政治ジャーナリストの人たちには同情する一方で、反省も求めたい。同情の点は、時代の先を見据える行動をとりえない日本の政治を日々、取材して、もっともらしく分析・報道せざるを得ない政治ジャーナリストの人たちはご苦労さんだな、というもの。逆に、反省を求めたいのは、政策報道よりも政局報道に終始して政治混乱をあおった政治ジャーナリズムの責任も大きいのでないか、という点だ。

今回の社会保障と税の一体改革、
消費税率引き上げの政治判断はやむを得ない

今回の政治混乱のもとになった社会保障と税の一体改革問題に関しての私自身の立場を申し上げておく必要がある。結論から先に言えば、私は医療、そして年金制度改革と合わせて、その財源確保のために消費税率の引き上げはやむを得ない、という判断だ。

同時に、ギリシャの財政危機をきっかけに起きたユーロ経済圏の政府の債務危機がもたらすグローバルな金融市場不安を見ていて、日本も国債依存の強い財政構造に歯止めをかける時期に来たこと、その意味で、日本が消費税率引き上げで財政危機に歯止めをかけようとしていることを世界にメッセージ発信が必要と思っている。
その手を打っておかないと、リスクが現実化する可能性がある。日本国債の保有構造を見ると、80%が国内のメガバンクや機関投資家、個人が金融資産の形で保有しており、投機的な売買行動に出ないから心配ない、という楽観論が大勢だが、海外の動きにあおられて、ろうばい売りなどで国債暴落に発展するリスクは皆無とは言えないからだ。

日本国債の悪化リスクは重大、
政治がユーロ危機連鎖に歯止めかけるのは当然

余談だが、ギリシャ危機は、ギリシャ政府が返済のあてもないのに国債増発に頼り、それをもとに財政支出増に走ったことが最大の原因だ。これはギリシャだけの問題ではなく、スペイン、イタリアなどユーロ圏諸国に共通する。それらの国々の国債を投資目的で保有した金融機関の不良債権化が、金融市場の不安を誘い、金融システム危機を招いている。

日本の国債残高が2011年度末で676兆円、対国内総生産(GDP)比で144%にのぼる危うい財政の現実が、ヘッジファンドから債務危機だと狙い撃ちされないように、しっかりと対策を講じるのは政治の責任だ。消費税率引き上げに関しては、時期がまだ先の2014年以降であるとはいえ、デフレ状況のもとで、国民生活にしわ寄せする増税は厳しい政治選択であることは事実だ。しかし日本の財政悪化が、グローバルマーケットから狙い撃ちされるリスク回避の点もからむだけに、今回の措置はやむを得ない。

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