失敗を恐れず自ら考え自ら行動する日本の付加価値を引き出すシェフラージャパンの挑戦

自動車のグローバルマーケットとその未来
ベアリング技術を生かした燃料電池システム『バイポーラプレート』

株式会社イナベアリングとエフ・エー・ジー・ジャパン株式会社が合併し、2006年に設立されたシェフラージャパン株式会社。自動車事業や産業機械事業を展開するグローバル企業の日本法人である。社員数も2013年と比べると3倍近くになり、これまで設備投資も積極的に行われてきた。

シェフラーグループとして米国や中国、欧州での売り上げも伸びているが、世界中にある拠点の中でも日本は重要視されているという。

「日本に法人を置くことで、日本のお客様には安心感を持ってお取引頂いていると思います。日本語が通じることで、弊社のパーツに関する検査や原因究明の対応がスピーディに行われていますので、そのレスポンスの早さは一つの付加価値として非常に大きいと思います」

自動車業界のグローバルマーケット自体は堅調で、東南アジアがその勢いを牽引しているという。アジアマーケットが活性化する中、同社はその競争に打ち勝つべく、人材育成にも積極的に取り組んでいる。

「弊社は人材育成に関してもオンラインで育成クラスを用意するなど非常に充実しています。オンラインでは伝わらない部分もあるので、現地での経験は重要視していますが、現在、コロナの影響で海外拠点への移動が難しいため、その方法を模索している最中です」

自動車業界におけるアジアマーケットと日本が抱える課題に苦労しているという。

「グローバルマーケットは今でも伸びていますが、その主な国は東南アジアやインドや中国です。ただ昔のように、我々のマーケットで使い古した技術を新興国に持っていけば通用する時代ではありません。また、カリフォルニア州では2035年までに、内燃機関搭載の新車販売を禁止することとなるなど、業界全体として今後進むべき方向は混沌としています。燃料の供給源が電動化していけば、その国で作られている電気が何であるかという問題にも繋がります。例えば、中国の工場で電動自動車を作ると、完成するまでにCO2が逆に増えてしまうという問題もあり、各企業も苦労していますし、脱炭素を掲げる日本も同様の課題を抱えています」

Energy Chain

ただ、シェフラーは自動車以外にも産業機械事業も展開している。再生可能エネルギーとして風力発電も自然エネルギーの一つでもあるが、風車を回すベアリング技術は得意とする分野だ。

「弊社のベアリングやスタンピングの技術から、燃料電池用の『バイポーラプレート』というプレートを開発しました。燃料電池の中に入っている薄い金属のプレートの間を、水素と酸素を交互に通すことによって、電気を作る技術です。
 
 

Fuel Cell Stack (燃料電池スタック)

 
弊社のプレートをモジュール化していき、燃料電池を作りたいと考えていますが、かなり時間がかかるプロジェクトなので、まずはプレートをモジュール製造メーカーに売り込んでいます」

産業全体の変化のスピードが早く、自社で全てを製造する間に後れを取ってしまう。なので、各社が得意とする良い部分を結集し、早くマーケットにソリューションを提示すべく努力しているという。

「日本は20年間ハイブリッド車を製造している国であり、ポテンシャルは非常に高いので、その日本の強みと弊社の強みを合わせて良い物ができないかと常に模索しています。また、ロボティックスの分野でも、弊社のギアリダクション技術を活かせると考えています。
 

Multimode Hybrid Transmission
(マルチモードハイブリッドトランスミッション)

ロボットの手や腕のジョイント部分に弊社のギアを噛ませることで生卵を潰すことなく、スローにソフトに掴むことが可能になります。ロボットのマーケットは中国を入れて約8割はこのアジアにあり、OEMとして共同でソリューションを提供していきたいと考えています」

さらに同社は『インダストリー4.0』という、製造業におけるオートメーション化やデータ化、コンピュータ化において貢献していきたいという。

「『インダストリー4.0』は『繋がる工場』とも言われ、『スマートファクトリー』としてネットワーク化して管理し、生産や流通のコスト削減や生産性の向上を目指すもので、弊社はそのセンサーやモニタリング技術にも力を入れているので、定期検査やモニタリングのスマート化に貢献していきたいと考えています。実際に現在、韓国の工場ではモデル工場が稼働していますので、今後、5Gが進めば、データ通信量も増え、『繋がる工場』は加速すると考えています」

日本特有の受け身体質からの脱却
問題解決型チームで付加価値を創造する

産業全体の動向やニーズの方向性はある程度見えていて、不可逆であり、今は過渡期だという。常にアンテナを張り、危機感を持って思考し、その変化の先を行きたいという。

「現在、クロスファンクショナルチームを立ち上げ、会社を変えていくために若い有志社員に参画してもらっています。コスト競争では、東南アジアが力をつけており、このままではコスト高の日本人は外国人に置き換わってしまうという危機感を持っています。日本は自動車やロボットにおける大きなマーケットがあり、あとは我々がどのようにパフォーマンスを上げ、付加価値を高めていくのか、そのために変化しなければなりません。指示を待っているだけでは何も為さず、自分の身近でできることからやっていくことが肝要です。『変化できるものになるためには、自分から変化しないといけない』のです」

コロナは同社にとって、現在抱えている問題に対応すべくうまく作用したという。

「コロナによって、社内一丸となって、それぞれが抱えている問題に対して、自分で気づき、自分で考え、自分から行動するようになり、コストマネージメントがかなり良くなってきています。コロナのようなイレギュラーな時こそ、ロジックを通した上で失敗を恐れずトライ&エラーを繰り返していく姿勢が大事なのです」

部品のみならずトータルシステムのノウハウも持ち併せている同社は、デジタル化の流れに対して、試作段階のコスト削減や時間短縮に貢献できるという。「コンピュータのモデリングを机上で行うことができ、製造の初期段階からサプライベースとパートナーを組み、一緒に最良のものを短期間で作っていきたい」と話す田中代表。これからは数字を達成するパフォーマンスだけではなく、どのように達成するのかというポテンシャルが問われてくる時代だという。同社は自主性や積極性やフレキシブルな思考を楽しめる人材を求めている。ぜひ、興味関心のある方はお問い合わせいただきたい。

社会に貢献しつづけるバイオ企業。独自のメタボロミクス事業とバイオマーカー事業の未来。

より進化し高感度化した「CE-MS法」
アカデミアを超え、民間ヘルスケア事業に貢献

ヒューマン・メタボローム・テクノロジーズ株式会社は、2003年慶應義塾大学先端生命科学研究所の冨田勝所長と「CE-MS法」の生みの親である曽我朋義教授によって設立されたベンチャー企業。メタボロミクス事業を中心とするソリューションプロバイダーとして活躍している。

同社の中核事業である「メタボロミクス事業」は独自開発された「CE-MS法」によって数百から数千の代謝物質を一斉に分析できるという。

「代謝物質(メタボライト)を一斉分析できる独自の『CE-MS法』は、キャピラリー電気泳動(Capillary Electrophoresis, CE)と質量分析計(Mass Spectrometry, MS)を繋いで解析する方法です。代謝物を一斉に解析できる技術は海外を見ても弊社を含め数社しかありません。その技術を進化させ、より高感度で最先端な分析法によって、これまで見えていなかった物質が見えるようになり、より多くの代謝物質を検出できる形になりました」

アカデミアの研究者層が同社の技術を使い、自身の研究の一助にしたいということで利用されることが多く、また民間企業の基礎研究のみならず商品開発に利用されることも増えているという。

「受託先は幅広いですが、基本的なベースはアカデミアの研究用途が中心です。医学系で言えば、病気との関係で、病気の有無によって我々の測る血液中の代謝物がどのように変化するか、その違いが分かることで自身の研究をさらに進めていくなど使い方は様々あります」

ここ数年は「トクホ(特定保健用食品)」や機能性表示食品を色んな食品会社が製造し、あるいは異業種分野の企業もヘルスケア分野に参入し、ヘルスケア業界が活性化している。

「最近のトレンドとして、ここ1~2年で急激に増えているのは、機能性表示食品等を開発している民間企業からの受託です。機能性の表示は日本独特のものですが、各社競って機能性表示食品を開発している状況で、弊社の技術を使い、その効果や変化を見るために基礎データを取りたいということで利用いただいています。人が食べた時にどのような変化があるのか、血液を採取して測ることで、その効果を見ます。プロジェクト自体は検体数も多く、弊社の受託規模も大きくなります。最近、このような食品会社からのニーズの高まりを肌で感じており、受注が増えることで弊社の経営も軌道に乗せることができるのではないかと考えています」

同社は2012年にアメリカマサチューセッツ州において、「Human Metabolome Technologies America, Inc.」を設立し、海外進出を果たしている。

「現在、アメリカに営業拠点があり、ヨーロッパやアジアでも代理店を使った営業を展開しているところです。アカデミアからの受注はもちろん、海外の製薬企業やベンチャー企業からの受注もあります。海外の受注シェアは全体の15%程度になっています」

メタボロミクス解析事業に続く
もう一つの中核事業への取り組み

同社は製造生産の拠点が山形県にあり、営業や管理などの拠点は東京にある。どこの企業もコロナ対策を講じているが、同社は特に山形の生産拠点において徹底的に対策を講じているという。またさらにまたさらにライフサイエンス分野のベンチャー企業として同社がコロナに関連して取り組んでいることがあるという。

「一つは弊社HPにて『感染症研究×メタボロミクス』と題する特集を組んでおり、感染症研究でメタボロミクスを用いる意義や利点、更には実際に感染症研究でメタボロミクスを利用していただいた先生へのインタビューも公開しています。弊社の特集では直接的にCOVID-19に関するものではないものの、代謝物を解析することが、感染時の身体の状態や重症度の把握、さらには、ワクチンの副作用予測などにつながっていけばよいなと思っています。もう一つは新型コロナウイルスのワクチンを研究開発しているアンジェス株式会社とDNAワクチンの共同研究開発の契約を締結しました。当社のメタボロミクス技術が新型コロナウイルス対策に寄与できるよう取り組んでまいります」

もう一つの中核事業にすべく取り組んでいるというバイオマーカー事業とはどのような内容だろうか。

「バイオマーカー事業は、ある病気の有無や進行度の指標となるバイオマーカーを開発し提供することで、人々の健康に役立つことを目指しています。また、予防医療において、病気のリスクの有無を指標化し提案できるようなことが事業に繋がればいいとも考えています。弊社では鬱などメンタルヘルスや認知症予防に関するバイオマーカーの実用化に向けた研究に取り組んでいます。加えて、お客様からの要望に応じてバイオマーカー探索の研究サービスを提供しています。研究開発には時間や費用がかかるので、弊社としては収益性を上げつつその開発費等を吸収しながら将来の事業の柱の一つにしたいと考えています」

さらに、アプリケーション開発にも取り組んでいるという。

「色々なお客様に使っていただきたく、アプリケーション開発をやろうとしています。ただ代謝物を解析できるだけでなく、目的を持って使用できるように、様々な新規メニュー(例えば、腸内細菌に関する代謝物を測定するなど)の開発に取り組んでいます」

今後もバイオ産業に属する企業として、社会の役に立てるものを実装していきたいという。

「色々な社会問題や環境問題に、我々の技術やソリューションが役立てるよう、大きく成長していける会社にしていきたいと思っています。社会の何かに役立っていると感じられるソリューションを社会に提供していくことに我々の存在意義があると考えます」

全従業員数は78名の企業だが、そのうち22名が博士号の資格を持っているという。これだけ博士号を有している社員を持つベンチャー企業は珍しい。そもそも起業に際し慶應義塾大学が初めて出資したという同社、コロナ後の不安な社会に明るい光を差す使命感溢れる強い言葉に同社への期待は大きい。

“プリント生地なら北髙”までもう一歩。「生き残り」から「勝ち残り」へのチャレンジ。

大量生産による在庫過多からの転換
確立したブランド力と知名度のゆくえ

コットン素材を中心としたオリジナルプリント生地の企画、生産販売を行う北髙株式会社。2012年当時から現在まで、社会が変化していくなかで、トレンドをリードしていくオリジナルブランドの確立や海外を見据えた戦略など、あれからどうなったのだろうか。

オリジナル生地ブランド「アッシュ・ソレイユ」のコンセプトをリニューアルする一方、トレンドとは一線を画し、広く長く愛されるオリジナリティあふれる柄を追求してきた。

「8年前と大きな変化はなく、生地屋としてのブランドを確立していきたいという思いは変わりません。BtoCにおけるブランドとは少し違いますが、黒子の立場の生地屋として、BtoBで各アパレルメーカーや雑貨屋、製品メーカーなどに対して、一定のブランド価値の訴求や企業価値としてのブランド力が向上し、かなり浸透してきていると思います」

プリント生地の取り扱い比率はレディースよりもメンズのほうが多いという。

「ヨーロッパのプルミエール・ヴィジョンを足がかりとして、メンズアパレルの個性的なラインに比較的浸透しています。新商品は毎シーズン、春夏・秋冬の大きく分けて年間2シーズン出しています。当時は、会社の売上を上げていくという目標を掲げ、当時流行った柄パンツのチノストレッチが大ヒットし、売上も伸びました。その後、エクスポテックスという貿易会社をM&Aを経て統合し、マーケットシェアも拡がり、知名度も上がっていきました」

 
近年、世界的に注目されているSDGsの取り組みが、アパレル・繊維業界に厳しい逆風となっていると言われている中、企業の体質改善も課題になってきているという。

「ここ5年は売上もピークアウトしてきており、業界では、生産過多による過剰在庫が経営を圧迫する流れになっているので、弊社も利益の中身を精査し、キャッシュフローを改善していきながら、オリジナリティを追求していくような方向へ転換してきました。マーケットの浸透度や弊社の商品の占有率などを見据えつつ、改善点の洗い出しとキャッシュフローの見直しに取り組んでいます。これまでアクセルを踏んできた分、ブレーキの使い方を学びつつあるところです」

コロナ禍によって観光業や飲食業などに甚大な影響を与えつつあるが、アパレル・繊維業界も対岸の火事ではないという。

「2020年は最悪ではないかと思います。特に百貨店のアパレルに関連するところは大打撃を受けています。名門のレナウンが経営破綻し、ワールド、オンワード樫山、TSIホールディングス、三陽商会などを合わせた千数百店舗がなくなる、となると業界的なインパクトは大きいです。人員削減もアルバイトの人数を合わせれば、相当数になり全体としてシュリンクしていく方向にあります」

実はアパレル・繊維業界はコロナ禍の影響以前からSDGsにおける環境問題で、生産したアパレルの3~4割が廃棄処分になっているという批判から、改善を求められ、厳しい状況だったという。一方で、コロナ禍において、デジタル化に活路を見出しているところもある。

「ネットに力を入れているところは、まだ業績は良いですが、インターネットの普及率を考えると、ネットがアパレルを後押ししているかというと、それほどでもないと感じています。売上のシェアが現状12~13%で頭打ちしており、このまま20~30%に伸びるかどうか。SDGsの観点からアパレルが悪者扱いされていることがとても残念で、その風潮によって生産を控え、需要が減り、そうなると供給も減るというスパイラルに陥ってしまいます」

問われる企画力・営業力、そして生産管理能力
SDGsの逆風、そしてコロナ禍における競争と淘汰の未来

同社が数年前から取り組んでいることとして、企画力・営業力、そして生産管理力が挙げられる。在庫を抱える商売にとって、非常に難題な取り組みだが、在庫があるがゆえに、お客様が欲しいものを欲しい時に欲しいだけ提供する強みがあるという。

「基本的には、企画力や営業力や生産管理能力の向上によって、仕入れと在庫管理をしっかりやり、利益の源泉とします。ある程度の在庫は仕方ないが、余った在庫を処分する時に見切り損が出てくるので、これをいかに減らすか。作りすぎない、仕入れすぎないという基本を追求し、売上拡大路線から収益改善路線へ転換してきました。売上拡大時期にある程度まで認知度を上げ、占有率も上げていった結果、『プリント生地といえば北髙』と言われるところまで近づいて来ました。『生き残り』を『勝ち残り』にしていくために、存在感をしっかりと発揮し、企画と営業を強化し、販売シェアを拡げていきたいです」

BtoB向けのマッチングサイトへの取り組みやデジタル化への取り組みも進めていきたいという。

「計画生産に対して慎重になってきています。生産管理能力を上げ、収益改善を行っていき、収益体質、財務体質を良くする。そして、リアルな取引より弱い部分があるのはどうしても否めないが、BtoB対応のデジタル武装も始めていかなければなりません。ちょうど弊社のホームページもリニューアルしたばかりで、このような取り組みは時差がある海外に対して非常に有効です。3年前、プルミエール・ヴィジョンがBtoBのマッチングサイト「マーケット・プレイス」を稼働させ、弊社も参画しました。同様に昨年より国内においてもBtoBマッチングサイト2箇所と契約し、そのうちの1つである”テキスタイルネット”は現在稼働しており、もう1つの”FABLY”は2021年1月後半から稼働が開始されました。」

海外市場も視野に入れ、会社として、きちんと評価されるような堅実な取り組みを行っている同社。「ここは面白い生地をやっている」という評価を得るため、新商品開発の投資も、より精査して良いものを提案していく。そして、日本の技術ある生産業者を守っていくこと。BtoBの強みでもある連携によってお客様の利便性を上げ、良い生地を提供しトレンドを発信し、オリジナリティの発信をし続けることを目標に、引き続き挑戦は続く。

アジアを舞台に電子部品の開発・製造・販売を手がけるメーカー機能を持つ商社のグローバル戦略

商社からメーカーへ
アジアを中心に商機を見いだすグローバル戦略

一部上場商社である高島株式会社の100%子会社として、1993年香港に設立されたiTak(International)Limited(アイタックインターナショナルリミテッド)。現在、日本を含め6つの子会社を持ち、アジアを中心に11の拠点で事業展開をしている。液晶や音響部品などの電子部品の開発・製造・販売、白物家電やデジカメレンズ等の基板実装等を手がけている。日本の家電業界は国際競争激化による海外メーカーとの価格競争に晒され、厳しいと言われている昨今、同社では電子部品の商社から脱皮し、メーカー機能を合わせ持つ製販一体の強みを生かし、生存競争に勝ち抜く道を着実に歩んでいる。

取引形態はいわゆるB to Bである。お客様が国際競争に晒されているという中で、商社がメーカー機能を持つとは、どのようなことなのだろうか。

「これまで液晶を中心に、中国・台湾メーカーの株式の一部を取得し、役員として経営に参画し、エンジニアを工場に常駐させるなどして、アイタックブランド(自社ブランド)を展開してきました。時代の変化とともに家電メーカーが外資の傘下になったり、家電部門を外資に売却したり、業界にとって厳しい状況が今も続いています。当社は2018年からベトナムの工場で液晶の後工程の生産を行っています。前工程からの投資となると設備投資金額が大きく、事業化までには何年もかかるため、最後の工程となる液晶注入済のガラスに偏光板を貼り、検査して出荷する、というところから開始しています。将来的には、ガラスの上にICを搭載し、接続するための基板を圧着し、バックライトを組み込む工程まで行う計画があります。」

メーカー機能を持つ商社の強みは、アジアにおける国境を越えた分業によって面展開で商材を提案できることだという。

「2017年にタイに工場を作りました。それまでは外部の会社を使い、委託生産を行っていましたが、協力会社の敷地を借り、そこに設備投資を行い、自社生産できるようにしました。コイルやトランスフォーマーなどのいわゆる巻物部品をサブラインとして自社生産し、その他の部品とともに基板の上に実装してお客様に提供できるようになりました。我々がメーカー機能を持ち、お客様の工場の近くで生産する。この強みを生かし展開していくと同時に、基板実装で搭載する電子部品は中国で生産されたコストパフォーマンスの高い部品を提案する。つまり価格競争力があり、かつ高品質なメーカーの電子部品をキットで提案できるという点が非常に重要となります。」

ただし、単にコストパフォーマンスが良いというのではなく、高品質なものを安心して使っていただきたいということで、社長直轄の品質管理推進室を立ち上げたという。

「アジア系電子部品はトップクラスのメーカーといえども、日本の部品メーカーとは技術的に差がある場合があります。当社はそのギャップを埋め、安心して使っていただけるよう、社長直轄の品質管理推進室を2018年に立ち上げました。電子部品を採用する際にはお客様側で工場監査を行いますが、どこのお客様もマンパワー不足によって、初回だけになってしまうケースが多いです。品質問題などが生じた時、電子部品メーカーに対して品質指導や工程監査をする機能を当社内部に持っていることで、安心して採用していただくことができます。商品の価格だけでもなく、営業サポートだけでもなく、品質管理に関しても強化しているところです。」

中国を中心に、アジア、東南アジアに拠点を多く持つ同社にとって、コロナは大きな影響を与えたという。

「最初に中国で感染拡大していき、その後、日本を含め東南アジアにも拡がっていきました。最初は中国の部品メーカー、お客様の工場が止まり、次の段階ではマレーシアやフィリピンの工場も生産が止まりました。その後、欧米への感染拡大により最終消費市場がロックダウンしました。ゴールデンウィークあたりからは、お客様からの受注が激減しました。要するに、生産拠点だけでなく、最終消費地の動きが止まることで、多大な影響を受け、2020年の前半期はとても厳しいものとなりました。7月以降の後半期は持ち直してきましたが、前半のマイナスを補うまでに至らず、一年間を通して厳しい年となりました。」

コロナ後の商取引に関して、色々な変化が起きそうだという。

「今後、お客様が取引相手を選定する際は、自分たちの代わりに工場の現場に行き、対処できる機能を持つ電子部品商社が選ばれるのではないかと考えています。新製品立ち上げなど、今までであればお客様も自ら海外工場に出向き、スピーディーに対応することもできましたが、アフターコロナで、お客様自身が海外に出向くことを控えざるを得ない状況になれば、当然、我々のようにアジア各国に拠点があり、お客様の代わりに動けることが一つの選定要件になるでしょう。またリモートワーク中心となり、今までのように購買部隊に多くの人員を割けなくなるケースも想定されます。その場合、今までのようにたくさんの部品メーカーから購入するのでは無く、信頼できる電子部品商社、何社かに部品の調達をまとめて任せる方向になるのではないかと予測しています。その時こそ、我々の利用価値が高まるのではないかと期待しています。」

東南アジアからヨーロッパ、中近東、アフリカへ
グローバル化を実践し、その価値を世界に展開していく

格差問題は、ただ単に個人所得の格差だけではなく、企業間でも拡がっている。

「電子商社も年々厳しい状況になっていきます。大手はM&Aにより規模を拡大する一方、中小は後継者問題も含めてかなり厳しい状況にあると思います。弊社は拠点が海外にあり、アジアのコストメリットを利用した点では強みがあります。しかしながら、これまでは家電中心のマーケットでアジアベースに展開してきましたが、車載関連や産業機器関連はあまり強くありませんでした。逆に言うと、そこをしっかりやっていくことで、更に発展していけるのではないかと思っています。ただ、自社だけで拡大するには時間を要するので、パートナーと組んで強化していきたいと考えています。一緒にやってお互いに発展できるような組み合わせもあるのではないかと思います。」

同社で働く従業員の国籍は8ヶ国にも及ぶ。今後ヨーロッパや中近東、アフリカなどアジア以外の地域に進出しようとする時、その中心で動くのは、実は日本人ではなくタイやマレーシアのアジア人部隊だという。タイやマレーシアに進出している欧米企業に対して、同社のアジア系社員がアクセスし、積極的にビジネスを作る動きを開始しているのだ。また、従業員数は2010年の放送時では100人にも満たない規模であったが、現在では400人を超える規模になっている。その中には多くの女性従業員も在籍し、取締役を筆頭に多くのアジア人女性マネージャーが在籍している。多様化や多様性が謳われる世の中において、真っ先にそれらを実践し、結果を残し、着実に成長を遂げている企業だと言えよう。「中国を含め、アジアの人たちとの強固な信頼関係を作り、事業を発展させていく喜びを共有していくことが肝要。」という。他社にはないユニークさと内に秘めたグローバル戦略で、今後の展開も期待される。

業界一幅広い港湾オペレーション。関東一円の人々の暮らしを支える港湾運送事業の精鋭たち。

コンテナ船・港湾運送業界、激動の20年
競争原理に晒されながら、統廃合の波に打ち勝つ

1934年、大東運輸株式会社を設立し、川崎汽船株式会社の京浜港における総代理店として港湾運送事業をスタート。高度経済成長とともに業務を拡大し、1993年株式会社ダイトーコーポレーションに社名変更。その後、アジアを中心に海外展開するなど、意欲的に事業拡大してきた。グローバル競争が叫ばれる中、2008年のリーマンショックにて業界が激変。2021年、創業87年を迎え、変革の渦中にある同社。今もなお、関東4351万人の生活を支える港湾運送事業を中核に据え、インフラ関連事業のプロとして使命感に燃えている。

2002年中国がWTOに正式加盟し、世界のコンテナ貨物の荷動きは毎年二桁増を記録。世界中のコンテナ船社は荷量増加に伴いフリートの拡充と大型化を図ってきたという。

「海運というのは昔から世界的にグローバルに開かれた世界で規制がほとんどなく、完全な国際的自由競争の世界です。2002年に中国がWTOに加盟して以降、物流が増加。併せて貨物船の大量発注が起こり、船会社が発注した船舶はバックオーダー(入荷待ち)となりました。バックオーダーは2年分となり、2008年のリーマンショックの時もその傾向はまだ続いていました。リーマン以降は、アジアー北米大陸間、アジアー欧州間の荷動きが激減し、バックオーダー2年分がさらに需給ギャップを拡大し船会社を圧迫する結果となりました」
 

その後、船会社は発注を控え、船腹の伸びは緩やかになり、激減した荷量は徐々に回復したという。ただ、ギャップは埋まりつつあるものの、オーバー・トンネージで運賃が下落し、船会社の体力が疲弊したという。

「近年、グローバルなコンテナ船市場において、大きな船会社がどんどん周りを飲み込みながら大きくなっていくというような合従連衡が起こり、日本の海運会社三社(川崎汽船、商船三井、日本郵船)もこのままでは太刀打ちできないということで定期コンテナ船事業を統合し、あらたに『Ocean Network Express Pte. Ltd. (通称ONE、本社シンガポール)』を設立しました。統合前は世界で10位以下だったものが三社統合し、それでもようやく世界第6位です(運航船腹量138万2000TEU、航隻数は256。グローバルシェアは約7%:ロイター通信より)」

同社は元々、川崎汽船の子会社。東京都と横浜市から川崎汽船が借り受けたターミナルのオペレーターとして、東京湾の大井コンテナ埠頭と大黒ふ頭でサービスを提供している。統合した二社にもそれぞれターミナルオペレーターがいて、これまでは親会社を通して間接的にサービスの競争力や安全性や効率性が親会社のコストの一部として問われてきたという。

「2018年の三社統合以降、弊社のサービスそのものが表の競争原理に晒されました。今までのように、自分の親会社を見ていればよい環境ではなくなり、三社統合の新会社一社に対して、オペレーター三社がサービス競争の立場に置かれ、品質を比較されるようになりました。中核事業はコンテナ・ターミナルオペレーション事業に変わりないが、環境が激変し、淘汰の可能性も含んだコンペティションの中で、私たち自身が変わっていかなければいけないという危機感を持っており、現在、能動的に自己改革をしようと取り組んでいる最中です」

ただ、港湾運送事業は多くの作業が許可制であり、国土交通省から許可を受け港湾運送事業を営んでいる以上、許可のない国内エリアでの事業展開は不可能だという。

「港湾運送事業法のもと東京湾での事業許可を受けている当社は、東京湾以外での事業展開ができません。地方からの人口流入もあり、関東エリアに限って言えば、少子高齢化の影響はあまりなく、幸いなことに東京を中心とする首都圏の経済規模は当面維持されるとみていますが、今後IT化やDXによっていくら経済規模が拡大し情報価値が上がったとしても、人口が今より増えないことには既存事業の拡大はありません。人口増が見込めないということは物理的に貨物量が増えないということであり、そこで頭打ちということです」

変化の激しい時代に新しい分野に進出する時間はなく、かといって手っ取り早く同社のスキルを生かそうと思っても、東京湾以外の国内に進出するのは難しい。

「これまで培った我々の経験やバリュー、ノウハウは海外で生かすしかありません。今後発展すると思われるエリアと言えば東南アジアです。すでに私たちはフィリピンで倉庫と陸送と通関を担う事業を展開しています。他にも、川崎汽船が展開するアジア地域に補完する形で人材提供しつつ、地元の人脈やネットワークを構築すべく鋭意努力しています」

他社二社にはない豊富なメニュー
船社港運の強みを最大限に生かしていく

統合した二社にも同じような港湾運送事業の子会社があり、コンテナ・ターミナルのオペレーションをやっているが、同社は事業内容の種類が幅広く、そのノウハウは海外でも生かせるという。

「弊社は港湾において必要とするサービスは全て外注せず自社で賄ってきたので、蓄積された一人当たりのノウハウも幅広く、海外でも通用すると思います。例えば、車両運搬専用船の荷役やタグボートのサービスや船舶の入出港を代行する代理店もやっていますし、倉庫や通関業はもちろんのこと、大型タンカーに必須の消防警戒船サービスも弊社で行っています。これらのノウハウがあれば、海外でその国の港湾建設が行われ、入港や荷役など港湾オペレーションに関する全ての事業の募集に手を挙げることができます」

港湾運送事業にはスーパーバイザーやフォアマンといった職種があるように、実際にはマネージメント業務であり、現場作業とは別という二層構造なのだが、一纏めに「港で働く仕事」とみなされてきた。まして、就活生にとって「海」や「港」や「コンテナ貨物」関連のキーワードで同社のところまでなかなかたどり着きにくいのだそう。ただ、松川社長いわく「前回、取材頂いて以降、面接に来られる学生さんは取材内容を基によく研究されていて、非常に助かっています」と言う。同社は、同業他社にはない幅広い知識や経験を得ることができ、人々の生活を支えるインフラ事業に携わる責任感ややりがいも感じることができる港湾運送事業会社であることは間違いない。培った経験やノウハウは、過当競争のグローバル社会においても必ずや生きてくる。是非「海」や「港」に興味のある方は同社までご一報を。

ドキュメント管理のスペシャリスト。企業が推進するDXを文書情報管理の側面から支援する。

情報の資産価値を高める電子化事業
『記録の保管(アーカイブ)』から『デジタル化による情報の活用』へ、企業のDX推進を支援

「情報を後世に遺す」ことを創業理念とし、1967年に、企業の書類をマイクロフィルムに撮影する事業から創業。今日に至る半世紀の間に情報の量や形が大きく変化し、これに伴い、現在は書類の電子化をはじめ、文書情報の課題解決に取り組み、あらゆるビジネスプロセスをデジタル化により支援する。

これまで書類のマイクロフィルム化や電子化は情報を記録し保存するためのサービスだったが、現在、情報化社会の進展とともに、そのデータを活用することに価値を見出す企業が多くなってきているという。

「例えばマーケティングや商品開発分野を担当するお客様では、市場のさまざまな情報を文字データ化し、多角的に分析することで市場動向の把握や、新しい商品開発に利用する。また、製造業の設計や開発の分野では、図面や製造情報をマイクロフィルムや画像といった単なる記録された平面情報から、その情報をデジタル化し体系化することで過去情報の活用による製品のメンテナンスや、そこから得られるノウハウを新しい機械やシステムの開発に利用することができる。つまり、私どものお客様がこれまでに蓄積された情報を活用することで、その先のお客様に新しいサービスを提供するケースも増えている。このようにデジタル化により情報をアップデートしていくことによって、より高度な技術情報の価値化が可能になる。」

現在は電子契約のトレンドにより、契約管理の課題である過去の書面契約書との一元管理や検索時間短縮も、書面のデジタル化で情報連携を可能にすることにより役に立っているという。また、企業のコア業務注力によるBPOのマーケットは広がり、業務プロセスの効率化は加速しているという。

「労働人口が減少しているなか、本業に徹したいということで、業務のアウトソーシングが加速している。特に今回のコロナでは、職員が事務所に行って業務を行うのではなく、在宅ワークを行うことで、自分たちの業務プロセスを見直すきっかけにもなっている。そして、無駄な部分や自分たちでやらなくてもよい部分は外注することで効率化することができる。特に自治体、行政関係はこのコロナ禍においても住民サービスを行っているが、かなりハードワーク。個人情報以外のプロセスを外注化することで個人個人の負荷をできるだけ軽減する方向にある」

ここ最近、行政との取り引きが増えてきているという。

「2009年リーマン・ショック後の経済対策としての定額給付金業務や、消費税増税の際の緊急経済対策など、以前から行政との取り引きはあり、現在では全体の4割を超える。しかし、それは元々、弊社が民間で培ってきたセキュリティ面での実績や品質の向上が結びついたものではないかと思う。一過性の取り引きで成り立つ事業ではなく、重要情報という資産を扱う関係上、お客様との継続的な信頼の上に成り立っている。その意味では、クリティカルな情報を扱うので、安請け合いはできない。ただし、地方自治体も含め、需要は多いのが現状」

コロナによって働き方を変えざるを得なかったが、業務プロセスを見直すきっかけでもあったという。

「緊急事態宣言直後から2020年の夏までは厳しい状況だったが、今は情報を日々活用する時代でもあり、生きた情報は止まってしまうと困るので、思ったほどのダメージではなかった。実際、デジタルトランスフォーメーションが進んでいるので、紙媒体だけではなく、すでに電子化された情報が行き交う場面が多い。今後さらにDXが加速し、我々がその支援をしていく。このままデジタル化が進めば、デジタルデータのやり取りで効率化された場面において、我々がより支援できるシーンが増えるのではないかと考えている」

電子化した情報の価値をさらに高め
企業の顧客価値向上を支援していく

これまでは取引先の業務の一部分を切り取ってサービスを提供していたが、これからは情報が発生した時点から、その情報の価値を上げていくという視点で取引先と繋がっていきたいという。

「これまでなんとなく慣例化した一連の業務が、コロナにより在宅を余儀なくされたことで見直される機会となったが、自分たちだけではその課題に対する改善点を発見しづらい。どの部分をBPOすればよいのかを我々が『見える化』する。企業の情報価値を可視化し、それを高めていく方向で提案していきたい。お客様の業務を俯瞰し、価値化提案を通してサービス全体をデザインしていく」

世の中のさまざまな「距離間」、物理的距離の確保に対して、心理的距離の接近の重要性といった変化に対応すべく、従業員には「人間力」向上が求められるという。

業界資格の文書情報管理士の資格取得はもちろん、個々の「人間力」を上げることでお客様との距離を縮める。それにより組織の強化が図れるという。品質への信頼に関わる情報セキュリティは重要なので、そのトレーサビリティをしっかりしておくこと。今後はもっとセキュリティを強化していかなければならない時代が来るという。

「これからは、何百万枚の紙の資料を電子データ化してほしいという顧客ニーズがあったとしても、ただ単にデータ化するのではなく、対象となる情報を業務の流れの中で捉え、流れの中にある無駄を洗い出し排除することで、お客様に本来のデータの利用価値に気付いていただく。そして本来のデータを抽出し、整理、活用していただくことで顧客価値を高めていただく、というコンサルティング能力を養っていくことが今後さらに重要になってくるのではないか」

組織は個々の集まりである。ゆえに個人個人の「人間力」を上げること。色々なことに興味を持ち、チャレンジしていく。幅広い知識の吸収によって、多角的な視点で、多様な発想を持つことができる。従業員それぞれの夢の実現とともに、一つの組織としての魅力を見出していきたいとのこと。情報というセンシティブな資産価値を扱う会社として先を見据えるだけではなく、自らの足元から見つめていく。

安心安全な社会を支える。
検査・計測・制御のプロフェッショナル集団の技術力。

五輪に向けた多種多様なセキュリティ関連検査装置と
コロナ渦における体温計測機器リリースのスピーディな対応

1974年に石川島播磨重工業株式会社(現IHI)より検査部門が分離独立、石川島検査サービス株式会社としてスタート。その後、石川島計測サービス株式会社と合併し、石川島検査計測株式会社となる。また、IHIの電子機器事業部門や研究開発部門など、主にIHIにおける研究開発部門の分離・事業移管・統合などしながら、2008年に今の株式会社IHI検査計測に社名変更。2013年IHIエスキューブより制御システム事業の譲渡を受け、現在の体制になる。多様な業種に広範囲に検査・計測・制御の技術提供を行っているプロ集団である。

今やセキュリティは世界各国が抱える重要な課題とも言われる一方で、欧州には移民問題などがあるものの、世界的には人・物・情報などのグローバル化の流れは避けられない。国際化に伴う安全性の担保はどの国も喫緊の問題となっている。

「2015年以降の変化でいえば、セキュリティ事業分野においては、五輪を契機に伸びることは事前に分かっていましたので、セキュリティ関連検査機器を増やし、現在、多くの設備のラインナップを揃えております。弊社の『X線CTスキャナー』は、これまで2次元の仕様から3次元画像で瞬時に解析が可能になり、五輪後も需要が見込まれます。ハンディ金属探知機や爆発物検査装置など空港内でよく使われるものや、ボディスキャナ装置といって、空港等で旅客が爆発物や銃器、刃物等、持ち込み禁止物を所持していないかをミリ波で検査する機器なども提供しております」

2020年2月頃から徐々に感染拡大していったコロナ渦において、同社は4月には体温計測器をリリース。そのスピーディな対応は目を見張るものがあった。

異常体温スクリーニング FeverCheck

「弊社は『FeverCheck』という体温スクリーニング検査機器を2020年の4月に全速力でリリースしました。緊急事態宣言が解除され、各企業が自粛解禁となり、出社する機会が増えたタイミングに販売が間に合い、順調に販売を伸ばしました。弊社の製品は、AIによる顔認識システムを搭載しており、高速で顔全体の温度を計測するなど上位クラスの製品で、現在、キッザニア東京様や横浜市立大学付属病院様など含め、多くのお客さまで導入いただいております。」

また、IHIグループにいながら航空事業関連は遠い領域であったが、現在、この事業領域に深く参入するため様々なメニューを用意しているという。

「航空エンジン事業関連については、検査の自動化装置の研究開発をIHIと一緒に3年ほど続けています。航空機エンジンの部品を自動で検査し、駄目なものをはじくという仕組みです。また,航空機エンジンに使われる材料は複合材料が多くなってきましたが、弊社は金属に関しての試験は長年経験を積んできましたが、新しく複合材料に関しては規格から整備して取り組んでいます。エンジン事業分野では、初めてIHIの呉工場(航空機関連)に検査業務として参入しました。」

幅広い技術分野をカバーする製品・サービス
世の中のスピーディなサイクルにIHIも含めた人的・技術支援で対応

インフラ事業の老朽化問題もこの国が抱える重要な課題だ。2028年には橋梁の50%が耐用年数50年を迎えるという(国交省調べ)。そんな中、同社は、このインフラ事業分野にも意欲的だ。

携帯型渦電流探傷装置 Mobile EDDy

「インフラ事業分野はなかなかハードルが高いのですが、現在鋭意努力しているところです。弊社の『Mobile EDDy』という携帯型渦電流探傷装置は、対象物に渦状の電流を流し、対象物中のきずによる電流の乱れをセンサーにより感知することできずを検出する小型軽量装置で、金属の表面の塗膜を剥がさずにきずを感知します。他社にはない製品なので、今後もっと期待できると思います。また、『レーザークリア』はレーザーで金属の表面をきれいにする装置で、元々インフラ向けに作ったわけではありませんが、現在これをインフラ事業に活用しようとしています」
 
 
気候変動関連事業分野についても、土砂災害時等に活躍が期待される「ロボQS」(バックホウ簡易遠隔操縦装置)をIHIからライセンスを受けて事業化したという。

「2019年にバックホウ(ショベルカー)の運転を遠隔で行う『ロボ QS』(簡易遠隔操縦装置)をIHI,国土交通省九州地方整備局九州技術事務所とフジタが共同開発。災害直後では、人がバックホウを運転すること自体が危険です。弊社の『ロボQS』は通常のバックホウであれば既存のものを改造せずに取り付けることが可能で汎用性が高いので,多くのお客さまから支持を得ています。また、制御事業分野では、この先DX(デジタルトランスフォーメーション)に向けて、弊社の技術とうまく掛け合わせていければ、新しい分野が開拓できるのではないかと考えています。現在すでに着手している部分もあり、今後さらに継続して進めていきます」

めまぐるしくスピーディに変わっていく現代において、意欲的に対応していく同社。「正確な検査・計測サービスを広く社会に提供し、安全な社会の建設・維持に貢献し、社会の発展に貢献すること」を企業理念に掲げる。柏﨑社長は「安心安全のために必要な検査や計測は細かく地味であってもしっかり継続していきたい」と言う。現場によってはいわゆる3Kのような厳しいところもあるという。しかし、同社社員一人あたり4~5個の検査計測関連の有資格者というプロフェッショナル集団は、自らの技能レベルを上げるべく日々努力し、各現場で検査監督業務を行い、安全や安心を提供している。そのおかげで私たちは安心して安全な社会を生きていると言えるのではないだろうか。

人々の命を守る地盤改良工事専門会社。東日本大震災以降、高まる評価ととも地域に貢献。

東北の「命の道路」をつなぐ地盤改良工事
信頼と安心の小野田ケミコの豊富な実績と優れた工法が地域を守る

1964年に小野田セメント(株)(現太平洋セメント(株))のケミコライム事業として創業。多くの実績を積み、1983年に分離独立し小野田ケミコ株式会社として設立。東日本大震災では、復旧・復興のため東北地方の沿岸部などの地盤改良を手掛けてきた。あれから10年、徐々に復旧・復興していく中、多くの大手ゼネコンはすでに規模を縮小しているが、復興の現状には地域格差があり地方ではまだ工事が続いている。

地域の生活を支え、命を守る道路の地盤改良工事だけでなく、壊滅的だった漁港護岸工事や堤防工事も手掛けてきたという。

「東日本大震災から約10年を経て、被災地復興のリーディングプロジェクトとして整備が進められてきた、仙台から八戸までの『命の道路』三陸沿岸道路が今年度中には開通する予定です。また、震災直後の漁港では冷凍設備が壊滅的な被害を受け、地域の暮らしを支え命を守るには、まずは冷凍設備を設置しない限り、人は戻ってこない。そこで、護岸を嵩上げした場所へ冷凍設備を設置する計画があり。ゼネコン含めて、我々はその復興事業に参加したのが始まりです」

宮城県気仙沼市、三陸沿岸部等の地盤改良工事を手掛け、さらには地元自治体と地元業者と連携協力し、南三陸の復旧復興に参加。これからも県民の命を守っていくという。

「第2期 復興・創生期間になり、大型工事も終わり大手ゼネコンが手を引く中、環境的に難しい部分や狭隘な部分などは復興が遅れている地域があります。地元ゼネコンも人が集まらず対応に苦しんでいる中、当社は地元業者と協力して現在復興に取り組んでいます」

地震被害も甚大だが、最近では台風被害による地盤改良工事の仕事も増えているという。

「近年大型化している台風に対する対策で河川の堤防を補強する仕事が増えてきている。災害のレベルがこれまで以上に上がってきており、土のうを積むだけの応急対策では防ぎきれないため、強固で越流を防げる高さの堤防を設置する必要がある。一昨年は関東でも台風による水害が発生しました。さいたま市見沼区の湿地帯では地盤が緩く、水害対策を兼ねた調整池があるが、これまでのような調整池の規模では通用しなくなってきている。今まで埼玉県での災害対策の仕事はあまりなかったが、最近は自然災害の被害がこれまで以上に甚大で、地盤改良工事の仕事が増えてきています」

新工法の開発とともに、新管理システムの開発に注力
事業範囲を東南アジアまで広げ、アジアの人々の命を支えていく

業界内から優れた工法と高い技術や豊富な実績で高く評価されている小野田ケミコ。最近では、新管理システムの開発に注力しているという。

「今は省力化やICT関連が主流で、新管理システムによる『見える化』に注力している。『ピクチャーナビ』や『ピクチャービュー』というナビシステムによって、地盤改良においても、3D画面の図面を用いるようになってきている。見えない地盤を『見える化』することで、弊社のセールスポイントの一つになる。もちろん、多様化するニーズに合った新工法の開発も新管理システムの開発同様に力を入れて行っていく」

地盤改良工事の現場では、人と接しないわけにはいかないが同時にコロナ対応も積極的に取り組んでいるという。

「リモート自体は10年前から導入している。テレビ会議システム導入により現場から人を呼ぶことをやめた。出張費など経費削減にもなる。WEB会議システムは、今年度最新のものに更新した。ただし、建設業が基本なので、部署によってリモートが可能な部署と不可能な部署がある。マスク着用、ソーシャルディスタンスを確保し3密を避け、検温や消毒はもちろん、時差通勤なども取り入れ、感染しない他人に感染させない様に努めている。」

コロナ後の事業展開や今後のビジョンについては、海外も視野に入れているという。

「東京都市圏に次いで世界2位のメガシティであるジャカルタにおける地下鉄の地盤改良工事など、太平洋グループとして注力していく。国内では、東北は地元業者に移行していく過程で縮小していくだろう。東京、大阪は大きく落ち込むことはなく、特に大阪は万博後にIRが決まれば、大きなプロジェクトも進んでいくだろう」

同社では、女性が働く環境整備にも余念がない。最近では女性の建設業界進出に伴い、女性が働きやすい環境づくりも整ってきている。井上社長は「ぜひ、現場に出て、汗をかきながら働く素晴らしさを若い人に感じてもらいたい」と語る。若い力とともに、まさに人々の命や生活を支え守る実績豊富な地盤改良専門会社は、国内外に向けて新たなチャレンジを続けていく。

総合食品卸売業から食品メーカーへ 健康志向の時代にマッチした商品開発で更なる事業拡大を

バジルシードドリンクでグランプリを受賞
ユニークな発想と柔軟な感性で商品をプロデュース

1992年総合食品卸マツバラとして創業、1994年アシストバルールを設立。以後、全国展開を果たし、商品ラインナップも拡充。2008年には京都大学と産学連携による業務提携を行い、業務の可視化(トランザクションの測定・分析)によるベンチャー経営支援の実証研究を行った。2014年「FOODEX JAPAN 2014」において「Sawasdee バジルシードドリンク ライチ」がグランプリを受賞。2017年、2018年にも同社商品が金賞銀賞を連続受賞した。

1994年設立当時と比べると、同社のスタンスは卸売業からメーカーに変わったという。

「12年前と比べると、現在弊社は卸売業というより、自社輸入を主とする工場を持たないメーカーとして、自社商品を作り、輸入し、販売する割合が大きくなっています。平たく言うと、商社からメーカーに変わったと言えるのではないでしょうか。「2014年3月に幕張メッセで行われた『FOODEX JAPAN 2014』で弊社商品『Sawasdee バジルシードドリンク ライチ』が『FOODEX美食女子アワード』のグランプリをいただいたことが契機となり販売数が伸びました。その結果、大手出版社から出版依頼を頂き、2016年に『アシストバルールの競争戦略~バジルシードドリンクはこうして生まれた~』を出版するに至りました」

卸売業からメーカーへ、比重の変化が結果としてマーケットや取引先にも変化を及ぼしているそうだ。

「現在は、全てを弊社がプロデュースし弊社のブランドとして展開しているので卸というよりはメーカーポジションに変わっていますし、取り扱い商品も7割ぐらいはメーカーとして自社輸入をして販売をおこなっています。また、主要な取引先は小売店であることに変わりはないものの、当時はディスカウントストアなどの一般的なスーパーの比率が大きく全国的に万遍なく取引させていただいていましたが、現在は、高級スーパーマーケットが販売先として多くなっており、エリアでいうと圧倒的に関東圏、東京の割合が増えました」

商品の大ヒットには女性スタッフや若い社員の力があるのだという。

「弊社の商品は美食女子と呼ばれるような女性に人気ですが、それは社内的にも女性の活躍がめざましく、商品開発などにも携わってもらっていることが影響しているのだと思います。若い人の感性で、別角度からの新しい視点で捉えたアイディアが次々と生まれてきています」

日本には世界各国の領事館があるが、商品を日本国内にどのように流通させればいいかというマーケットの知識は乏しい。そこにも同社商品のヒントがあるようだ。

「各国領事館からお声がけいただいた際は、同業他社が断るような商品でも前向きに検討させていただきます。商品を日本国内で販売したくて、流通ルートを持っていない等、そんな場合でも、こちらからアドバイスできることもありますし、いただいたご相談に対し、弊社のユニークな発想やセンスで対応できることも強みではないかと思っています」

バイタリティ溢れる若い力と女性の力
コロナ渦でもびくともしない三つのこだわり

設立以来営業スタイルは変わらないが、商品力も相まって取引先との信頼関係は無理なく築けるという。

「『電話営業』という営業スタイルは12年前からあまり変わっていません。強いて言うなら、販売する商品が変わっているだけです。商品開発や戦略など女性スタッフや若い社員に任せ、自由にやってもらっています。これまでの長いお付き合いの中で培った信頼関係に加えて、高級スーパーマーケットや大手コンビニエンスストアに弊社商品を置いていただいているということも、新規取引先の信頼を得る動機にもなっているかもしれません。業界内でも弊社は良い商品を扱っていると認知していただいていると思います」

メーカーとしての三つのこだわりのいずれか一つが欠けても売れないと松原社長はいう。

「基本的に、弊社の商品はナチュラルで健康的であることがベースにあり、加えて『ユニーク』で『ハイクオリティ』で『リーズナブル』であるという点が大事です。ここが一つでも欠けているとその商品は売れません。価格設定は重要で、仮に『ユニーク』で『ハイクオリティ』であっても高価であれば売れません。できるだけ多くの人に遍く弊社商品を楽しんでもらえるようにしたいので、その為の企業努力はしています」

卸売業からメーカーへの比重の変化はクレーム対応においても意識を変えたのかもしれない。

「お客様の信頼を得るために切っても切り離せない事がクレーム対応です。お客様のクレームは弊社への期待だと思っていますし、商品のファンの方からのご連絡だと思って対応しています。また中身を重視した本当に素晴らしい商品を提供することで、われわれの本気度が伝わるのではないかと思います」

同社は業績において、コロナの影響は受けていないという。しかも、リモート会議や出勤調整もスムーズに移行したという。

「ビジネス面に影響は受けていません。特に9月決算ではコロナの影響は見られませんでした。逆に言えば、コロナバブルもなく変わらず堅調で、昨年比で160%程度の伸び率なら、安定的な成長をしていると言えるのではないかと思います。また、そもそも電話営業主体でしたので、在宅勤務やリモートワークにスムーズに移行できましたし、現在では、社員が一日の目標を決め、仮に15時の時点で目標を達成したら帰宅してもよいことになっています」

同社の商品はとにかく中身重視で三つのこだわり「ハイクオリティ」「ユニーク」「リーズナブル」な商品をマーケットに届けることに尽きる。また、同社は従業員十数名という少数精鋭。自由闊達なパワーが生み出すオリジナル商品が多くの人の元に届く。同社がオンリーワン企業であることが結果としてさまざまなことに結びついていくというスタンスが素晴らしい。ユニークな発想とセンスを武器に、顧客の期待や商品のファンの声にこたえ続ける食品メーカーとして更なる事業拡大が期待される。