「新しいあたりまえの創造」に挑み、10年の年月を掛けて増収増益を実現したアイコン事業とは

放送15周年の特別インタビューとして、これまでに「賢者の選択」にご出演いただいた方々に、時代や環境変化への対応や展望についてお話しを伺いました。
(株式会社フォーバル 代表取締役会長 大久保 秀夫:賢者の選択ご出演 2005年6月放送)

モノだけを売っていてはダメになる時代
中小企業からなんでも困りごとを聞いて解決

「新しいあたりまえの創造」を掲げ、従来の企業とは大きく異なる事業を切り拓いてきた株式会社フォーバル。かつて、好きなメーカーの電話機を選ぶことができないのがあたりまえの時代に、大企業を動かし、風穴を開けて自らビジネスを生み出してきた。同社が次の「新しいあたりまえ」を探り出したのは、2005年のことだという。

「以前は情報通信コンサルタントとして、まだまだモノを売っている比率が高かったのです。コピー機やコンピュータ化によって、経営が変わります、これからは情報通信化が必要です。としきりに言っていました。当時は、自分たちが売りたいものに誘導して収益を得るのが主流だったのです。しかし、ITの普及によりモノの価値が下がり、モノだけを売っていてはダメになる時代がやってくると考えたのです。」

そこで発案したのが新たなビジネスモデルだ。

「アイコン事業を考えたのです。まず、お客様のところに行って知る活動につとめ、お客様が何に困っているのかを聞いてくることからはじめました。それが情報通信の分野ならば、当社で対応できますし、例えば、業務提携先を探したり、税務相談をしたり、相続問題などでしたら、当社が直接できなくても提携先のパートナーで解決できるのです。」

しかし、軌道に乗るまでの道程は短くなかった。

「そのための人員を全国に100人程度ノミネートしたのです。当初は収益が大幅に減少し、会社にとって大きな変革となりました。それでもやることは貫こうと考えたのです。経営者が動じたら社員はビビってしまいますから、腹を据えて勝負に出たのです。」

2年経っても3年経ってもブレることなく貫き続けたのだという。

「当初はお客様もモノを売りたいだけではないかと半信半疑でした。しかし、営業をせずに困っていることの解決に徹したのです。すると、次第にお客様から信頼をいただけるようになり、現在では相談件数が年間1万件を大きく超えるほどになりました。モノからコトへの転換。本当の次世代を担う経営コンサルタントになれたのが今なのです。ここまでガマンと試行錯誤を繰り返してきた結果です。10年経ってようやく定着してきました。」

増収増益になるまでの長い月日。どんな思いで継続してきたのだろうか。

「10年というと長いですが、今振り返るとあっという間です。始めた当初はいつになったら軌道に乗るか分かりませんでした。それでも続けたのは、モノを売っていてはいつかダメになるということが分かっていたからです。とにかくやり続けて、お客様のことを本当に考えた会社になろうという気持ちだけでした。お客様は千差万別です。なにに困っているか分からないのです。信頼関係を築けば、情報通信機器が必要になったときにも、当社に声を掛けてもらえるはずだと思いました。それでも、不安感は大きかったですね。」

競争相手のいない独自の事業として確立
中小企業にとって、なくてはならない存在に

すべてはお客様のため。そのためにとにかく向き合う。問題解決のため、全社を挙げて考えたのだという。

「経営相談、ビジネスマッチング、事業承継、などさまざまな課題を解決してきました。当社のお客様は中小企業ですから、コンサルティング会社との顧問契約を結んでいないところがほとんどです。悩みを相談する相手がいないのです。当社は愚痴でもなんでも本音を聞いてくれるという評価をいただきました。当社のように、どんな相談にも乗ってくれる会社は他にないのです。ですから、当社には競争相手がいないのです。」

半信半疑が自信に変わり。やがて自信は確信へと昇華した。

「この先、増収増益がいつまで続くかは分かりません。しかし、このトレンドは変わりません。なぜなら、お客様が次のお客様を呼んでくれるのです。銀行や大手のコンサルタントは助けてくれない。しかし、困ったときに親身になって解決してくれたというポジションができれば、中小企業になくてはならない存在になるのです。」

さらに次の「新しいあたりまえの創造」も着々と練られている。

「これから必要になるのは教育です。日本は少子高齢化を迎えます。アジアの優秀な人材が国内の企業で働ける仕組みを作りたいと考えています。また、環境問題も真剣にやらなければなりませんし、物価の高い日本ではなく、海外展開を図りたい企業を支援していきたいと考えています。」

アイコン事業と同様、10年間は力を入れていきたいという。そこには企業だけでなく、日本社会の課題を解決するコンサルティング会社の姿が予見される。

多様な設備を扱う総合設備エンジニアリングのプロ集団、個々の成長を支える背景に迫る

多様な設備を扱う総合設備エンジニアリングのプロ集団、個々の成長を支える背景に迫る。

東京支社
空調衛生技術1部 技術2課
武川 隼也
総務人事本部
人事部 人材開発課
池田 昂樹
ファシリティシステム事業部
プロジェクトマネージメント1部 エンジニアリング1課
大川 紗都子
 

東京支社 空調衛生技術1部 技術2課 武川 隼也

話しやすい職場環境に育つ優れた人材 責任ある仕事をやり抜いた達成感が励み

三機工業 東京支社 空調衛生技術1部 技術2課 武川 隼也

企業の成長を支えるのは優れた人材。躍進を続ける企業には、人が育つ環境がある。若手社員の声から、その秘訣を探る「成長企業の法則」。総合設備エンジニアリングの三機工業株式会社で働く、東京支社 空調衛生技術1部 技術2課 武川 隼也さんに聞いた。

課題解決のカギは図面ではなく、現場に余裕を持ってフォローできる人材目指す

設備関連の施工を手がける三機工業株式会社。現在、東京・日本橋の現場で施工管理に携わっているのが武川さんだ。

「施工をする上で、安全や品質、コストなどのさまざまな管理に取り組んでいます。当社だけでの施工ではありませんから、協力会社の工程管理にも気を配っています」

空調衛生技術1部は、ビルや大学、病院などの新築、改修工事における空調、衛生など、設備工事を担っている。

「私より30歳くらい年上の社員から、下は20歳台まで幅広い年齢層で構成されています。上司は、年が離れていても、とても話しやすいです。事務所では日々の業務についていろいろなアドバイスをもらったり、社会人の先輩としてプライベートな相談にものってもらっています」

長い経験を積み重ねてきた上司のアドバイスには重みがある。そこから得られたのが、コミュニケーションの大切さと、なによりも現場を優先する考えだという。

三機工業 東京支社 空調衛生技術1部 技術2課 武川 隼也

「当社の社員と協力会社、お客様の認識には差が生じることがあります。こうしたときには、まず一緒に現場を見ていただき、そこから答えを導くことが大切です。図面を見ながら解決しようとするのではなく、実際の状況を確認しながら話すことで、互いの理解が深まるのだと分かりました。これは、毎月1回開かれるグループ会議の場で上司が言っていた言葉です」

一つひとつ学んで習得したスキルと、少しずつ生まれた自信は、仕事を続けていく上で、自己を高めるやりがいにもつながっていく。

「当社では若い社員にも責任のある仕事が与えられます。お客様との打ち合わせや協力会社の仕事を管理するなど、重要な仕事を任せてもらえる環境が整っています。ときには自分の未熟さから問題が発生することもあるのですが、助けられながらもやり抜いたときには達成感があります。失敗を繰り返すことなく、次はこうやってがんばろうという意欲もわいてきます」

武川さんに5年後の自分を想像してもらった。そこには、現場所長としてより大きな責任を背負いながらも、現場を的確に取り仕切る姿が浮かぶという。

「これまでは精一杯、がむしゃらに仕事に取り組んできました。今後は少しずつ余裕を持って仕事に取り組めるようになりたいと思っています。私が上司から受け継いだ言葉を後輩のフォローにも生かし、ともに大きく成長したいですね。所の柱として、しっかりまとめていける人を目指しています」

そのために必要なのは、より深い知識と円滑なコミュニケーション、そして余裕の持てる心ではないかという。はっきりと見えてきた未来に向けて、企業と自己の成長は続いていく。

創業から一切ブレることなく発毛一直線を貫く スマホを使った『自宅でリーブ』サービスを新展開

放送15周年の特別インタビューとして、これまでに「賢者の選択」にご出演いただいた方々に、時代や環境変化への対応や展望についてお話しを伺いました。
(株式会社毛髪クリニックリーブ21 代表取締役社長 岡村 勝正:賢者の選択ご出演 2005年1月放送)

開始から18回を迎える発毛コンテスト
脱毛に悩む人々に発毛の喜びを届ける

独自の発毛理論に基づいて、一人ひとりの状況に応じた専門のケアで発毛を「実感」できる株式会社毛髪クリニックリーブ21。その理論を生み出したのが、岡村勝正氏だ。

「当社は1976年の創業以来、変わることなく発毛一直線です。ブレることなく一貫して発毛に取り組んでいます」

宣伝広告が営業そのものという言葉の通り、同氏が自ら広告に登場し、アピールする姿は印象的だ。

「脱毛に悩む方や、発毛に取り組むことは、どうしても恥ずかしさが伴うという方が多くいらっしゃいます。『脱毛に悩む多くの人々に発毛の喜びを知ってほしい』というコンセプトで、毎年開催している当社主催のコンテストも今年で18回目を数えました」

AGA治療に勝るメリットをアピール
スマートフォンのアプリを使った新サービス

発毛により、明るく元気な姿を取り戻す喜びを共有しようという同社の取り組みは、全国の同じ悩みを抱える人々に共感と勇気を与え続けている。一方で同社にとって強力なライバルも登場した。

「男性型脱毛症(AGA)向けの医薬品です。脱毛に対して、病院で治療するという流れが新たに誕生し、新規顧客の獲得にかげりが表れました。しかし、当社の事業とは方向性の異なるもので、発毛理論はさらに研鑽を重ねており絶対の自信を持っています。また、治療薬は使い続けなければ効果を持続できないのに対し、当社のサービスは実感できるまでの期間は要するものの、発毛後には費用を軽減できるというメリットがあります」

実際に、治療薬を試した後に、同社のサービスを受けるようになったというユーザーも多いという。

「また、料金が高い、時間がかかる、どうしても敷居が高いなどと感じられる方に向けた新サービスも年内にスタートします。従来は、熟練の技術を備えた当社スタッフによるトータルケアを基本にしていましたが、こうしたケアを除いて費用や時間を軽減する取り組みです。スマートフォンのアプリを使った『自宅でリーブ』です。お客様の不安を解消しながら、当社のシャンプーなどをお使いいただくプログラムです」

同社では手軽さを前面に普及を図り、発毛を実感できる新たな手法を構築していく方針だ。

「さらに今後は、抗がん剤の副作用などで髪を失った方へのケアなどにも、積極的に取り組んでいきたいと考えています」
毛髪の悩みは日本国内だけにとどまらない。同社は海外支援活動なども含め、国外での本格的な展開も視野に入れて取り組んでいく考えだ。

常識破りのイノベーションで経営刷新 斜陽化のクリーニング業に成長戦略

常識破りのイノベーションで経営刷新
斜陽化のクリーニング業に成長戦略

ぜひ取り上げたい話がある。チャンスがあって最近お会いした東京の下町でクリーニング業を営む株式会社喜久屋の中畠信一社長の常識破りの経営手法がそれだ。時代先取りの問題意識や果敢な経営行動は見事で、肥大化した組織がネックになってリスクをとろうとしない大企業の経営者から見れば、学ぶ点が多いように思う。

意表つく東京の喜久屋社長中畠さんの経営発想

クリーニング業界は、理髪店などと並んで家族経営の中小企業が多く、過当競争体質から安売り競争に追い込まれるネガティブ経営が多い。ところが中畠さんは状況に流されて斜陽産業化してしまう既存の経営に反発、自らイノベーションに大胆チャレンジして成果をあげた。今や成長市場アジアでもビジネス展開しているからすごい。

中畠さんの取り組みで常識破り経営と思ったことが、いくつかある。中でも際立つのは「eクローゼット」システム。かさばる冬物オーバーコート、スーツなどをクリーニングに出したいと電話やインターネット連絡してもらえば、集荷に参上し、クリーニング料金だけで半年間、喜久屋が品質管理する収納倉庫で無料預かりする、というもの。

30人の社長輩出を目指し、
さまざまな事業に領域を拡大

放送15周年の特別インタビューとして、これまでに「賢者の選択」にご出演いただいた方々に、時代や環境変化への対応や展望についてお話しを伺いました。
(ドクターリセラ株式会社 代表取締役 奥迫 哲也:賢者の選択ご出演 2009年2月放送)

レストラン、フィットネススタジオなど、次々と関連事業の立ち上げに成功

全国約3,000店舗のエステサロンで採用されているエステサロン専売基礎化粧品など、若々しく透明感のある素肌を追求し続けるドクターリセラ株式会社。同社は美と健康と地球環境に貢献する製品づくりをコンセプトにした総合化粧品メーカーだ。

【リナーシェ】
大阪新福島徒歩4分 堂島フォーラム ほたるまち
毎日、食を大切にする方の予約が絶えない人気店に

大きな成長を続けながら、増加する社員と共通の認識を図り、価値観を共有しながら経営改革に取り組んでいきたいというのが奥迫氏の考えだ。その従業員数は、10年で約4倍の500人を超え(パート・アルバイト含む)、売り上げは倍増だという。

「化粧品づくりのコンセプトはそのままに、関連事業などを立ち上げて領域を拡大しています」と代表の奥迫氏。

そのひとつがレストラン事業だ。

同氏は「私自身が約15キロのダイエットに成功したことがきっかけです。外食ではどうしても健康や体重を維持できるメニューが少なく、それならば自分でレストランを作ってしまおうという発想でした。食材にこだわり、糖質が少ない赤身の肉や大豆パスタなど健康志向のレシピがお客様から好評をいただいています」と言う。

【ブラッスリーリナーシェ】
大阪堀江にある2号店 ティファニーブルーの店内
おしゃれで健康を気にする方に人気のレストランに

一つのことに固執せずに、来るものに対して拒まず、流れに逆らわないようにしていきたいという、同氏の方針は事業の多角化として具現化した。この他にも健康に関連する事業として、社員からの提案によって生まれたフィットネススタジオを26店舗(2018年11月現在)展開、2019年2月には30店舗になるという。また機能回復型デイサービス事業を8拠点で展開、その業容は幅広い。

「24時間フィットネス事業をフランチャイズで展開し『誰もが健康的に暮らせる、心豊かな社会を実現する』為に、これからも多店舗運営を行いドクターリセラの『健康』分野で社会に貢献して参ります」

 

30人の社長をつくる

「社内から30人の社長を輩出することを目指しています。私自身がそうであったように、起業して社会に貢献したいという思いを尊重し、サポートができればと考えています」

既に社長や決裁を任せている社員が、4人誕生しているという。

「企業はやはり、人づくりが重要なのです。この会社に務めてよかった、自分が成長できたと言ってもらいたいのです。目標を持って、幸せの輪が広がっていけばよいと思います」

自社製品の物流を手がける流通企業や、蜂蜜、桑、生姜などの原料を供給する農業生産法人など領域はさらに広がる。
同氏が培ってきた優秀な社員を育成するノウハウと、社員教育で事業の成果を上げるポイントは、事例とともに綴り「社長の仕事は人づくり」(あさ出版)として上梓。同書では、高い顧客満足を実現し、社員、社長、会社が成長する方法を紹介している。

一方でエステティック業界は変革のさなかにあるという。

「高額な費用やその料金体系が社会問題にもなりました。こうしたエステティックサロンは淘汰される傾向にあり、業界の健全化が図られています。女性の約80%にはエステを利用したいという潜在的な需要は高く、今後は市場が復調する傾向だと考えています」

インバウンド需要も高まっている。モノからコトへという流れは、エステにも及ぶ。

「当社の化粧品はタイなどの海外の日系百貨店でも注目されており、香港、中国、ASEAN諸国、UAEなどにも広げていく方針です」

同氏が目指すのは100年続く企業。その実現のためには、決して自分自身だけで突っ走るのではなく、同社を支える人材と価値観を共有しながら、じっくりと事業を展開していく。

お客様第一主義、現場第一主義で、高齢者から障がい者、保育へと事業領域を拡大

放送15周年の特別インタビューとして、これまでに「賢者の選択」にご出演いただいた方々に、時代や環境変化への対応や展望についてお話しを伺いました。
(株式会社ケア21 代表取締役社長 依田 平:賢者の選択ご出演 2008年8月放送)

全国395事業所、利用者は19,500人に事業拡大
企業理念を前面に推し出して人材の確保と育成を

全国に訪問介護ステーション、グループホーム、デイサービス、介護付き有料老人ホームなどを展開する株式会社ケア21。放送当時には全国に70カ所の訪問介護ステーションを設置し、約7,000人の利用者だった。

「現在は、395事業所で、利用者は19,500人に増えています。やはり人を育てる仕組みができたのが大きいと思います。これにより多店舗化が進み、福岡、仙台、広島など各地にいろいろな事業所を展開できたのだと思います」

企業の成長を支える人材。その確保は業種・業態を問わず困難な状況が続いている。

「エリアによって人材確保の難しさは異なります。大阪などは比較的人が集まりやすいのですが、名古屋は苦労しています。その中でも、まず当社の経営理念、これから進む方向性を理解してもらうことが大切だと考えています。求人誌・求人サイトでも、どんな職種のスタッフを募集しているかということだけでなく『人を大事に、人を育てる会社』という理念を前面に推し出しています。この部分はブレることなく続けています」

同社の離職率は約16%だという。業界全体では20%を超える状況にありながら、これを大きく下回っている。ここからも、企業の姿を正しく理解し、ともに成長していこうという志を持って応募していることが伺える。

優秀な人材の引き留め策として、5アタック制度を導入。離職を考える社員に5回の面談を行っており、最大5人のスタッフが相談にあたっている。また、離職後にもスムーズに復職できるUターン制度もある。他社を経験した後に、やはり魅力ある企業であることを認識し、戻ってくる人も多いという。これは社内の士気向上にもつながっている。

放送当時には、ケアスタッフとは別に営業を配置することで、事業としての会社の発展を図っていた。

「お客様第一主義、現場第一主義をより強固に貫く上で、社内の体制を改めました。やはり、現場を知っていることが大切なのです。現在は現場の社員が自ら営業に取り組むというスタイルに変更しています。現場と営業との間に生じがちな認識の違いや温度差をなくすことでスムーズに進行できています」

この柔軟な改革も、同社をより大きな発展へと導いていると言えるだろう。

「事業所のリーダーとして活躍するためには、人間力や技術もあるのですが、やりきる力として営業力も求めています。当社のよいところをしっかりアピールできる力を持っているかが問われるのです」

 
介護事業において、営業力の高さは業績に大きな影響力を持つのだという。

「外部のケアマネージャーに対して、当社ならこのようなご要望にも対応できます、こうしたサービスも提供できますと、積極的にアピールすることがご利用者の拡大につながっていきます。お引き受けした以降も、ご利用者の状況がどう推移しているか、毎月きちんとお伝えして相互理解を深めています」

保守的にならずに攻めの経営を貫いて
高齢者向けの食事配達事業もスタート

こうした信頼感が、次のビジネスチャンスを着実に呼び込む方策になっている。ここには、「待っているのではなく、積極的に営業する経営」という、同氏が当初から貫く理論が生きている。

「攻めないと守ることもできないのです。事業経営には、常に攻めていく姿勢が大切です」

大きく貫かれた企業理念と柔軟な変革は、新たな事業領域への拡大にもつながっている。

「当初は高齢者を対象とした事業に集中していましたが、現在は障がい者や保育にも力を入れています。これまでの事業とその広がりによって、当社は、総合福祉企業になりました」

2000年当時、介護保険に関わる費用は3兆円だったが、現在では10兆円を超え、2025年には20兆円から25兆円と言われている。

「医療や自動車産業に匹敵するような基幹産業になりつつあります。将来的には海外にも繰り出していける産業です。教育の仕組みを海外で使っていただいたり、技能実習生の受入や現地に戻る際のサポートも行っていきたいと考えています」

今後はこうした海外からの人材の力がより必要になり、介護の現場は大きく活躍できる場でもあるという。

同社は2018年3月から、高齢者向けの食事配達事業もスタートした。

「高齢者の方は温かい食べ物と温かい心のサービスを求めています。そこで、当社の施設を使って調理し、近隣のエリアにお届けしています。さらに玄関先で渡すだけでなく、ご家庭の皿などに盛り付けて、10分間滞在するのです。その間に話を聞いたり、片付けや簡単な洗い物をするなどのサービスを提供しています。移動もあるので、1時間に4軒しか回れませんから、従来より料金は高くなりますが、ほとんどの方が継続され、高く評価いただいています」

現在は新宿区と江東区で展開し、既に約900食の利用者があるという。今後10,000食規模に拡大していく方針だ。

同社はこれからも、積極的な攻めの経営で自ら市場を切り拓いていく。

ようやく加速してきた日本市場の伸展に大きな期待。シンガポールに居住し、事業拡大を狙う

放送15周年の特別インタビューとして、これまでに「賢者の選択」にご出演いただいた方々に、時代や環境変化への対応や展望についてお話しを伺いました。
(株式会社ブイキューブ 代表取締役社長 間下 直晃:賢者の選択ご出演 2010年2月放送)

日本マーケットの成長は遅かったものの
過去2年間で急速に成長する兆しを見せる

Web会議・テレビ会議システムのパイオニアとして、業界を牽引する株式会社ブイキューブ。放送当時、ようやくマーケットができはじめて、2008年に60億円の市場が2018年には1,000億円を超えると予想していた。

「V-CUBE ミーティング」は国内シェア11年連続No.1のWeb会議サービス

「数字で見るとマーケットの推移は期待外れの状況でした。日本の法人はコンサバで、業務改善やデジタル化も進まないという状況が続いてきました。今の市場は200億円弱と見られています。普及したときのパイはあるものの、その普及が進んでいないのです。アメリカでは既に2,000億円から3,000億円の市場になっていますから、我々が広げきれていないというのも原因のひとつになっています」

しかし、ここ数年で劇的に変わり始めてきたという。

「規模感では足りないものの、成長は続けています。その要因は国が推しはじめたことと、圧倒的に人が足りないことです。本当にデジタル化を進めていかなければ、人が回らないということに気づきはじめたのです。企業から見ると、最近は残業もさせられなくなり、従業員を働かせられる総量が減っているのです。
効率化やプロダクティビティを追求していかないといけないとようやく気づきはじめました」

人材を採用するために自社の働き方を変えていかないと、企業としての魅力が落ちてしまう。企業に働き方の自由度が求められ、社員に対して将来のライフステージに合わせてなにができるのかを提示しなければいけなくなってきた。

「ブイキューブでも、率先してオレンジワークスタイルという新しい人事制度を策定し、浸透のための取り組みを進めています。これはスーパーフレックスタイム制をベースに、どこでもいつでも働け、例えば1日も会社に来なくてもきちんと評価する働き方です。本人の仕事の内容とライフステージに合わせて、昨年から自由に働ける方法を完全導入しました」

同社の女性社員の産後職場復帰率は100%になっているという。
「こうした体制ができる状況ができると企業にとっては魅力的です。環境を作るための自社内での取り組みを進めるとともに、これを実感した人間を育て、外部に伝えていけるようにしています」

さらには、利用される領域も広がりを見せている。

2017年8月1日に販売を開始した「テレキューブ」
防音性の高い空間スペースでできるだけでなく、テレビ会議や電話での応対も可能。

「当時はあまりなかった、社会的インフラとして使われていくという要素が増えています。これまでさまざまな業界で対面原則という大前提がありました。規制緩和により、医療や薬の販売、不動産の契約行為など面前でやらなければいけなかったものが、順次、遠隔も面前と見なすという流れがあります。4年間の実証実験を経て昨年10月、不動産分野では賃貸に限り、重要事項説明がテレビ電話越しでもできるようになりました。こうしたところに当社の製品も使われていて、約80%〜90%のシェアを獲得しています」

医療でもオンライン診療が実現しはじめ、薬の遠隔販売も今年から特区で始まっている。

「営業活動も、以前は電話でアポイントを取って訪問するのが一般的でしたが、その場でテレビ電話で繋いで、顔を見ながら話して商談するということが普通になってきました」

家族とともにシンガポールをベースに生活
プロダクティビティ向上とインフラ化を推進

マーケットは日本だけにとどまらない。

「現在はシンガポールを中心にインドネシア、タイ、マレーシアなどにも規模を拡大しています。実は私自身も2012年からシンガポールがベースになっています。現地の状況を本社に上げても、本社の常識では理解できないので判断がつかないのです。最終意思決定できる者が現地にいなければ進みません。本社を動かせる人間が私でした。日本のことはもう数十年暮らしていますから遠隔でも分かるのです」

現在は1年のうち30%〜40%が日本、30%がシンガポール、残りがアメリカや東南アジア各国の滞在だという。

シンガポール拠点の様子

「もう、どこにいるかは関係なくなりました。せっかく日本に来ているので会議に参加しようとしたら、本社には私以外の参加者がいなかったということもあったほどです。テレビ電話によって会議のフレキシビリティが上がるのです」

勢いが増してきた状況を迎え、成長のスピードはさらに加速する。

「今後も基本的な方向性は変わりません。企業のプロダクティビティを上げていく仕組みを広げていくことです。もう一つは規制緩和に伴って、これまでは会わなければいけなかったことが会わなくてすむようになるように変わるためのインフラになっていくことです。以前はプロダクトを作って、製品として使ってもらおうという動きしかありませんでしたが、インフラを作るという動きも強まってきました」

コミュニケーションは人にとってなくてはならないもの。離れているからこそ、その重要度は増す。同社への期待は大きく広がっていく。

ミセル化ナノ粒子を用いた研究開発を推し進め、今後はスペシャリティファーマへの成長を目指す

放送15周年の特別インタビューとして、これまでに「賢者の選択」にご出演いただいた方々に、時代や環境変化への対応や展望についてお話しを伺いました。
(ナノキャリア株式会社 代表取締役社長 中冨 一郎:賢者の選択ご出演 2010年8月放送)

究極のがん治療「ADCM」の開発を推進
標的とするがんの増殖細胞に直接届く

高分子を用いたDrug Derively System(DDS)技術のパイオニアとして、これを応用した抗がん剤など新しい医薬品の研究開発に取り組むナノキャリア株式会社。コア技術であるミセル化ナノ粒子を用いたグローバルな展開を推し進めている。

「今もまさに臨床開発をどんどん進めている状況です。リーマンショック後で厳しい状況が続きましたが、台湾とアジアの試験から始め、資金を調達しながら日本やアメリカ、ヨーロッパに拡張して臨床試験を行ってきた経緯があります。パイプラインひとつに複数のプロジェクトがあり、例えばNC-6004は、膵臓がんに関してはアジア地域と日本で、非小細胞肺がん、胆道がん、膀胱がんは欧米で、頭頸部がんについては、アジア地域と欧米でと、様々な戦略のもとに臨床開発を行っています。抗がん剤の適応症というのはいろいろな試験をしてみないと分からないことが多いのです。医薬品ごとに、適応症を見つけ、拡大していくために、一つの医薬品候補においても広く臨床試験を行っているのです」

これと並行して共同開発も着実に進めている。

「抗腫瘍作用と、強い副作用を軽減するという意味では高い臨床効果が得られています。DDSによって、非常に強い副作用を軽減することはできます。しかし、まだゼロではありません。他の組織に影響を与えないわけではありません。これをゼロにする。これは大変難しいことです」

この8年間、大きな進捗を見せた技術もある。

「さらに効果を上げて副作用を軽減する、究極の薬の開発を目指しています。これは抗体/薬物結合型ミセルADCM(Antibody/Drug-conjugated Micelle)と呼ぶ技術で、薬物を大量に内包する粒子の表面に抗体が結合しているもので、簡単に言うとセンサーがついているカプセルです。がんを探すセンサーを付けて抗がん剤を直接大量にがん細胞に伝達させるシステムです」

これは、現在までに臨床試験しているプロジェクトよりもさらに効果的にがんにアタックできる方法だという。

「従来のミサイル療法より精度が高く、がんに直接アタックできる方法です。また、これまでの低分子抗がん剤だけではなく、核酸も対象にしており、がん細胞の中にある増殖のキーになる成分にくっついてブロックし、がん細胞の増殖を抑制するような研究も行っています。核酸はとても不安定な物質で、血液中に入ると直ぐに壊れてしまうのです。これを安定的にミサイルに閉じ込めて、がん細胞だけに投射することで効果的にがんにアタックする方法を試しています」

そこには、究極のミサイル療法によるがん治療が見えてくる。

「従来の方法ではミサイルは通り道にある他の細胞にも少なからず影響を与えてしまいます。新たな方法では、がん細胞の増殖の原動力になっている部分だけに到達させます。さらに、核酸は、原因となる成分がなければ作用しないため、副作用がでない究極の治療薬になります。現在のところは臨床試験までは到達していませんが、今後に大変期待しています。副作用がまったくゼロで、がん細胞だけに作用するという、真の究極を目指しているのです」

抗がん剤開発で培ってきたミセル化ナノ粒子技術
化粧品の分野でも展開が好調、スカルプケアシリーズも登場

同社の培ってきたミセル化ナノ粒子技術は、医薬品だけでなく、化粧品の分野での応用も進められている。

「化粧品への展開は、美白美容液を2010年に自社で発売して以降、付加価値のある高級化粧品を販売する化粧品会社と共同開発を進めました。アマゾン地域に生息するフルーツのオイルや紫外線の強い地域で生息する沖縄のブドウオイルを配合し、抗酸化成分と皮膚細胞を整える成分をミセルに閉じ込めて皮膚の再生に必要な部分に届けてあげるコンセプトを持つ製品です。2013年秋に化粧品メーカーより発売され、急速な勢いで販売が伸びた商品となりました。当社は共同開発したミセル原料を供給しています。今年10月にはリニューアルし、さらにパワーアップした製品として発売され、ロングセラー商品として位置づけられています。さらに美白成分をミセルに入れ、別の美容液にも展開しています。また、新たな展開として、2016年に発売したスカルプケアシリーズ「Depth」という男性向けの育毛剤も発売しました。さらに2017年には女性向けも発売し、ヘアケアシリーズも次々と生まれています。今後、化粧品向けの販売促進を図るとともに、新規に皮膚科医薬品にも展開していくつもりです」

ミセル化ナノ粒子(高分子ミセル)技術は、医薬品、化粧品の両サイドから大きな期待が寄せられている。

「抗がん剤と育毛剤では分野が違いますが、がん治療を受けられて脱毛に悩む方も多くいらっしゃいます。こうした方のケアに利用できないか検討しているところです。いずれの分野でも、さらに面白いものができ上がりつつあるのが現状です。これを早く世に出したいと思っています」

同社は、創薬技術基盤ベンチャーからスペシャリティファーマへの成長を見据えた活動へのシフトを掲げ、研究開発を進めていく方針だ。

日本人の心で経営する海外拠点が順調に推移。ものづくりで培ったノウハウを新事業にも生かす。

放送15周年の特別インタビューとして、これまでに「賢者の選択」にご出演いただいた方々に、時代や環境変化への対応や展望についてお話しを伺いました。
(株式会社ティラド 代表取締役会長(CEO) 嘉納 裕躬:賢者の選択ご出演 2011年10月放送)

自動車の電動化、環境対策へのシフト進む
2017年には海外売上比率が国内を上回る

 「熱交換技術」のパイオニアとして国内外の自動車メーカー、建設機械メーカー、産業機器メーカーなどに独立系企業として熱交換器を提供する株式会社ティラド。

放送当時までに日本、北米、ヨーロッパ、中国世界5極体制を構築。2011年当時の環境対応商品は売上ベースで14〜15%。これを2020年までには50%にしていきたいと話していた。

「その通りに進んでいます。2017年度は環境対応商品が41.3%を占めています。放送当時は電動化の走りで、ハイブリッド車が登場し、熱交換器やラジエーターは今後どうなっていくのだろうかと心配もあったのですが、やはり熱があるところには熱交換器が必要になります。電動化向け商品をその頃から進め、これが実っています。電動化、環境対応商品としてはEGRクーラーが当時から比べると4倍以上の売上です。オイルクーラーが2倍、インタークーラーが1.6倍というように順調です。もう一つは燃料電池用の熱交換器にもチャレンジしています」

期待を込めて目標に掲げた通りの伸びを達成していることについては、どう捉えているのだろうか。

「電動化のスピードがもう少し早まるのでは無いかと見ていましたが、想定の範囲内です。一方で家庭設置型燃料電池用は思ったよりも動きが遅く、これは値段が高いのがネックになっているかと思います」

 事業の拡大に伴い、海外の売上も増えているという。放送当時は、海外の売上比率が約30%だったが、2016年度にほぼ半々、2017年度には海外が57%と逆転した。

 
「海外も順調に計画通り進んでいます。インドネシアの売上が4倍、アメリカが3倍、タイや中国が2倍です。ここにきてロシアも増えてきています。海外拠点も増やしました。2012年にはベトナム工場を作り2輪の水冷化に対応しました。中国には建設機械向けの工場を設立しました。どちらも現在までに既に黒字転換しています」

海外拠点を増やしていくことにより、スムーズな進出と、現地に根付くためのノウハウも蓄積されている。

「やはり海外でも日本人の心で経営するのが一番だと思います。従業員と同じ目線で経営者が接することが基本です」

クラウド関連の合弁会社を設立
ものづくりノウハウの外販構想も

国内に目を向けると、今後は生産する製品の再編成を念頭に検討しているという。

「国内には3工場ありますが、環境貢献商品や、新しいラジエーターができて商品群が変わってきています。どこで何を作るか再編成を考えています。長期にわたって、同じところで同じものを作っていると、バランスが崩れていきます。これをいかにバランスよく、効率よく作るかが課題です。国内の工場にはIoT技術を導入して、最先端の設備を整備していきたいと考えています」

同社の基本はものづくりあり、人間のスキルアップに注力し、それを設備やロボットに生かしてゆく。人間ができないことは、ロボットに置き換えられないと語る。

「当社の基本は、やはりものづくりです。今後はさらに環境貢献商品、電動化に対応していく考えです」

同社の特徴はバランスのよさ。株主構成、お客様、業種、ひとつに集中せずにいろいろな分野の製品を手がける方針は変わらない。今年は、新たな事業分野にも進出した。

「4月に株式会社ティラドコネクトというIoTやAIを活用したクラウド型アプリケーション関連の合弁会社を設立しました。効率アップ、働き方改革、IoTを進めていきます。サービスとものづくりのノウハウを合体させ、まずは当社の中で展開し、いずれは中小企業などものづくり企業に外販しようという考えです。これは必ず実現させようと思っています」

主業である熱交換器分野にもさらに変革は訪れる。

「当社の基本は熱交換器であり、熱交換器を通して事業を広げていく考えです。しかし、ただラジエーターを売るだけではありません。自動車メーカーもソフト面でシェアリングやAI、コネクティングなどを進めています。当社もそのサークルのひとつとして事業を展開していかなければなりません。サービス面はまだまだ伸びると考えています」

同社は時代の変化をしっかりと見ながら、確かな視点で将来を見通している。その先見性を信じ、未来へと成長を続けていく。

「今後も基本的な方向性は変わりません。企業のプロダクティビティを上げていく仕組みを広げていくことです。もう一つはインターネットなどを利用して情報スピードを上げてゆくことです。以前はプロダクトを作って、製品として使ってもらおうという動きしかありませんでしたが、今後は当社なりの情報の使い方を、世の中に提供してゆきたいと考えています。」

コミュニケーションは人にとってなくてはならないもの。離れているからこそ、その重要度は増す。同社への期待は大きく広がっていく。

教育と医療福祉のリーディングカンパニーを目指し、世界中の人々が豊かに暮らせる社会に貢献

放送15周年の特別インタビューとして、これまでに「賢者の選択」にご出演いただいた方々に、時代や環境変化への対応や展望についてお話しを伺いました。
(株式会社学研ホールディングス 代表取締役社長 宮原 博昭:賢者の選択ご出演 2012年12月放送)

単に日本発ではなく、世界に通用するものをアジアへ
ロボットプログラミングなどSTEAMの分野が大きな伸び

教育のICT化が求められて久しい。放送当時、子どもたちが伸びていくためには、教育のデジタル化、コミュニケーションの伸長が大切だと語っていた。

「当時と違うのはビッグデータ処理やCBT、AIなどICTを超えるステージに上がってきたことです。こうなると、もう世界レベルでしか戦えないものですが、日本は残念なことに立ち後れています。ひとつの企業だけではなく、他社や海外の企業と組んで、もう一度、教育の国際化を図っていかなければ難しいと考えています」

同社の海外展開もエリアが変わってきた。

「現在はタイとミャンマーでの展開に力を入れています。既に成功と言えるレベルに達しており、今後も大きな伸びが期待できます。また、インドネシアでも課外授業で当社の教材が使われています。学力の向上だけでなく、あいさつや子供が勉強する姿勢、生活習慣の向上にもつながることから、教育関係者から高い評価をいただいています」

特に注力しているのは、STEAMの分野だ。

「STEAMの中でも、今はロボットプログラミングは世界的に流行っています。日本はもちろんアジアでも人気です。かつては科学でしたが、これが今、STEAMに変わってきています。これからの時代は、日本の良いものをアジアに輸出していくのではなく、世界で通用するものを日本で作り、それをアジアに送り出さなければなりません。そうしなければ、取り残されてしまうのだと思います」

少子化、高齢化が進む日本の社会にありながら、マーケットは必ずしも縮小傾向ではないのだという。

「少子高齢化は確かに大きな打撃となります。出生数は第1次ベビーブーム期には約270万人、第2次ベビーブーム期には約210万人でしたが、2017年にはでは約95万人までに減っています。しかし、一方では通塾率が上がっています。これは大学進学率と正比例する傾向にあります。現在の大学進学率は52.1%ですが、通塾率は約55%です。人口は減るのですがマーケットは現状維持か伸びる傾向にあります。さらに、学校で対応できない部分も増えていきます」

アジア圏では今後の成長に期待がかかる。

「海外ではアジアで塾ビジネスに成長が期待できます。この背景にあるのは都市化により都市部に人口が集中するためです。かつての日本がそうでしたが、日本以上に速いスピードで動いています。都市化によって、所得差と地域差が生じ、教育にも差が生まれます。所得のある人は塾や家庭教師をつけるなど教育へのニーズが高まります」

事業は教育サービスにとどまらない
福祉分野は成長戦略の大きな柱になる

教育サービス以外の分野ではどのような展開が進んでいるのだろうか。

「サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)を約5500居室、保育園・学童施設合わせて50の子育て支援施設を運営しています。医療福祉サービス事業は、拠点の拡大やサービスの拡充により、今後に向けた大きな柱として成長してきています。特にサ高住は、公的年金の受給範囲で住める高齢者のお住まいとして高い評価をいただいており、今後全国の中核都市を中心に、更に広げていきたいと考えています。」

 
出版も続けていかなくてはならない重要な事業分野だという。

「出版は0を1にする仕事です。無から有を作るという仕事はこれからもなくしてはいけないと思います。これまで紙に表していたのを、液晶やデジタル化、映像になるという進化はやっていかなければいけません。今後も紙媒体が築いてきたものづくりのノウハウを守っていきます。正確なコンテンツをしっかり作るのはやはり出版。途絶えさせてはいけないと思います」

地域差・所得差からくる「学力差」や高齢者の生活格差など課題は山積している。同社は、民間企業としてその一つひとつの解消にまじめに取り組んでいく考えだ。