コロナの先にある人口減少社会の世の中を見据え、最も安全で効率的な戦略を探求し続ける

カーコンビニ俱楽部株式会社
代表取締役社長 林成治

顧客のニーズを敏感に読み取り、世の中の大きな動きを予測

林氏がカーコンビニ倶楽部㈱の全株式を取得して2021年で10年になる。

「ビジネス情報番組『賢者の選択』に出演したのは2012年でした。全株式を取得して1年くらいの時期でしたが、クルマの業界は奥が深いです。勉強してそれなりに分かったつもりでしたが、今から考えると、子供みたいなことを言っていたと思います。この業界でやるべきことは何かが分かったのはここ2、3年だと思います。もちろん今、分かっているつもりのことが、これから2、3年経つと、陳腐化して、『あれはこうすべきだった』とかはどんどん出てくると思います。これで終わりというようなものがありません。」

当時の番組では経営戦略に関して、①チャネル戦略、②トータル品質向上戦略、③顧客の囲い込み戦略の3つの重要性を主張していた。

「基本的には10年前に掲げた戦略は間違いではありません。ただ、中身はどんどん変わっていきます。例えば、10年前は板金屋の加盟店を増やそうとしていましたが、今、加盟店の割合の中で半分を超えているのはガソリンスタンドです。店舗の構成がかなり変わっています。それぞれの戦略の大枠は変わらなくとも、その推進方法は時代と共に変化していくものです。」

2020年のコロナ禍では外出自粛に伴い、経営に大きな打撃があるとみられたが、顧客のニーズを敏感に読み取り、影響は小さかったという。

「2020年の4月~5月にかけての初めての緊急事態宣言の時は、お客様の入りは減りました。しかし、必ずこれは反動があって、夏になったら高まってくると予測していました。どうしてこんな予測ができたかと言うと、確かに来店客数は少なかったのですが、webのアクセスが1.5倍になっていたからです。この時期が過ぎたら、必ずお客様は戻って来ると予測できました。夏休みになれば、クルマの出が必ず多くなります。コロナ禍の状況では電車、飛行機で移動するよりも車の方が安全ですからね。そういう予測から去年夏、“コロナに負けるな!お客さま応援キャンペーン”をやったのです。案の定、キャンペーンで多くのお客様が加盟店にご来店されました。厳しい状況でも出口はいつなのか、世の中がどう動いていくのかを予測してこのような戦略を立てました。」

2020年のコロナ禍を乗り切った同社だが、林氏はもっと大きな危機を指摘する。

「コロナが非常に今の経営を圧迫していると話題になっていますが、私からすれば、これは大した話ではありません。これは一過性です。実はコロナが心配と言っているような経営は、それ以前のそもそもの大きな危機に対しての準備ができていないのではないかと思います。コロナとかそんなものに右往左往している状況ではないのです。コロナで売り上げが何割減ったと様々な業界で問題になっていますが、そんなことはこれから当たり前になるのです。」

「実は、クルマの業界においても若者のクルマ離れが顕著だと言われています。これは皆、感覚で言いますが、ちょうどカーコンビニ倶楽部が創業された頃の20年前の20代と今の20代の人の免許保有率を調べると、確かに5%程度減っています。しかし、20年前の20代と今の20代の人口は30%以上も減っているのです。これこそが真の問題なのです。これを心配しないで、今のコロナの影響のみを心配しているということは、まさに“木を見て森を見ず”だと思います。」

「20代だけでも30%も減っていて20代~60代までの全体のお客様でも10%くらい減ってきています。お客様がこれからも減り続ける中で、売り上げをどうするかという根本的な大きな問題から目をそらしているのか、もしくは気付いていないのです。コロナ禍での補助金がどうこうと言いますが、それ以上の危機に際してこれからもずっと補助金もらうのですか?という話です。大きな時代の流れ、大きな問題点を見据えて、自分の戦略を見ないと企業は生きていけません。」

新しく急成長している市場・企業との提携に着目

人口減少が恒常化する社会でどう経営をしてくのか、林氏は経営戦略の基本となる方程式を示す。

「人口減少で普通に考えても売り上げが減っていきますが、企業の売り上げは、いつの時代も単純な方程式で示されます。

【売り上げ=顧客数(新規顧客数+既存顧客来店回数)×1顧客あたりの売り上げ単価】です。

例えば、顧客の単価がある程度決まっていて、顧客数も変わらなければ、売り上げを増やすには、来店回数を増やすしかありません。この方程式にあてはめると、企業のとるべき道が分かります。どの時代もこの方程式は変わりません。どこに焦点を当てて、戦略を立てるかです。」

そして、林氏は時代によってはクルマに関わらない思い切った戦略も想定している。

「例えば、自動運転技術の進歩により事故が無くなると、カーアフターマーケットは縮小します。私は、クルマ屋はクルマだけで生きていかなければならないとは考えていません。たとえ事業内容が変化しようとも如何に事業継続していくかが最も重要なことです。事業内容の変化は単に収益のポートフォリオが変化しただけです。そのためには何が大事かと言うと、お客様の数をどれだけ抱えているか、お客様の数を増やしていくための商売をしているのか、ということです。例えば、野菜を売っていたお店が別に肉を売ってもいいじゃないかという話です。ぶつからないクルマが普及してきたら、来店されるお客様がいなくなるという話は、クルマの関係のお客様しか受け付けないのですか?ということです。もっと柔軟に経営というものを考えるべきだと思います。それが、働く社員を守り、企業を守り、ひいてはお客様に支持される経営になるのです。」

林氏はこういった戦略眼から、2021年7月から新たな取り組みとしてブランド品などの買い取りを行う《バイセルグループ》との業務提携契約を締結した。

「人口減少の影響でクルマの業界に限らず、色んな業界が縮小していきます。一方で、どんどん拡大している市場・企業もあります。その成長している企業と業務提携をしてお客様の誘導を考えるべきです。縮小しているもの同士が手を組んでもたかが知れています。新しくどんどん広がっている市場・企業と手を組んでいくことが新しいお客様の呼び込みにつながります。そこで、今、急成長している【買い取り業界】に着目したのです。」

そして、林氏はブランド品などの買い取り業界はその発展の過程で消費者金融業界と同じ道筋をたどるであろうと推測している。

「消費者融業界の歴史を紐解くと、今の買い取り業界と市場拡大の仕方が非常に似通った変遷をたどるであろうということがわかってきます。そもそも買い取り業界というのは、昔の質屋さんの変化形ですから、消費者金融業界とは同じようなカテゴリー(業種)にあります。消費者金融は当初、駅前の立地のいいところに出店しました。それが、ある時期から様々な同業者が出店し飽和状態になりました。そして、消費者金融業界はクルマで行けるロードサイドに店舗展開していき、消費者金融業界はさらなる発展を遂げました。それこそが、顧客が望んでいたものだったからです。今、買い取り業界の店舗展開も駅前とか立地のいい場所に出店しています。そして、参入業者の多くも同様の店舗展開をしています。そのような動きの中で市場規模は2.6兆円以上にもなっています。そこまで膨れ上がっているお客様のニーズを駅前だけで受けることができるのでしょうか?必ず、今の買い取り業界もクルマで行けるロードサイドに店舗展開をシフトしていくはずです」

この業務提携はバイセルグループ側にも歓迎されたものだった。

「カーコンビニ俱楽部は大半がロードサイドにあり、駐車場完備です。買い取り業界は自分たちのこれからの成長戦略をどうしたらいいのか模索していました。私はロードサイドに、一気に展開し、そこできちんと地盤を固めていった企業が最終的に勝ち残ると提案しました。すると、是非、一緒にやりたいと言われましたが、そこからは交渉です。買い取り業界は、1店舗出店に当たり加盟金を含め、約1000万程度の費用がかかりますが、先ず、これを0円にしました。また運営するに当たり、買い取り品の目利きに関する社員が必要になり、そのための教育費もかかります。カーコンビニ倶楽部としては、そういったことはしないですむように、リモートでやって欲しいと要望し、そういった仕組みを作りました。また、一般的に買い取り業界ではFC加盟店は毎月30万円程度のロイヤリティも発生するが、それもカーコンビニ倶楽部加盟店は0円にするということで決めました。そのかわり店舗展開に関しては心配しないでもらいたいと交渉し業務提携契約を締結しました。」

「この業務提携により、仮にカーコンビニ倶楽部の店舗で毎月20万円の利益が上がれば、その利益で新たなお客様獲得もできます。また、クルマで来たお客様が20万円でブランド品が売れたとすると、そのうちの10万円で車の修理をしませんかと提案もできます。つまり、新しいお客様が来て、売り上げ単価が上がるということです。儲からない理由がないのです。売り上げの方程式そのままです。カーコンビニ倶楽部加盟店が、クルマの事業以外でも生活ができ、コロナの先の人口減少社会の世の中を乗り切っていけるひとつの道筋をつくりたいと思っています。」

加盟店同士のつながりを大切に、独立支援と後継者問題の悩みを解消

全国各地にフランチャイズチェーンを展開する同社。各店舗のオーナーの事業承継も大きな課題となっている。

「カーコンビニ俱楽部の中でも、後継者がいない加盟店があります。M&A業界は活発ですが、なかなかマッチングすることがなく、難しいと思っています。なので、弊社では、別の店の従業員が独立したい場合は、独立支援として、後継者問題に悩んでいる加盟店を紹介しています。独立支援と後継者問題を一緒にやっています。」

「加盟店の元のオーナーが店を譲った後に幸せかどうかも大事な観点です。M&Aでお金によって経営権を獲得した場合、これまでの事業方針と全然違うことをやる場合もあります。その地域との関係を新しい経営者が断ち切った場合、元オーナーは果たして幸せでしょうか。一般的にM&Aはドライな関係の中でやるのが基本なので、そういった前の経営者の思いは継承されないと思っています。なので、一緒にやっている加盟店同士の横のつながりで、それを助け合っていければと思っています。当然、前のオーナーと紹介する経営者も私が吟味します。この方ならきちんと経営してくれる、あの方なら安心して売れる、そういったマッチングを本部主導でやっていきます。」

「外部のM&Aのコンサルが入ったりすると、こういったことはなかなかできません。もっというと、M&Aをするところによっては、顧客データをとったら終わりというようなところも出て来ます。果たしてそれで売った側はいいのかと言う話です。加盟店同士の中でそれを助けながらやるのがいいのではないかと思っています。経営者の思いを継承し、お客様を大事にしていく形が継続できると思って、私は加盟店同士の中で紹介していけるような横のつながりをもっと密にとっていこうと考えています。」

林氏の経営は時代の流れを見極め長期的な視野で考えるのが特徴だ。

「私はカーコンビニ倶楽部の100%オーナーなので、3年、5年とかの短い社長の任期で戦略を考えず、10年、20年という長いレンジで経営を考えています。これはサラリーマン社長だと難しいかも知れません。今の時代は、暗い海原のようです。そしてカーコンビニ倶楽部は、その中を注意深く進んで行く船団のようなものです。私はこれからも、その先頭の船の劈頭に立ち、より遠くを見て、船団(加盟店)のために、最も安全で最も効率的な海路を探し続けて行きたいと思っています。」

DXで変革する世の中でも変わることのない「顧客第一主義」で、つながる・ひろがる世界を実現

株式会社オービックビジネスコンサルタント
代表取締役社長 和田成史

世界で戦うために全製品のクラウド化を実現

「『賢者の選択』に出演したのは2013年でした。当時から時代は大きく変わりました。世の中でDX(デジタルトランスフォーメーション)による変革が始まっています。まさに第四次産業革命のまっただ中です。車の自動運転を見てわかるように産業構造も大きく変わってきています。IT業界も今まではハードとソフトがコンピューターで一体だったのが、デバイスはパソコンとスマホ、そして、ソフトとデータはデータセンターというように、集中と分散の変化が起きました。それにより、ビッグデータが蓄積されるようになり、この巨大なデータが世界を変えていきます」

当時、番組では、中小企業向け業務支援ソフトの市場規模は1000億円程度でそのうち約200億円を同社の奉行シリーズが占めていると話していた。

「クラウドの登場で世界とつながることになり、市場規模が巨大になりました。例えれば、箱根の芦ノ湖が太平洋になったようなものです。世界のメーカーも日本市場に参入してきます。自分たちの能力には限界があるので、その中でどこをフォーカスして、何をやるかという選択と集中がすごく重要になります。OBCは中小企業向けの業務支援をクラウドで提供することを始めました。このクラウドでのサービスはこれまでの延長線上にある戦略でなく、非連続な新しいサービス提供の仕組みです。この新しい仕組みは番組に出たあたりから約4年間、開発に関わる全社員約400人で研究開発を進めていました。そして、今はほぼ全製品がクラウドになっています」

番組でもクラウドを中心にしていくと会社の方針を明らかにしていた。

「当時、今ある製品はそのうち無くなっていき、5年後には売り上げがゼロになるかも知れないという危機感がありました。新しい製品の研究開発は会社を存続させるためにも必要でした。そして、マイクロソフト社がAzureを開発したことによって、これまでの製品のクラウド化への全面移行が可能になりました。すべてをクラウド用に作り直すのですから、色々な細かい研究が必要になり、苦労しました。しかし、全社員が頑張って、スピードも速く、機能が豊富で使いやすい製品が完成しました。入力したデータを自動処理して、法人税の計算なども簡単にできます。大変な努力が必要でしたが、世界で戦うためにはそれくらいの努力をしないといけないと思っていました」

全製品のクラウド化を実現したOBCはAPI連携にも積極的だ。

「これからの時代は販売するだけでなく、つながって、広がっていくという世界だと思います。なので、APIでソリューション同士のつながりが非常に大切になります。現在、連携しているソリューションパートナーは数百社の約338システムあります。これからもどんどん広げていきますが、OBCの役割を限定して、パートナーと一緒にお客様の役に立とうとの思いで進めています」

少子高齢化も社会に与える影響は大きいが、OBCはどう考えているのか。

「少子高齢化は二つの面があります。一つは定年のイメージが変わることです。人生百年時代と言われていますが、高齢であっても働く時代になっています。もう一つは人口減少社会です。これらにおいて、大切なのは生産性をいかに上げるかです。その基盤になるのがDXと考えています。例えば、年末調整はこれまで手書きで申請を書いていましたが、今ではスマホで簡単にできます。扶養者や生命保険も前年と同じだったら、ワンタッチで数分で完了します。まさにデジタル化して生産性が上がる仕組みです。生産性を上げながら、一人あたりの付加価値があがっていく。こういう社会を目指すのがDXです。第四次産業革命とも呼ばれる所以ですが、OBCのミッションはこういう社会に貢献することですし、それが生き残るコツです。SDGsはこれからの企業成長にとっての方向性ですし、その実現を目指していくことが企業のミッションと感じています」

DXで変革する世界、大切なのは社会への貢献

会社の基本方針の一つに「採用と教育」を掲げるOBC。独自の人事戦略を明かしてくれた。

「毎年、新卒で約1万3000人の応募があり、70人前後を採用しています。離職率は他社に比べて低いと思いますよ。弊社はIT会社として変わっている部分があります。一般的に採用枠はSEと営業でしょうが、弊社にはSEも営業もいないのです。営業は100%パートナー企業経由です。API連携でパートナーとともに企画したり、コンサルを行いながら、セールスを拡大していきます。なので、パートナーの支援がいわゆる営業のミッションです。開発部門は、ほぼプロダクトマネージャーです。自分が作った製品をお客様と直接会話してサポートをし、製品をより良くしていきます。そのため、お客様へのサポートセンターは社内にあり、全社員が毎月複数回、サポートセンターに入ることで常にお客様と接触をします。その頻度は入社すぐだと週1回程度で、在職期間が長くなるにつれ減っていきます。お客様の声が一番大切なので、全社員でお客様の声を忘れないように、お客様のサポートを非常に大事にしています。正社員がみんな対応しているので、お客様の求めているものが隅々までよく分かります」

そして、DX化は止まることなく今後も進展するが、大切なのは社会への貢献と和田は強調する。

「2000年にITバブルがありましたが、現在のDX化の流れはITバブルとは全く違うと思っています。ITバブルは社会の求めるレベルが当時のIT技術の限界を突破したことで泡になりました。しかし、現在はIT技術のレベルがかなり高く、社会の求めるレベルがそこに追いつけていないと感じます。つまり、やろうと思えば何でもできる環境で、それをお客様が受け入れてくれるかがポイントです。何に貢献できるのか、どういう役割を社会に果たすことができるのか、と言う貢献社会に変わるのではないでしょうか。社会にどう貢献するのか、その役割を明確にすることで色々な成果が得られると思います。こういった観点で、本当に何が大事であるかを判断し、選択と集中をしていけば、日本の未来は明るいと思います」

コロナ危機対応での日本の危機管理は最悪

2021/07/20

コロナ危機対応での日本の危機管理は最悪

経済社会が危機に陥った時の政治リーダーの指導力は、国の命運を左右する。世界を大混乱に陥れた新型コロナウイルスでの危機管理時も同じ。政治リーダーが、根拠のない楽観見通しを打ち上げると、国民を不安に追いやるだけだ。危機の現状や想定リスクをしっかりと情報発信し、いま必要な危機管理対応策は何か強く明示することが重要。その点で、今回のコロナ危機対応での日本の政治は場当たり対応に終始し、危機管理は最悪と言っていい。

安倍前首相が誇示した「日本モデル」は功を奏したのか?

ご記憶だろうか。安倍晋三前首相が2020年5月25日、新型コロナウイルス感染リスクが消えていない中で、緊急事態宣言を解除した会見時に「日本ならではのやり方で、わずか1カ月半でほぼ収束させることができた。日本モデルの力を示した」と述べたことだ。

その日本モデルは、外出禁止といった法的な強制をとらず、密集など「3密」を避ける行動自粛、休業の要請による感染予防対策、それとクラスター(集団感染)を防ぐための濃厚接触者の追跡対策を組み合わせ、感染拡大と経済への打撃を抑える対応策などが軸だ。
ただ、当時はPCR検査体制の弱さ、保健所が過去の人員削減策の影響で感染拡大に対応しきれない現実、医療現場への対策遅れなどが指摘され、「日本モデル」と言って胸を張れる取り組みなのか、といった冷ややかな受け止め方が多かった。

今もワクチン接種率低さ響く、政治の場当たり対応が問題

それから1年以上たった今、政府が東京五輪対応に右往左往する中で、感染リスクはおさまらず、ますます悪化している。後手後手に回った政府のワクチン対策のツケが混乱をもたらし、主要7か国(G7)の中で日本のワクチン接種率の低さが際立つ。このため、国民の間では感染による重症リスクに加え、ワクチン供給の低さへの不満がピークに達している。この現実を見る限り「日本モデル」を誇示した安倍前首相の政治家の「質」が問われる。

冒頭に述べたように、危機の状況下での危機管理で最も問われるのは、政治リーダーの根拠のない楽観見通しだ。菅義偉首相もコロナ危機対応で「専門家の意見を踏まえて判断する」と、専門家の知見や見通し判断を最重視すると言いながら、いざ実際の危機管理に当たっては、世論を意識した場当たり対応、政治の思惑が常に先行している。GO TO トラベルなどはその典型。ワクチン接種対策も危機管理のまずさが出て、現場は未だに混乱状況だ。

衰退日本を危惧する海外諸国に新・成熟社会モデルを

2021/04/30

衰退日本を危惧する海外諸国に新・成熟社会モデルを

今、海外のマクロ政策当局の間で、新型コロナウイルス禍の長期化リスクに対応し、日本経済の「日本化」現象を本格研究する動きがある、という。
この「日本化」とは、日本経済がバブル崩壊後、30年間に及ぶ長期デフレに陥り、日銀の大胆な金融緩和策でも景気浮揚せず、金利がゼロ近傍に張り付き「低金利の罠」に陥る現象のこと。コロナ禍の長期化で、同じ現象がそれらの国で現実化するのを避けるため研究しようというもので、要は、日本経済の衰退研究だ。何とも悔しい話だ。

それに似た話がある。シンクタンクNIRA総合研究開発機構が2020年6月に出したレポートで、とりまとめ役の谷口将紀東大教授によると、海外における日本研究、とくに政治学などでの日本研究者の減少が顕著だ、という。米ハーバード大のクリスティーナ・デイビス教授も、日本経済低迷に連動するように日本研究が米国で衰退している、と述べている。

人口高齢化に伴う経済社会システムをデザイン

そこで、私はこの際、問題提起したい。日本は間違いなく人口の高齢化が急速に進み成熟社会に付随するさまざまな問題が噴出していることは事実だ。海外諸国が、その日本を衰退過程にある国の事例として見るかどうかは自由だが、私はむしろ発想の転換で、この際、日本が、高齢化が進む成熟経済社会のさまざまな課題を提示し、それらの課題を克服して新たな成熟社会システムをデザインし、1つのモデル事例として提示すればいい、と考える。

強大国化する中国は今、グローバル世界では米国との間で対立がエスカレートし、引くに引けない状況だが、実のところ、中国国内では高齢化に伴う医療や介護問題にとどまらず、貧困対策問題、雇用確保などの課題を抱えている。

「中進国のカベ」に苦しむ中国は今や日本を研究対象

本来ならば、中国政府は経済成長のアクセルを踏んで「中進国」を脱出し、「先進国」の仲間入りを目指したいところだが、これらの問題対応のため、成長の果実ともいえる財政資金を回さざるを得ず、結果として「中進国のカベ」を乗り越えられないジレンマに陥っている。だから、中国にすれば、日本が、高齢化に伴う新たな経済社会システムを打ち出せば、必死で学びの対象にするのは間違いない。

現に、最近のオンラインでの講演で亀田総合病院経営管理本部副本部長の野々村純氏が、前職の三菱商事での中国駐在勤務時代の経験をもとに、中国の医療事情、その政策課題などの現状を語った。野々村氏はその中で、14億人の巨大人口を抱える中国の病院の現場では高齢者を中心に病気治療対応でさまざまな課題を抱えていること、中国政府にとって、日本は今や高齢化に伴う医療や介護で実績を持つ医療政策を研究対象だけでなく、その制度的な枠組みに学ぶこと多く、模倣している現実がある、と述べていた。

ユーロデザイン、大型床下収納、共有ワーク空間などを付加したマンション

特徴的な外観や奥行き4mのバルコニー
年間約1,000戸のマンションを供給

ヨーロッパ建築のテイストを注ぎ込んだユーロデザインが特徴の「VERENA」シリーズなど、ファミリー向けの分譲マンションを中心に、戸建て販売等も展開している大和地所レジデンス株式会社。2020年3月期には過去数年間比で2倍以上となる432億円の売上を達成し、急成長を遂げている。

「当社は、大和地所グループの一員として共に不動産業を展開してきた日本綜合地所と、全国で豊富な実績をもつダイア建設のDNAが融合し、2015年4月に大和地所レジデンス株式会社に社名を改めました。首都圏の供給ランキングにおいて2017年には6位にランクインするなど、2016年以降は10位以内を続けています」

現在では年間約1,000戸のマンションを安定して供給する体制が構築されている。

「その原動力のひとつは、ダイア建設のメンバーを迎え入れたことによる人員の強化です。売上を倍にするという事はこれまでの倍の用地を取得し、倍のマンションを販売する力が必要になります。これを達成するため両輪となる仕入れと販売の強化に注力した成果が出ています」

同社の物件において、ユーロデザインは切り離すことのできない特徴的なデザインコンセプトだ。

「ユーロデザインを採用することで、他のデザインのマンションか、当社のユーロデザインかという2つの選択肢が生まれます。ユーロデザインを気に入っていただいたお客様は、当社以外に選択肢がなくなるという独自性があります。」

特徴的な外観デザインを踏襲しながらも、新たな要素を付け加え、常に注目を集める商品企画をしているという。

「例えば、当社の物件を象徴する奥行き4メートルのバルコニーの他、妻側住戸のリビングサイドのコーナーをガラス張りにすることで、居住性を高めると共に印象に残る外観アクセントを演出しています。また、リビングダイニングの天井高を3メートル確保して、床下に約21畳大の収納を設けた物件もあります。マンションでありながら、床下に大型の倉庫があるというイメージです。開放感とゆとりを備えた居住空間となり、お客様にご好評をいただいています」

共用スペースに通信環境を整えたワーキングラウンジやマルチスペースの設置、各住戸の玄関前に宅配ボックスを設けるなど、ユーロデザインに新しい要素を組み入れていく工夫をしている。

生活スタイルの変化に対応した住環境を提供
関西圏、夙川エリア最大級のプロジェクト

2020年はコロナ禍にありながら、同社をはじめ分譲マンション市場が好調だったという。

「お客様の志向の変化を感じています。今までは都心の利便性を好んで生活していた方が、広さと環境を重視した住まい探しをする傾向にあります。コロナ前までは郊外の豊かな環境と広い部屋を求めても、通勤にかかる時間を天秤にかけるとあきらめざるを得ない方が多かったのは事実です。しかし、例えば週1~2回の出勤であとはリモートが可能な方は郊外を志向する流れが強くなってくると思われます」

リモートワーク等で出勤日が減り、通勤を重視して都心に住む必要が薄れ、住環境のよい郊外の広い物件を選ぶという需要が生まれている。

「当社の4メートルバルコニーは16㎡、つまり約10畳の空間がリビングの延長として広がります。火気は使えませんがこの空間でグランピングのようにくつろいだ時間を過ごす方もいらっしゃいます」

生活スタイルの変化に敏感に対応し、物件も常に進化していく必要があるという。

「当社の強みのひとつは販売部門にあります。約100名の営業スタッフがお客様と直に接することにより変化する志向をリアルタイムに伺い建築部と協力して、いただいた声を商品に反映する企画力を備えています」

同社は一都三県をベースにしながら、特に神奈川エリアに注力して行く方針だ。

「神奈川は平坦な土地が少なく、山坂が多いのが特徴です。こうした土地を開発するには様々な困難を伴うことが多いのですが、当社はこれまでに蓄積してきた豊富な実績があり、魅力ある住まいを創造するノウハウを持っています」

2021年2月にはこれまでのエリアを越えて、関西圏の大規模プロジェクトが始動した。

「兵庫県西宮市の夙川学院神園キャンパス跡地を取得・開発し、エリア最大級となるマンションをはじめとする街づくりをスタートしました。当社が首都圏で創りあげてきた『VERENA』シリーズを関西エリアに初めて展開するプロジェクトです」

このプロジェクトは、首都圏を超えて「VERENA」の認知を広げ、関西エリアのお客様に選んでいただけるか試金石であるという。同社は豊かな創造性と他にはない独自性を前面に、今後も成長を続けていく。