ギリシャは砂上の楼閣の恐れ 緊縮財政にどこまで耐える?


時代刺激人 Vol. 188

牧野 義司まきの よしじ

経済ジャーナリスト
1943年大阪府生まれ。
今はメディアオフィス「時代刺戟人」代表。毎日新聞20年、ロイター通信15年の経済記者経験をベースに「生涯現役の経済ジャーナリスト」を公言して現場取材に走り回る。先進モデル事例となる人物などをメディア媒体で取り上げ、閉そく状況の日本を変えることがジャーナリストの役割という立場。1968年早稲田大学大学院卒。

 すでにメディア報道でご存じのとおり、経済が危機的状況にあるギリシャは、金融支援の見返りに厳しい財政緊縮策を求める欧州共同体(EU)の要求を受け入れてユーロ圏にとどまる、という道を選んだ。

ネットカフェ経営者夫婦
「ギリシャは世界相手の経済戦争で生き抜けるのか」

いくつかのレポートのうち、議会再選挙に臨むギリシャ国民の本音を聞き出すべくいろいろな人たちに取材したものも面白かった。ポイントをつく声を引き出しているので、紹介させていただこう。
インターネットカフェ経営の48歳のニコスさんはND支持で、「かつては自分も左派支持だった。しかし連中は公共事業を増やし財政赤字をため込んだだけ。理想ばかり言って国を食い物にする。(急進左派連合党首の)チプラスのような若造に国を任せたら混乱が目に見えている」という。
ニコスさんの妻、エレニさんも「左派は緊縮策反対で、国民救済みたいな公約だけれども、世界を相手に経済戦争を生き抜けるのか」と。急進左派の経済政策に不満なのだ。

公立病院長
「ドイツがギリシャをEUに引っ張り込み(輸出先として)儲けた」

他方で、公立病院長で59歳のジョージさんは対照的だ。政党の全ギリシャ社会主義運動(PASOK)支持だったが、変革が大事と急進左派に投じる、という。ただ、緊縮策反対の急進左派といえども、EUとの約束をホゴにしてわが道を行くとユーロ圏離脱ができるかと言えば難しい、との見方だ。一方で、ホコ先をドイツにぶつけ、ドイツがEUにギリシャを引っ張り込んで輸出先市場として活用したのだから利益還元の形で責任をとれ、と言いたげだ。
「われわれだって、当初はEUになんか入りたくなかった。欧州統合という甘い考えを先頭切って進めてきたのがドイツだ。金持ち国も、所詮は貧しい国の世話になって儲けている。東ドイツ出身のメルケル(首相)がそのことを一番よく知っている。だから貧しい国のギリシャが(財政赤字を粉飾してでも加盟をめざした際も)ウソを承知で、早くからEUに入れたのだ。一番かわいそうなのは、われわれギリシャの働き手だ」と。

課税対象の自宅プール、申告364なのに衛星写真で
何と1万7000発見の現実

これらの庶民の声がどう新政権のもとで生かされるのか、定かではないが、伊藤記者が「ギリシャ危機を生きのびる」という連載企画で紹介したギリシャの現実を見ると、ギリシャは緊縮財政の大きな試練を経て、経済の再建を果たすしかないな、と思う。

興味深い話なので、紹介させていただこう。企画記事で取り上げているギリシャの現実は驚くべき話だ。「『分不相応な生活の典型』としてやり玉に挙がったのがプールだ。EU・IMF(国際通貨基金)の徴税専門家の指導で、ギリシャ当局は『アテネで自宅プールの申告者数は364人だが、衛星写真で見ると、実際は約1万7000のプールがある』と発表。これが他国の憤激を大きくあおり、国内では『屋根で覆え』『埋めてしまえ』という喜劇じみた騒動が起きた」と。

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