「コロナ」後の日本、遅きに失してもデジタル化を


時代刺激人 Vol. 313

牧野 義司まきの よしじ

経済ジャーナリスト
1943年大阪府生まれ。
今はメディアオフィス「時代刺戟人」代表。毎日新聞20年、ロイター通信15年の経済記者経験をベースに「生涯現役の経済ジャーナリスト」を公言して現場取材に走り回る。先進モデル事例となる人物などをメディア媒体で取り上げ、閉そく状況の日本を変えることがジャーナリストの役割という立場。1968年早稲田大学大学院卒。

電子カルテによる共通化メリットは大きいはず

現実問題として、医療の現場での電子カルテ化は驚くほど遅れている。私の知っているある大学病院は東京都内に分散する3つほどの病院間で、患者のカルテの共通化が出来ておらず、紙のカルテがベースになっている。友人の医師は、インターネットで病院相互のシステムをつなぐデジタル化のメリットを十分に承知しているが、大学の経営側は設備投資負担が大きい、という理由で先送りしている、という。患者本位になっていない。

医療現場でのデジタル化はほんの一例だ。教育現場はじめ農業、漁業、モノづくりの製造業、飲食業などのサービス業、物流の現場などでヒトとモノをICTでつなぎ、広範囲に、かつ遠隔地間でコミュニケーションを行う、センサで得たデータやビジネス取引で得るデータを分析して新ビジネスチャンスに結び付けるなどデジタル化のメリットは多い。

「ピンチをチャンスでなく、ピンチがチャンス」

重ねての話だが、デジタル化の光と影は間違いなくある。今回のコロナ危機をきっかけに、消費者が外出を自粛、人が密集する場への買い物も避ける傾向が強まり、ネット上でモノを売買するネット通販、電子商取引が一般化し、あおりでデジタルの対極にあるリアルの店舗の経営が苦境に立たされる事例が現実化してきた。しかし私は、デジタルとリアルの融合、両立は可能だと思う。そんな中で、アイリスオーヤマの大山健太郎会長がオンラインセミナーで「ピンチをチャンスに、ではなく、今やピンチがチャンスだという発想でコロナ危機に対応すれば、時代を変えることが可能」と述べた。素晴らしい発想だ。

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