世界での韓国の存在感すごい 核サミット開催力や世銀総裁人事


時代刺激人 Vol. 179

牧野 義司まきの よしじ

経済ジャーナリスト
1943年大阪府生まれ。
今はメディアオフィス「時代刺戟人」代表。毎日新聞20年、ロイター通信15年の経済記者経験をベースに「生涯現役の経済ジャーナリスト」を公言して現場取材に走り回る。先進モデル事例となる人物などをメディア媒体で取り上げ、閉そく状況の日本を変えることがジャーナリストの役割という立場。1968年早稲田大学大学院卒。

 韓国が最近、グローバルな分野で、またまた存在感を見せつけている。北朝鮮の弾道ミサイル発射が東アジアのみならず世界中に緊張を及ぼす中で、韓国の李大統領がタイミングよくソウルに主要国首脳を集めて核安全保障サミットを開催し、北朝鮮(朝鮮人民共和国)に対して強烈な牽制球を投げたのが1つ。

韓国政府はサムスンなどの民間企業の
グローバル展開を徹底サポート

韓国経済の強さに関しては、過去のコラムでも何度か取り上げているので、ご記憶の方も多いと思うが、おさらいすれば、次のようなことだ。韓国がアジア金融危機でどん底に落ちかけた際に、時の政権は産業政策の面で1業種2社体制に絞り込む産業の管理淘汰を大胆に行った。同時に、エレクトロニクス、自動車、造船などの業種ごとに、上位2社を産業政策や政策金融面で国際競争力強化という大義名分で徹底した支援体制をとった。

その結果、サムスン電子グループが象徴例だが、2010年度連結年間売上高が154兆ウオン、連結利益が16兆ウオンで、売上高は韓国の同じ年度の名目GDP1172兆ウオンの10%にのぼる。言ってみれば、韓国経済のサムスングループの依存度の大きさだ。この企業グループに万一のことがあったら、韓国自体の経済危機になりかねない。だから、韓国政府はこれら企業のグローバル展開サポートのために、米国や欧州との自由貿易協定(FTA)戦略を展開すると同時に通貨面での輸出競争力をつけるため、為替市場への介入でウオン安を作り出すことも辞さず、という産業の競争力強化政策だ。

グローバル化の光と影のうち、
所得格差拡大が当面の国会議員総選挙の争点に

財閥系企業グループのリーダーから政界に転出した現在の李大統領の経済優先、もっと言えば企業社会国家をめざすのかと思うようなグローバル化対応の経済重視政策の結果、経済社会に所得格差が大きく広がり、それが韓国の中流層以下の国民の強い不満要因となっていることだ。今年12月の韓国大統領選の前哨戦ともなる国会議員の総選挙でも、当然ながら、所得格差の拡大というひずみ是正が大きな争点になっている。

急速な都市化の結果、首都ソウルに異常なほどの人口が集中し、とくに若年労働力の都市集中の反動で、農村部の高齢者がぐんと増えて高齢化が社会問題になってしまっている。そればかりでない。都市化に伴う道路建設などインフラ建設が急速に進む半面、年金や教育、医療などの社会インフラの制度の構築が課題になっている、という。根強い物価高も国民の不満要因だ。政策的なウオン安に伴う輸出競争力というプラスの半面で、輸入物価が割高になり、その分、国内物価を押し上げていることが大きい。

国内に課題抱えながらもグローバルな世界での
存在感持ち続ける強さは不思議

こんな国内課題を数多く抱えながらも、冒頭のように、グローバルな世界では韓国の存在感は次第に揺るぎないものになってきているから、何とも不思議である同時に、タフな国だと思う。とくに、他方で、北朝鮮の暴走リスク、あるいは経済破たんによる難民流出リスクとも背中合わせでいてのことだから、やはり不思議だという方が先行する。

ところで、韓国のビジネスモデル、つまり追いつき追い越せの形で日本の背中を見て、いまやエレクトロニクスなどの分野では韓国は、4800万人の狭い国内市場を半ば捨てて、グローバルな市場で徹底したマーケッティング戦略、さらには現地化戦略を駆使して、経営のスピード決定、投資効果あると見たら巨額の資金を大胆につぎ込んでグローバル市場シェアをとるビジネスモデルで成功し、間違いなく日本を凌駕する勢いだ。

中国がすぐ後ろで韓国モデルを学習、
国際機関にも人材送り込み脅威に?

ただ問題は、すぐ後ろに、後発の中国が、この韓国のビジネスモデルを学習し、しかも社会主義と市場経済を巧みに使い分ける手法で次第にグローバル市場への布石を行っている。韓国にはまさに脅威だ。中国が、韓国のサムスン電子のようなオーナー経営によるスピーディな意思決定が出来る経営体制にあるかどうか、グローバル人材を活用する人事マネージメントが出来るか、疑問部分が多いが、学習スピードは間違いなく早い。

それと、冒頭の世銀次期総裁人事で思い出したが、最近、中国は国際機関に米国などへの留学経験が豊富で、グローバルな人脈ネットワークを持つ中国人専門家、外交官などを送り込み、枢要なポストを占めつつある、という話をいくつかのところで聞いた。これまた韓国の後追い的な動きだが、多分、ここ数年以内に、中国は国際機関に重要人物を送り込んで影響力を行使するように思う。

関連コンテンツ

運営会社

株式会社矢動丸プロジェクト
https://yadoumaru.co.jp

東京本社
〒104-0061 東京都中央区銀座6-2-1
Daiwa銀座ビル8F
TEL:03-6215-8088
FAX:03-6215-8089
google map

大阪本社
〒530-0001 大阪市北区梅田1-11-4
大阪駅前第4ビル23F
TEL:06-6346-5501
FAX:06-6346-5502
google map

JASRAC許諾番号
9011771002Y45040