大学から世界に。新薬開発で病から解放したい思いを乗せたペプチドリームとは
ペプチドリーム株式会社
代表取締役社長兼最高経営責任者
窪田 規一
東京大学発の新薬開発を手掛けるバイオベンチャーが上場した。東京大学大学院教授の菅裕明と、ペプチドリーム株式会社の窪田規一が出会い、同じ夢を共有することで誕生。創業から7年経った今、ペプチドリームは国内外の大手製薬メーカーが共同開発を熱望する異色のバイオベンチャーへと成長を遂げた。二人が共有したペプチドリームの夢とは?
蟹瀬しかし、ベンチャー企業を起ち上げるって言うと、たいていは最初の資金をどうやって集めるのかがとても大変ですし、バイオベンチャーの場合はとりあえずその金額というのも大きいと思うのですけれども、その辺のご苦労はどうでしたか?
窪田仰られるように、特に創薬バイオベンチャーと呼ばれるところですと、例えばこのように最初に非常に多額の、数億という単位のお金を集めます。大体この数億のお金というのは、ベンチャーキャピタル様であるとか、そこからの調達をして、そのお金を使って先ほど申し上げたシーズ、薬になる種を一つ二つ見つけられて、そして開発を進めていく間に芽が出て、そして花が咲くと。この間は言うなれば、最初に調達したお金を使って研究開発を進めていられるわけですね。そしてここで花が咲いて、実がなった頃に初めて製薬メーカーさんと契約をして、そして売上として上がっていくというのが、一般的な形態です。
蟹瀬そこを首が出たところでようやく仕事になってくる、と。
窪田仰る通りですね。ただ私共の場合には、先ほどご紹介させていただいたフレキシザイム。そして、プラットフォーム・テクノロジーという、我々独自のもの。世界で私共だけしかたぶんできない、持っているものがありますので、この技術を使って研究開発をするんだったら、最初の段階から何らかの支援をしてください。という形のものを我々は提示しています。ですから、私共はこのスタート時点において、ベンチャーキャピタルさんからの資金等々の調達は致しておりません。
蟹瀬そうなのですね。
窪田はい。ですから、一般的にバイオベンチャーはよくベンチャーキャピタル様の株式比率というのでしょうか・・・。
蟹瀬出資比率ですね。
窪田はい、あれが50パーセント以上であるとか、よく言われることがあるんですが、私共は実は4.75パーセントという、非常に珍しいとよく言われます。ですから、我々は先ほど申し上げたように、この段階からスタートをして製薬メーカーさんと最初の段階から、何らかの支援をいただきながら研究を進めていきます。そして進めていくうちに、先ほどお話ししたように、芽が出て、花が咲いて、そして実になる。というこのステップ毎に会社としての売上成長を成していくというのが、一つの大きなモデルになっています。
蟹瀬なんか水面下にいろいろ時間が、このグラフから見てもすごく短くて、すぐ収益が上がっていくっていう。
窪田そうですね。製薬メーカーさんとの契約をしてからまだ3年程度ですから、大体首がやっと出た頃でしょうかね。ですから、息はどうにかできているという状況かもしれません。
蟹瀬それを、どうして他ができなかったのか?と思ってしまいますよね。
白石はい。その辺りを詳しくお伺いしたいと思います。では、続いてのキーワードは何でしょうか。
窪田はい。次のキーワードは、「特許ポートフォリオ」。
東大発バイオベンチャー、ペプチドリームを牽引する窪田規一の次なるキーワード、特許ポートフォリオ。その全貌に迫る!
蟹瀬しかし、上場前から世界の名だたる製薬会社と契約をしてスタートしてるというのは、これは非常に僕は珍しいなと思うんですけれども、どういう契約内容でそういうことが可能になっているのですか。
窪田まず契約内容は、先ほどお話し申し上げましたように、フレキシザイム、そしてそれを中心に置いたプラットフォーム・テクノロジー。これはPDPS、
PDPS Peptide Discovery Platform System――契約内容
窪田ペプタイド・ディスカバリー・プラットフォーム・システムと我々は呼んでおりますが、それを我々は持っています。これはさっきも仰ったように、世界で我々しか持っていません。ですから、その技術を使って研究開発を進めるためには我々と契約をすることが、製薬メーカーさんにとってスタート時点になるわけですね。ですから、我々はその時点で先ほどの売上と同じように、まずテクノロジカル・アクセス・フィー、要するに技術に対して、それを使うということに対してのフィーを頂戴する。
蟹瀬とりあえず開発支援金みたいな?
窪田仰る通りです。まさにそうです。
蟹瀬というよう形のものをまず出せ、と・・・
窪田「出せ」なんてそんな。(笑)とんでもないです。(笑)出していただいております。ですから、開発支援金をまさにお預かりして、そしてそれで研究開発を進めていきます。研究開発が進んでいくと、リード・コンパウンドと呼ばれる、お薬の元になる物質が取れます。それを薬として開発するということを製薬メーカーがお決めになられた段階で、ライセンスという形で、その知財の移管が行われます。
蟹瀬なるほど。向こうはライセンスが手に入るから製造ができるようになるので、そこでまた利益を上げていけると。
窪田そうですね。そこで我々はライセンス・フィーがあります。ここからは我々からキャスティングボートは先方に移して、治験という形で臨床治験等を含めてお薬にするステップが進んでいくと。その間にそれぞれのステージ毎に報奨金という形でマイルストーンというものを頂戴することができます。
ですから、例えば、治験という作業に入りました。治験というのはフェイズ1、フェイズ2、フェイズ3と分かれているんですが、それぞれのステージ毎にそこまで達成したから報奨金という形で。で、承認を受けました、これも報奨金、という細かいマイルストーンというものを設定させていただいて、都度我々の方に報奨金が入るようになっています。それで、お薬ができあがったらば、後はそのお薬の売上に乗じたランニング・ロイヤリティというものを最終的には頂戴できると。そういう契約になっています。
蟹瀬そのお話を聞いていると、非常に美味しいお仕事のような気がしますけれども。(笑)
窪田はい、成功すれば美味しいです。
蟹瀬その元のところが成功するかどうか。成功しなかった場合に、契約ですから、何らかのペナルティはあるのですか?
窪田幸いなことにありません。
蟹瀬ないのですか?
窪田はい。私共の契約は。もちろん、契約違反は別ですよ。それ以外の場合には、一回お支払いいただいたお金は、返金はしません。
白石そうなんのですか。
蟹瀬ですけど、それはお互いにある種の信頼関係が以前からできていると。この技術というのは、なかなかこれからうまくいきそうだということがベースとしてアンダースタンディングにあるということですね。
窪田はい。そう我々も信じています。(笑)
蟹瀬でないと、これは世界の製薬会社は来ないですよね。そういう契約をするっていうことは。このコア技術が優れているというのはわかるのですけれども、今みたいな契約を結ぶということで、この二つ目のキーワード。
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