円安は今や異常レベル、日本の国力低下につながる


時代刺激人 Vol. 320

牧野 義司まきの よしじ

経済ジャーナリスト
1943年大阪府生まれ。
今はメディアオフィス「時代刺戟人」代表。毎日新聞20年、ロイター通信15年の経済記者経験をベースに「生涯現役の経済ジャーナリスト」を公言して現場取材に走り回る。先進モデル事例となる人物などをメディア媒体で取り上げ、閉そく状況の日本を変えることがジャーナリストの役割という立場。1968年早稲田大学大学院卒。

産業競争力低下が気がかり、エネルギー自給率の向上を

経済産業研究所理事長を経て新潟県立大教授の中島厚志さんは、日本のモノづくり産業の競争力低下を危惧する。「日本企業の海外生産比率が高まる一方で、国内では非正規雇用が増え、労働力人口が増えているように見えるものの、実は1人あたり資本装備率が2000年当時から低下し、労働集約的な新興国・途上国型の産業構造になり競争力を弱めている」という。円安で輸出産業の為替レートを通じた価格競争力がプラスになるはずだが、労働生産性がますます上がりにくい産業構造になっており、円安メリットどころでないのだ。

私は国力の低下問題に関して、モノづくり産業の競争力低下に加え、懸案である原油などエネルギーの輸入依存構造のギアチェンジを早めることを訴えたい。端的には、太陽光や洋上風力など再生エネルギーの定着を急ぎ、再生エネルギーを軸にしたエネルギーの自給率向上をさらに図ることだ。風まかせ、太陽まかせは不安定、と問題回避せず、大型蓄電池の受け皿づくりを行い、並行して、二酸化炭素を排出する石油など化石エネルギー使用の見直しを進め、成熟経済国にふさわしい、エネルギー多消費でない国づくりを急ぐ必要がある。これらを実現すれば原油輸入依存が減り、貿易赤字はダウン、円安リスクも大きく減る。

国債格付け機関の格下げ評価による「日本は売り」はリスク

最後に「日本売り」リスク問題を訴えたい。冒頭の東短リサーチ代表の加藤さんは「政府の国債増発は日銀の国債買い入れ頼みで、財政規律がない。しかも日銀は、YCC(イールドカーブコントロール)政策を導入、長期国債買い入れによって長期金利上昇を抑えている。しかし、そのため今年6月に異例の16兆円もの巨額長期国債買い入れを行った。グローバル格付け機関が日本国債格付けを下げたら、金融市場は大混乱に陥る」と警告している。

かねてから日本のGDPに占める債務残高比率の悪さなど国債ガバナンスは問われている。私も格付け機関の日本国債格付けダウンを懸念する。政府は、日本国債の保有構造は安定しており大丈夫、という。しかし国債格下げによる「日本売り」は、日本の国力低下につながり経済二流国リスクが現実化する。政府は、世界に向け財政規律策を明示すべきだ。

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