人口減少が見えていたのに放置、政治の責任は大きい


時代刺激人 Vol. 323

牧野 義司まきの よしじ

経済ジャーナリスト
1943年大阪府生まれ。
今はメディアオフィス「時代刺戟人」代表。毎日新聞20年、ロイター通信15年の経済記者経験をベースに「生涯現役の経済ジャーナリスト」を公言して現場取材に走り回る。先進モデル事例となる人物などをメディア媒体で取り上げ、閉そく状況の日本を変えることがジャーナリストの役割という立場。1968年早稲田大学大学院卒。

問題は人口減少対策、先送りは許されず、政治が問われる

さて、本題の人口減少問題だ。対策の先送りはもはや許されない。政治の取り組みが間違いなく問われる。岸田首相は、冒頭発言を踏まえ少子化対策に照準を当て、児童手当の拡充、端的には児童手当の所得制限を撤廃、高校生まで月額1万円を支給、また第3子以降は月額3万円に増額などを「こども未来戦略方針」の一環として打ち出した。2024年10月実施なので、即効性があるとは言えないが、問題は、若い人たちがこれらの対策で、今後の生活に意欲や希望を持ってくれるかどうかだ。率直に言って、これら児童手当拡大などで「異次元の少子化対策」がコト足れり、と政治が考えているとしたら、何ともお粗末だ。

7年連続の出生率減少、「先行き不透明」が間違いなく影響

出生率にもっと根深い問題がある。日本人女性が生涯に出産する子供の合計特殊出生率は、2022年時点でわずか1.26。隣国韓国の同じ数字はもっと厳しく0.78。日本、韓国とも出産数が極度に低く、ともに7年連続減少で、かつ過去最低というから驚きだ。

日本のTV局が韓国の少子化問題を取材した際、韓国の若い夫婦は「子供を出産しても、育児ばかりか、教育にものすごくカネがかかる。やりくりをつける自信がなく、あきらめている」と出産断念の口ぶりだった。日本はどうか。以前、私が30代前半の結婚間もない日本男性に聞いた際、「1人は子供がほしい。しかし2人以上となると、先行き経済不透明なことが多くて、、、」という。これは重要ポイントだ。政治の責任が大きいと言うのは、政治が、国民の先行き不安意識をしっかり受け止め、経済成長対策を全面に押し出すことだ。
日本の出生率が7年連続減少というのは、1990年代のバブル崩壊後30年たってもデフレ脱却に手間取りGDP1%の低成長を続けたことに関係がある。30年間は明らかに長すぎる。若い人たちは現実の経済状況に展望を持てず出産、子育てに気弱になるのだ。

人口減少に4大リスク、日本は危機克服モデルを打ち出せ!

知人の船橋洋一さん主宰の日本再建イニシアチブが以前、人口問題民間臨調を組織し報告書をまとめた際、人口減少が引き起こす4つの負の連鎖リスクに警鐘を鳴らした。「経済成長を押し下げ財政を疲弊させる」、「生活インフラが崩壊する」、「世代間対立を激化させる」、「日本の国勢と国力を衰弱させ、国際的地位の低下をもたらす」リスクの4つだ。

人口減少の長期化リスクがここまで鮮明になれば、何が重要課題か、誰の目にも明らかだ。重ねて言おう。経済成長が上向きに転じ、先行きの成長に弾みがつくと見通すことが出来れば、若い人たちの意識は間違いなく変わるはずだ。
その意味で、政治、行政、そして企業が、日本経済の強み、弱みをはっきりと分析、それぞれの責任の範囲内で、イノベーションを軸に経済に磨きをかけ「日本は高齢社会・成熟社会で課題山積ながら、経済活力面で、まだ捨てたものでない」とし、世界の多くの国々に「危機克服モデル」を打ち出すことだ。そうすれば、若い人たちもきっと意欲を持つはずだ。

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