リスクがあっても任せる人材育成。10兆円企業へ、先代から伝承した教えと夢

うそとごまかしは絶対ならん

樋口うそとごまかしは絶対ならんと。その一つの例が、四つか五つのときだと思うんですけど、おねしょをして、それをごまかして、布団丸めて、遊びに行きたいから近所の兄ちゃんと遊びに行ったんですよ。そしたらおばあちゃんに見つかって、おばあちゃん血相変えて川まで追いかけてきて、首根っこをつかまえて家の横にある納屋まで連れて帰ってきて、真ん中の柱に荒縄で結わえて、（一同笑い）朝は食事してないでしょ？早くから行ってるから。で、昼頃になったらお袋が「かわいそうや」と言って、おにぎり持ってそっと入ってきたんですよ。

蟹瀬じゃあ昼までずっと縛られたままなわけで？

樋口縛られてましたよ。で、それをおばあちゃんに見つかって、目の前でお袋がえらく怒られて。今は姑（しゅうと）さんよりお嫁さんのほうが強いかもわかりませんが、当時は絶対的に姑さんでした。

蟹瀬それはそうですよね。

樋口それでそのことも記憶に残ってるんです。で、結局すごすごとお袋も引き下がって、で、夕方になったら暗くなってくるでしょう？

蟹瀬ええ。

樋口心細いしお腹は空くし、メソメソしているとおばあちゃんが入ってきて「武男、わかったか？」と、こう言うんですね。で、何をわかったかいうのは、もう「うん」と言わなければ仕方ないし、「うん」と言ったら何がわかったかということ説明するわけですね。「うそとごまかしは絶対あかん、絶対してはならん」ということを、そういう体罰をもってしつけられたんです。だからこたえているからずっと残っているんですよ。

蟹瀬だからそのときは、おねしょをしたということは別に悪いわけじゃなくて、それを隠したことが悪いと？

樋口そう、隠したことが悪い、それを怒ってるんですよ。うそとごまかしは絶対駄目だんだと。

大学進学

蟹瀬そして大学は関西学院のほうへ行かれて。法学部、法律にご興味があったんですか？

樋口あんまりなかったんですけど、一時（いっとき）あったのは弁護士になりたいという思いを持ったこともあるんですよね。だけど途中で所詮は向いてないと思いましたけどね。

蟹瀬じゃあ、学生時代は勉強よりは別のことを？

たまたま母が自分の着物を質草に持っていくところを見た

樋口アルバイトが多かったですね。サラリーマンの家庭で、何不自由なく育ててくれましたから、そのためにはいろいろ、親父もお袋もものすごい一生懸命やってくれたというのが、お袋がやっぱり私が私学の大学で、弟が私学の高校のときに。たまたま自分の着物を質草に持っていくところを見たものだから、それでどっちも口には出さなかったけども、絶対に。