リスクがあっても任せる人材育成。10兆円企業へ、先代から伝承した教えと夢

大和団地社長に就任

樋口それは専務時代に、まだ本人も元気でしたけども、ある日呼ばれて、いろいろ会話する中で、「どうや？」言うから「どうや？」言ったって自分の預かってる事業部のことや新規事業のことや話していて、聞いてて「うん、うん、それも大事やけど、今日はもっと大事なことで、わし、きみに頼みがある」と。「オーナーが頼みって気持ちですな」と言った途端に、「総会終わったら団地の社長やってくれ」と「団地な、もう赤字になってこうなってああなって……」ダーっと、自分の知る限りの悪条件をだされたんですよ。

だから「もう勘弁してくださいよ」と、「わし、もう大和ハウスの専務で十分満足してます」と、「新しい事業もやりますし」と言ったら、怒りだして、いつも怒るときは逃げ道をつくってくれる人が、もうバーンと怒っておいて、「わしは金もない、信用もない、バックもない、何もなし、ゼロから会社を立ち上げた。そのわしが、大和団地再建のために手伝うてくれくれと、俺も一緒にやる言うとるのに何が不服じゃ！」と言って、さーっと怒って、それで怒った後すぐトーンを変えて、「山口支店でいい経験をしたやろ？」と。「福岡で苦労したやろ？」ってずっとトーン優しく言うわけですよ。

蟹瀬なるほど。

樋口で、「俺が昨日や今日の思い付きで言うとると思うとんのか？」と、これはもう殺文句ですよね。

蟹瀬もうきみの実力は全部わかってるんだと。

樋口外堀全部埋められたと。

蟹瀬だから頼んでるんじゃないかと。

樋口そうです。「頼んでることをなんで断るんじゃい！」と怒られて、で、それ以上断ったらどっちも辞めなければいけないでしょう？55歳でしょう？もうちょっと働かなければいけない（一同笑い）今から思ったら。とっさに判断しないと考えさせてくれなんか言える雰囲気ではないしですね。

蟹瀬そうなんですね。もうその場で？

樋口その場ですよ！

蟹瀬じゃ、イエスかノーかと？

樋口ええ。で、そこまで言われて、「そこまでおっしゃっていただいたら、男冥利だと思います」と……。

蟹瀬引き受けた？

樋口で、「どんだけできるかわかりません」と「しかしベストは尽くしてみます」と言って受けたのが大和団地です。

蟹瀬実際にその当時の大和団地のその財政を含めて、経営の状況というのはどういうのだったんですか？

樋口売り上げが714億で、有利子負債が1420億ですから、売り上げの倍ぐらい借金があったんです。

蟹瀬具体的にはどういうふうにして再建を進められたんですか？