「シルクロードを逆走せよ」マーケットの見方を変えるために必要なこととは?!
クオンタムリープ株式会社
代表取締役社長
出井 伸之
日本が取るべきアジア戦略。次世代を担う起業家たちの育成。山積する日本経済の問題、課題。そんな中、一人の男が新たな会社を立ち上げた。日本が誇る世界企業ソニーを牽引してきた男である。新たにクオンタムリープ株式会社を設立した代表取締役、出井伸之は、これから何をなそうとしているのだろうか。その理念と戦略、その全容に迫る。
蟹瀬戦略っていう点では、どういう戦略なのですか?その背景で言うと。
出井基本的には、吉本興業って言ったらやっぱりお笑い芸人の方たちがテレビ番組を作っているわけですよね。でも、これからはやっぱりモバイルも盛んになって来るし、いろんなテレビチャンネルも変化してくるだろうし。それは、そういうことをやるというのが戦略なんだと思いますけどね。
蟹瀬要するに、ビジネスモデルそのものを新しくしていくっていう発想なのですか?
出井良いところは、そのままにして。日本の会社はどこも全て、これから先を考えていくと再定義しなきゃいけないんですよ。だから、イノベーションコンサルティングみたいなのが一番、僕の好きな仕事のうちの一つです。
蟹瀬一番大きなイノベーションっていうのは、何になるわけですか?吉本との関係の中で。
出井それは、吉本興業がやらなきゃいけないことで、イノベーションをやらなきゃいけないんですけど。ああいうふうにモノを作っているわけでもなくて、コンテンツを作っているわけですよね。そうすると個人のアーティスト集団なわけです。アーティスト集団っていうのは、会社がある程度、方向性を出していくってなると、やっぱりそれ自体がイノベーションでなくてはいけない。ネットでやるとなると、じゃあテレビ番組のように30分以上喋りっぱなしだと見られないんですよね。だから、そういう意味でもいろんな変化っていうのは、やっていかなきゃいけないんですよ。そういう事業のイノベーションっていうのは、絶対に必要だと思います。テレビだけに頼っていては、なかなかいけないんじゃないかなと。
石田モバイルとかメディア、インターネット。
出井そうですね。スポーツもエンターテイメントになっていますし、そういう意味では、広いですよね。意味がね。
蟹瀬そこの切り替えですよね。出来る企業と出来ない企業で、たぶんこれから大きな差が出てくると。
出井企業には、必ず二つあってね。要するに、今のモノを効率良くする。燃費を良くするっていうことと。新しいバリューを作っていくということ。この2つが並行していくんですよね。新しいバリューを作るのはどっちかっていえば、社長の役目で。燃費を良くしていくっていうのは、実際にやっている人たちの努力みたいなところがあるので、その2つが重ならなきゃいけないわけですね。ところが日本の社長なんて現場に行って、社員のやることを一生懸命やっている。自分の本当の仕事は、新しい価値をつくるようなことを、今ベースにしてやっていくっていう。だから、その孤独な社長の友達っていうのがクオンタムリープっていう。
蟹瀬すごく分かりやすい、その感覚。その一方でね。イノベーションを起こしている企業もあれば、うまくいかない企業もあるっていう。日本全体で見た時には、経済がずっと停滞をしてきて、確かに海外に進出して活躍しているところもあるけれども、日本っていう国の経済を拡大するためには、内需をどう拡大するかっていう。これは、どうしたってやらなきゃいけないことですよね。
出井外需を拡大する?内需を?
蟹瀬内需。
出井それは、お言葉を返すようですが外需と内需って、すごく古い分け方なんじゃない?
出井ソニーも昔は、若い頃は外国部っていうのがあって。日本の中でいうのは、ソニー商事みたいになっていたんですけども。今、両方とも無いですよね。ということは、事業部が見ると、マーケットをトータルで見るわけです。始めから日本があって、それを輸出するっていう概念はもう変わって来ているんですね。
それはもう、多くの会社がそうなっていると思うんですけれども。でも、日本ではJとかNとか名前が付くっていうのは日本しかやっていない。例えば、JRとかね。東京電力っていうのは、東京を中心に作られたからですよね。でも、それって電力とか何かって、まだ他にもチャンスはたくさんあるんじゃないですか。
蟹瀬そうすると、インターナショナルとグローバルっていうのは、これは言葉の問題になりますけれども。相当、違うコンセプトだって考えた方が良いってわけですか。
出井日本の成長期っていうのは、全部ヨーロッパ、アメリカ頼りで、それをアジアの資源だとかいろんなものを使ってアメリカに向いていたわけですね。今見てみたら、中国だとか韓国だとか、ベトナムだとか、インドネシアとかインドとか。物凄く伸びているわけじゃないですか。
ちょっと長期で見ると、大きく流れは日本の方に来ているわけですよ。今までは流れがアメリカの方に向きすぎていたから。それをじゃあ、中国とかインドの方に合わせていくとなると、チャンスが出ると思うのか、中国と競争でピンチなのかっていうふうに思うのか。ですけど、圧倒的にチャンスにめぐまれている方が、私は多いと思う。
蟹瀬世の中の世論というか、財界全体じゃないけれども、どうもこう圧倒されて、日本もジャパンナッシングという時代に向かっているんじゃないかと。
出井そんなことは絶対にないと思う。だけど、その悪いことを考えがちなんですけれども、それは何故かっていうと、かつて我々が学生時代に何をしていたかっていうと。
蟹瀬70年代。
出井日本は、成長期だったわけです。成長期ってあんまり戦略いらないんですよ。一生懸命働くのが戦略だと思っているから。今の中国がまさしくそうだと思う。だから、中国の若手の企業に「戦略は、どういうふうに思われますか?」って言われるから、そんなことより早く成長した方が良いんじゃない?って、これは僕が若い頃に経験してきたことです。
蟹瀬確かにね。
出井それで日本は、成長期の頭が残っている方が蟹瀬さんをはじめとして、中堅でおられるわけですよ。だけど今の若い方、30くらいの方は日本の成長期を知らない。だから、その人たちは始めからこういうところにいるわけですよ。今日本はクリアに成熟期なんですよ。
ただ、成熟期っていうのは成長期と何が違うかっていうと、戦略がいるってことなんですよ。その戦略は、例えばどこかに絞り込むとか。どこかの地域を狙うとか。マーケティングのスタイルを変えるとか。会社そのものを変えるとか。物凄く戦略がいるんですよ。
蟹瀬経営者そのものが戦略をもたなきゃいけないし、国として日本政府そのものもそういう戦略を。
出井もちろん、そうですよ。自民党から民主党に変わって、いろんなこと、自民党が言ったり民主党が言ったりとしていますけれど。あの問題は、基本的にはそういう問題じゃなくて。要するに、今度の新しい政治は、どういう戦略を考えるか。日本としての。沖縄の、要するに米軍の基地だけの問題じゃなくて、どういうふうな日本の国際政治の中で、中国と対等にお話が出来て、韓国ともやり、アジアの成長を守りつつやるかっていう基本的な戦略が求められるんです。
そのことに関して政治家が早く気が付かないといけない。だから、今の日本のトップの役割というのは、戦略を作ることだと、僕は思いますね。
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