「シルクロードを逆走せよ」マーケットの見方を変えるために必要なこととは?!
クオンタムリープ株式会社
代表取締役社長
出井 伸之
日本が取るべきアジア戦略。次世代を担う起業家たちの育成。山積する日本経済の問題、課題。そんな中、一人の男が新たな会社を立ち上げた。日本が誇る世界企業ソニーを牽引してきた男である。新たにクオンタムリープ株式会社を設立した代表取締役、出井伸之は、これから何をなそうとしているのだろうか。その理念と戦略、その全容に迫る。
蟹瀬さて、この番組ではゲストの皆さんに賢者の数字というのを書いていただいています。事業だとか、ビジネスの中で大事にされている数字。これを出井さんにもお書きいただきたいと思います。
出井はい。
蟹瀬よろしくお願いします。
蟹瀬あちらのカメラに見せていただけますか?
出井3という数字とか、3の二乗。ここが重要なんです。
蟹瀬3っていうのは、どういう意味ですか?
出井3っていうのはね。僕が好きなのは、経営者、トップはビジョンを出すということ。やるのは、実行する。調和を、ちゃんと利益を得られるように管理する。この3つがシステムの基本的。奥様がいて、旦那様が働いて、子供が何かをするっていう。そういうのが基本でしょう。
この3つが、ここに奥さんが入るか分かりませんけれども。この3つがポイント。ですから3なんですね。もう一つの二乗っていうのは、ネットワーク効果のことですね。3の二乗はいくつですか?9でしょう。だから、そういう意味で4の二乗は16でしょう。要するに大きくなれば大きくなるほど、ネットワークの効果っていうのは大きくなるんですね。
蟹瀬いまのネットワーク効果の意味が、ご覧になっている方は意味が十分理解できなかったような気がするのですけども。
出井ネットワーク効果っていうのは、勉強しないと今の経営はやっていけない。
蟹瀬もっと具体的に言うと、どういうことなのですか?
出井要するにインターネット企業か何かでも、グーグルでも今は売上よりも企業価値の方が遥かに大きいですよね。それは何故かっていうと、全世界の人たちがグーグルにつながっているからですよね。ですから、そういう意味で昔のものを作っている日本の製造産業の時は、あんまりそういうのは考えなくて。普通の計算だったんですね。ネットになった時に、どれだけのユーザーが居るとか、トラフィックっていう言葉も使いますけど。そういうのがあると、そこが勝っちゃうんです。
蟹瀬二乗、三乗というふうになっていく。
出井そういうことですね。そこが今のネットワークの外部性とか、ネットワーク効果とかいろいろあれですけど。これは、今の日本でかなり欠けている言葉だと思いますけど。
蟹瀬いわゆる20世紀型の経営と言われるやり方と。ある意味、決別していかないといけないっていうことになるのでしょうかね。
出井日本だと両方がきちゃうんですよ。両方が同時に働くんですよ。ネットワーク効果だけでは製造産業やっていけないですよね。ですから、ネットワーク産業を意識したような。例えば、10年経ったら車って移動の手段よりも、もしかしたら移動する基地局になっているかもしれないですよ。
蟹瀬移動する基地局。
石田と仰いますと。
出井電波を発信しているってことですよ。ですから、あれだけ車が走っているんですから、あれが全部無線局になってみれば全然違うことが考えられますよね。
蟹瀬まるで蜘蛛の巣のように広がっていくと。
出井まさに。
蟹瀬ウェブの形になっていくのですね。
出井それは、メッシュネットワークとかいろいろ言われることがありますけども。そういうように世の中、変わって来ているんですよね。世の中、ワイヤレスでしょう。そういうことを見れば、今までの10年前と今では随分違うけど、おそらく今と10年後って考えると、いろんな意味で物凄い変化があると思うので。
蟹瀬あと、非常にそういう急速な進歩の中で、逆に言えば日本はモノ作りなんだと。匠の技術なんだと。これをこう言い続けている方もいらっしゃいますよね。このあたりっていうのは……。
出井日本の丁寧なモノ作りっていうのは、全ての基本だと思う。だから、そのネットというようなものは、モノがネットの中でどうつながっているかっていうことが重要になってくるんですけど。将来はモノとモノが自動でつながるような時代になってきて、ここにAとBっていう電話機があったら直接データが管理センターなしでもやれるようになるっていう。
そのような時代になってくると、モノを作ってじゃなくて、ネット環境の中でどういうふうに便利なモノをつくるかっていう問題なので。その中で、匠は当然必要なんですよ。だけども、モノの意味がだいぶ変わってくると思います。
蟹瀬お言葉を返すようですけども、日本ってそういうイノベーションが上手くいってなくて、逆にかつて成功した成功体験の方の価値観へ、古い方へ戻っている気がしないでもないんですよ。そこになんか、心の支えっていうか、救いを求めていて。
出井だけど、まあ漆塗りのお椀を見て良いなと思ったり、それから、いろんな作法とかお花を良いなと思うのは、ネットになっても変わらないんですよ。その証拠に、シェークスピアの悲劇みたいなのは、稲川さんの劇みたいなのは、ネットになっても何でも変わらないですよね。ですから、皆さんの生活っていうより我々の生活も、10年前と今とじゃインターネットも無かった。
出井そういう環境になってきたわけだから。そこに新しい気を作るかっていうのがね。
蟹瀬前半の方では、話がだいぶ広がったのですけれども。改めて、そのクオンタムリープという会社を作って、当然、企業にはミッションっていうのがありますよね。おそらく、いろいろ考えられたと思うのですけれども、その話をちょっとお伺いしたいです。
出井さっきもちょっと触れましたけれどもね。やっぱり、今の時代に企業が全部変わらなきゃいけないわけですよね。だけど、変革って言っても2通りあって。要するに、さっき言った通りコストダウンして伸びるっていうのと、新しい価値を作っていく。クオンタムリープは、どちらかと言えば後者の方で。新しい価値を作るのを援助していきたい。それにはベンチャーの人たち、若手の人たちですね。私は、ソニーの時からコーポレートベンチャーっていうのを凄く意識していたんですね。
それでソニーの時代に、2つの会社に関してかなり支援したんです。それは、あの現在マネックスの松本さんですね。そこは始め、ソニーが50%投資をして、今はもう数パーセントしか無いですけれども。その間、彼は育ったしソニーは株を売却することによって物凄く利益をあげられるということで、典型的な話ですね。それから、もう一つは3年くらい前に上場した富士ビットっていう会社ですね。彼は、まだ30代ですけれど、彼からインターネットのことを教わって、経営のトランスファーをするっていうのを10年やっているんですね。
今、2つとも中国にでもやっていて。そういうようにコーポレートがベンチャーを育てるというのは、私はこれを言うために来たんですけども。日本の起業家っていうのは、一つでも二つでも良いから自分の会社以外に一つでも多くベンチャーを育ててほしい。これは、結局自分の会社も得になりますし、例えば1000社だとすれば、2000社のベンチャーも出来るわけじゃないですか。それを、国とかベンチャーキャピタルがやるんじゃなくて、やっぱり経営者そのもの自信がやっていったら凄いんじゃないかと。今は、それを継続的にやっていると。
蟹瀬今までの考え方で言えば、社内の中で若手の人材を育てて社長になってもらおうという発想が多かったわけですよね。そうじゃなくて、社外に若い人を育てて持って行く……。
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