中国イノベーション都市深圳で数々サプライズ 日本が忘れていた成長への執着心などが随所に


時代刺激人 Vol. 301

牧野 義司まきの よしじ

経済ジャーナリスト
1943年大阪府生まれ。
今はメディアオフィス「時代刺戟人」代表。毎日新聞20年、ロイター通信15年の経済記者経験をベースに「生涯現役の経済ジャーナリスト」を公言して現場取材に走り回る。先進モデル事例となる人物などをメディア媒体で取り上げ、閉そく状況の日本を変えることがジャーナリストの役割という立場。1968年早稲田大学大学院卒。

ベンチャー企業の法人税収増や若い人口構成で市財政に余力、中国他市にない強み

その中国関係者から興味深い話を聞いた。深圳は、スタンフォード大がそばにある米国シリコンバレー、北京大や精華大のある北京・中関村と違って、イノベーションを生み出す技術研究基盤が弱い。そこで、深圳市当局は孔雀計画を考えつき、ベンチャー企業支援も、日本流にいう「カネは出すが、口は出さない」姿勢。極めつけは、深圳市が独自の財源を活用して大胆に政策目的の補助金を出した、という。
その理由がユニークだ。深圳市人口1190万人の平均年齢が32.5歳という若手中心の生産労働人口構成で、乳幼児や子供、高齢者が極めて少ないため、社会保障関係向けの財政負担を強いられる必要がない、しかもアグレッシブなベンチャー企業が多いため、法人税収がケタ外れに多いことがプラスに作用し、イノベーション対策に回せる財政資金が潤沢なのだ、という。同じ中国内でこれほど積極策をとれる行政機関がない点は強みだ。

中央政治権力から遠く離れ自由度高い、「移民都市」で既得権益と無縁がプラスに

これらは深圳市の特殊な歴史に起因するのは間違いない。40年前に改革開放路線を打ち出した当時のトップリーダー、鄧小平氏の指示で、深圳市は1979年に経済特区指定され、国の開発支援を受けて輸出向け電子製品組み立て型産業が集積する「世界の工場」となった。その後、2009年の世界経済を揺るがしたリーマンショックで一時、苦境に立つが、イノベーションセンターとして独自に立ち直った。
しかし深圳市の強みは、中国国内でも珍しい「移民都市」という点だ。人口3万人程度の漁村が、今や人口1190万人の巨大都市になった。都市戸籍を持つ常住人口が385万人、農村からの出稼ぎ者など雇用を求めて流入する非戸籍常住人口が805万人と聞いたが、いずれも本籍・深圳は少なく、ほぼすべてが中国の他地区からの移民だ。
別の中国関係者は「共産党の指導があるとはいえ、移民人口が生み出す活力は大きい。権力志向の強い北京中央政府から距離的に遠い南方地域にあったこと、改革開放モデル地区として自由度を与えられたこと、既得権益勢力がはびこる余地がなかったことがプラスに働いた。だからイノベーションに対し貪欲にチャレンジが可能になる」と述べている。

深圳でユニコーン企業が続出、新規の起業数や国際特許出願数も突出が驚き

広州、深圳のイノベーション企業をウオッチするジェトロ広州事務所長の天野真也さんによるとTENCENT、HUAWEI、DJI、MAKEBLOCK、BYDなどITやハイテクの企業を中心にスタートアップしてから一気に企業価値10憶ドル(円換算1000億円)で非上場のベンチャー企業と言われるユニコーン企業が続出、世界でビジネス展開している。中でもDJIはドローンの開発企業で、世界市場シェアが70%を超す。
TENCENT(テンセント)など巨大企業は新たなビジネスチャンスの芽を探し出すため、ハイテクパークのベンチャー企業に率先して専門人材を派遣し、事業化のめどがつけばM&A(企業の買収・統合)を行い、傘下に収める。ベンチャー企業側も、これら大企業の支援狙いで、ハイテクパークに積極参加する。まさにWIN/WIN狙いだ。
また、中国の国際特許出願件数の大半が深圳のIT企業やハイテクベンチャー企業に集中し、2016年時点で46.5%が深圳の企業、その半数が南山ハイテクパーク企業だった。しかも深圳スタートアップの新規起業数は同じく2016年時点で前年比28.9%増の38万6700社だった、という。天野さんは「深圳には勢いがある。深圳特区設立30周年時の市政府の『深圳10大思想』では『イノベーションを奨励、失敗に寛容に』『世界の先頭になることを恐れない』などで、イノベーションへの意欲が強い」と語る。

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