常識破り!「前例があるといったら全部やめる」のパワー
エステー株式会社
取締役会会長兼執行役
鈴木 喬
「ものを売る前に自分を売って、それから会社を売って、それから熱意を売って」。少年時代に過ごした戦後すぐの焼け跡がを原点。どんなことをしても生きていけるという自信とともに会社を急成長させた鈴木喬の、ヒット商品を次々に生み出す秘密、経営手法とは?
鈴木余計なことをやってるというのが、どこかであたまを軟らかくしているのかもしれませんね。
蟹瀬会社全体でのムードづくりというのには、ものすごく役立つでしょうね。
鈴木はい。あまり大真面目に真一文字(まいちもんじ)に歯を食いしばってというのでは、知恵も出ませんよ。
蟹瀬何か普段から、「みんなが反対するようなものをつくれ」とおっしゃっているという噂を伺ったんですけど、本当ですか?
鈴木はい。エステーは世にないことをやる会社、エステーなんです。ですから前例があるといったら全部やめる。それから誰もやったことない、やる。特に役員会が猛反対、営業が反対、ご販売店が全部反対、ますますやると、これなんですよ。
蟹瀬だけど、それじゃあ本当にヒット商品できるんですか? それで。
鈴木できます、できます。例えば開発のコンセプトは『世にないことをやる』と。一番初めにネーミングは重要で聞いて分かるなんです、聞いて分かる。だからネーミングなんですよ。次は見て分かるでデザインとか、それから使って分かる、ですか、私の最重要なのは効き目が目で見て分かる、だから何でもものが減っていくんです。
蟹瀬消臭剤なんか減っていくのが見えると?
鈴木そうです。鍋や釜みたいなものは、何百年ももってしまうからああいうことをやらないんです、消えてなくなるものをつくると
蟹瀬CMにプロレスラーか何か使いましたよね?
鈴木はい。実はそれまで芳香剤といったのですが、これからは消臭だぜ!ということで、「消臭で強そうなのをつくってよ」と頼んだんですよ。で、その頃一番強そうだったのがプロレスラーで長州力だったんですよね。「消臭で一番強いやつ、長州力、消臭力……」とこう言っているうちに『消臭力』になってしまいましたね。それで、これ売り出しましたら貴闘力が優勝しまして、これ運も実力のうちと、運こそ実力だと思ってるんですね。今100億ブランドになりまして、ゼロから始まりまして。で、去年はブランド・オブ・ザ・イヤーを頂きました。
蟹瀬その知恵の元になっているエネルギーというのはどういうところからきているんですか? 鈴木さんご自身がいろんな活動をなさると思うんですが。
鈴木年中ばかばかしいことを考えてます、夜中にも起きてメモして。
蟹瀬いろんな所行かれるんですか? やっぱり。
鈴木行きますね。ですから女性の集まる所よく行くんですよ。で、例えば私、美容院へ行きますし、床屋さんに行きませんとかね。美容院から始まりまして、何しろ女性の集まる所行って、根掘り葉掘り聞いたり、聞き耳を立てたり、女性雑誌を読んでますしね。余計なことを、これでも努力してやっているんですよ。
蟹瀬でもその中からいろんなトレンドが見えてくるわけですね?
鈴木はい。
蟹瀬最近だとどうですか? なんかピーンと電球が点いたというのはありますか? 頭の中で。
鈴木非常にヒット商品数知れずと言ったほうがいいですね。あんまり言うと企業秘密になりますのでね(笑)。
津島そうですね。
蟹瀬ちょっと一つぐらい内緒で聞きたかったですね。
鈴木例えば『脱臭炭』というものを売ったんですよね。これ初めは、「芳香剤、消臭剤、その先行こうよ、脱臭だぜ!」とこう言ったんですね。で、「冷蔵庫の脱臭だよ」と。脱臭でしょ。で、一番効くのは何か、こうじっと見ていたら皆さん「炭だ」と言うわけですよね。「脱臭だろ、炭だろ、脱臭炭だろ?」と、炭をゼリー状にして入れたものを売り出したんです。で、初め出てきたネーミングは消臭ゼリー炭なんです。で、私は「そんなもの売れないよ、脱臭炭だよ、脱臭炭だよ」と言って100万遍言いましたら、みんな洗脳されまして「脱臭炭だ」と。
蟹瀬もう、言われればすぐ頭にピーンとイメージできますもん。
津島そうですよ、思い浮かびます。
鈴木それから、そんなもの社内全員反対、これまたご販売店販売、ですから自分で売りに行きましたよね。そしたら今はお客さんのほうが、そんな開発担当者よりもずっと利口なんですよ、営業よりもずっと利口なんですよ。
蟹瀬それともう一つ、海外のメーカーとか日本のメーカーと、今結構提携されてらっしゃいますよね?
鈴木はい。
蟹瀬これはどういう狙いなんですか?(年表終わり)
鈴木世界で一番やわらかあたまの人と組むと。
鈴木自分がやってること以外で、新しいことやるときは、世界一のやわらかあたま、それはもう国内外を問わずということですね。まず自分で、社長である私のことを先方が理解してくれないと前へ進みませんから、全部飛び込みで行きます、私。海外へ行きましても、受付の女性の所へ行って、日本語で毎日毎日行って3日間ぐらいしゃべっていると、みんな疲れ果てて、どういうことだろうと。それから英語でしゃべりだします、上の人に会えたら。
蟹瀬今、外資は入ってくる、それからライバルの大手、K社もありますよね、P社もありますけど、このへんは相当熾烈(しれつ)な競争が行われているのではないですか?
鈴木はい。すごい競争ですがね、私は競争が大好きなんです! で、負けるのが嫌いなんです、勝つのが大好きなんです!
蟹瀬大抵の人はそうですけど、なかなか勝てないんですよ。
鈴木はい。負けるというのはあまり記憶にないです。多少負けても、大きく勝ちますね。
蟹瀬じゃ、今のこういう状況でも勝てるという自信がおあり?
鈴木はい。私の基本方針は、社長の仕事は、勘と度胸と多少の運だと。私、自分の運を強く信じてるんですよ。
蟹瀬その自信というのは、そもそもどこから生まれているんですかね?
鈴木焼け跡でご飯食べられなくても生きてきたしね。
蟹瀬やっぱりそこへ戻るわけですね。
鈴木はい。それから何が悪いと言ったって、あれより悪くならないよと。それから勉強をしなくたって本がなくたって、やろうと思ったらできるよと。全部独学でやってきましたので、実質的には勉強というのはほとんど小さいときしたことないですからね。
蟹瀬なるほどね。会社のほうは初めて創業系以外からトップが誕生するわけですね。そして、社名も変更された。これはかなり新しい動きになるわけですね? またもう一つ。例えば社名一つ変えるといったって、この『化学』を取ったというのは何か意味があるわけですか?
鈴木はい。
鈴木『化学』という名前を付けてますと、みんな頭が固定してしまうんですよね。
蟹瀬そういうものですか?
鈴木ええ。で、私はもっとすごい会社にしたいんですよ。ですから『エステー』ということで、もう行動範囲を何者にも縛られたくないという、いろんなことをやりたいという、夢の印ですね。
蟹瀬例えば、そのいろんなことの一つだけ伺えるとしたら、どっち方面というのは?
鈴木お客さまに感動とか、満足とか、癒しというものを提供する会社にしたいんです。
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